9 / 36
依頼者は死にたがり屋
第7話
しおりを挟む
――――。
…………っ。
……ああ、結局このままか……。
眠った間に離してくれないかと思ったがそうはいかない。抱きしめられたまま、朝を迎え真冬より先に目が覚めた。
さて、この状況をどうしたもんか。動けるか?
真冬を引き剥がそうと試すがびくともしない。すると、
「んんっ。うん?」
真冬が起きた。そして、僕と至近距離で目と目が合う。
「…………えっ?」
「おはよう……」
一応、挨拶をしてみる。
「――っ⁉」
「うげっ⁉」
途端に、僕を突き飛ばしベッドから転げ落ちた。
脇腹とお尻を床に打ちつけ痛みが全身に走る。酷い仕打ちだな、おい⁉ いきなり、突き飛ばす奴があるか!
「い、言っとくが僕は――」
……ひっ⁉
冷え切った眼差しで僕を見下ろす真冬。その手に持っているのは昨日、買った屍人を倒す武器の鞭。
「弁明を聞こうかしら? ねえ、ナイ」
「えっ……あ、いや、えっと……」
「ねえ、ナイ」
「ひひぃっ⁉」
僕が悪いのか⁉ この状況、おかしくない⁉
でも、説明しないと今この場で僕が殺される!
「わ、分かった! 説明するから!」
と、夜のことを話す。真冬が泣いていたことは敢えて言わず。が、それが逆に怪しまれる結果に。
「そう。ナイを、私がベッドに連れ込んでこうなったと?」
「あ、ああ」
「そこは理解したわ。でも、どうしてナイが部屋に入ってきたわけ?」
「そ、それは……」
「それは? そもそも、ナイが部屋に来なければこうはならなかったでしょ?」
「うっ……。そうですね、はい……」
気になって様子を見に来たら泣いてて、泣き止ますために部屋に入ってこうなった、なんて言えない! 余計に怒りそうだし!
「私に何もしてないわよね?」
鞭をしならせ、目が笑っていない笑顔を向ける真冬。
「何もしてないです」
「……そう」
鞭を仕舞う真冬。ほっ、と胸を撫で下ろす。
抱きしめられて、色々と考えてしまったことは胸の奥に仕舞っておこう。
朝の一悶着を終え、東三番街へ向かう準備を整えいざ出発。
…………っ。
……ああ、結局このままか……。
眠った間に離してくれないかと思ったがそうはいかない。抱きしめられたまま、朝を迎え真冬より先に目が覚めた。
さて、この状況をどうしたもんか。動けるか?
真冬を引き剥がそうと試すがびくともしない。すると、
「んんっ。うん?」
真冬が起きた。そして、僕と至近距離で目と目が合う。
「…………えっ?」
「おはよう……」
一応、挨拶をしてみる。
「――っ⁉」
「うげっ⁉」
途端に、僕を突き飛ばしベッドから転げ落ちた。
脇腹とお尻を床に打ちつけ痛みが全身に走る。酷い仕打ちだな、おい⁉ いきなり、突き飛ばす奴があるか!
「い、言っとくが僕は――」
……ひっ⁉
冷え切った眼差しで僕を見下ろす真冬。その手に持っているのは昨日、買った屍人を倒す武器の鞭。
「弁明を聞こうかしら? ねえ、ナイ」
「えっ……あ、いや、えっと……」
「ねえ、ナイ」
「ひひぃっ⁉」
僕が悪いのか⁉ この状況、おかしくない⁉
でも、説明しないと今この場で僕が殺される!
「わ、分かった! 説明するから!」
と、夜のことを話す。真冬が泣いていたことは敢えて言わず。が、それが逆に怪しまれる結果に。
「そう。ナイを、私がベッドに連れ込んでこうなったと?」
「あ、ああ」
「そこは理解したわ。でも、どうしてナイが部屋に入ってきたわけ?」
「そ、それは……」
「それは? そもそも、ナイが部屋に来なければこうはならなかったでしょ?」
「うっ……。そうですね、はい……」
気になって様子を見に来たら泣いてて、泣き止ますために部屋に入ってこうなった、なんて言えない! 余計に怒りそうだし!
「私に何もしてないわよね?」
鞭をしならせ、目が笑っていない笑顔を向ける真冬。
「何もしてないです」
「……そう」
鞭を仕舞う真冬。ほっ、と胸を撫で下ろす。
抱きしめられて、色々と考えてしまったことは胸の奥に仕舞っておこう。
朝の一悶着を終え、東三番街へ向かう準備を整えいざ出発。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
異世界ネクロマンサー
珈琲党
ファンタジー
トオヤマ・イチロウはふと気づくと異世界にいた。わけも分からず途方に暮れていたイチロウを救ったのは、死霊のクロゼルだった。あてどなく街を散策していたイチロウは、手打ちにされそうになっていた娘、リサを気まぐれで救う。リサを故郷へ送り届ける途中、ちょっとした好奇心にかられて大魔導師パウムの住処へ立ち寄る。大魔導師パウムの働きかけによって、リサは生活魔法の使い手に、イチロウはネクロマンサーとして覚醒する。イチロウとリサとクロゼル、後に仲間に加わった吸血鬼のベロニカ。四者はそれぞれ協力しながら、平和で快適な生活を築くべく奮闘するのだった。
【北の果てのキトゥルセン】 ~辺境の王子に転生したので、まったり暮らそうと思ったのに、どんどん国が大きくなっていく件について~
次元謄一
ファンタジー
タイトル変更しました→旧タイトル 「デッドエンドキングダム ~十五歳の魔剣使いは辺境から異世界統一を目指します~」
前世の記憶を持って生まれたオスカーは国王の落とし子だった。父の死によって十五歳で北の辺境王国の統治者になったオスカーは、炎を操る魔剣、現代日本の記憶、そしてなぜか生まれながらに持っていた【千里眼】の能力を駆使し、魔物の森や有翼人の国などを攻略していく。国内では水車を利用した温泉システム、再現可能な前世の料理、温室による農業、畜産業の発展、透視能力で地下鉱脈を探したりして文明改革を進めていく。
軍を使って周辺国を併合して、大臣たちと国内を豊かにし、夜はメイド達とムフフな毎日。
しかし、大陸中央では至る所で戦争が起こり、戦火は北までゆっくりと、確実に伸びてきていた。加えて感染するとグールになってしまう魔物も至る所で発生し……!?
雷を操るツンデレ娘魔人、氷を操るクール系女魔人、古代文明の殺戮機械人(女)など、可愛いけど危険な仲間と共に、戦乱の世を駆け抜ける!
登場人物が多いので結構サクサク進みます。気軽に読んで頂ければ幸いです。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
魔族に育てられた聖女と呪われし召喚勇者【完結】
一色孝太郎
ファンタジー
魔族の薬師グランに育てられた聖女の力を持つ人族の少女ホリーは育ての祖父の遺志を継ぎ、苦しむ人々を救う薬師として生きていくことを決意する。懸命に生きる彼女の周囲には、彼女を慕う人が次々と集まってくる。兄のような幼馴染、イケメンな魔族の王子様、さらには異世界から召喚された勇者まで。やがて世界の運命をも左右する陰謀に巻き込まれた彼女は彼らと力を合わせ、世界を守るべく立ち向かうこととなる。果たして彼女の運命やいかに! そして彼女の周囲で繰り広げられる恋の大騒動の行方は……?
※本作は全 181 話、【完結保証】となります
※カバー画像の著作権は DESIGNALIKIE 様にあります
クラウンクレイド零和
茶竹抹茶竹
SF
「私達はそれを魔法と呼んだ」
学校を襲うゾンビの群れ! 突然のゾンビパンデミックに逃げ惑う女子高生の祷は、生き残りをかけてゾンビと戦う事を決意する。そんな彼女の手にはあるのは、異能の力だった。
先の読めない展開と張り巡らされた伏線、全ての謎をあなたは解けるか。異能力xゾンビ小説が此処に開幕!。
※死、流血等のグロテスクな描写・過激ではない性的描写・肉体の腐敗等の嫌悪感を抱かせる描写・等を含みます。
怪物どもが蠢く島
湖城マコト
ホラー
大学生の綿上黎一は謎の組織に拉致され、絶海の孤島でのデスゲームに参加させられる。
クリア条件は至ってシンプル。この島で二十四時間生き残ることのみ。しかしこの島には、組織が放った大量のゾンビが蠢いていた。
黎一ら十七名の参加者は果たして、このデスゲームをクリアすることが出来るのか?
次第に明らかになっていく参加者達の秘密。この島で蠢く怪物は、決してゾンビだけではない。
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる