案内役という簡単そうに見えるお仕事

ゆーにゃん

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案内役の仕事

第2話

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 翌日も、同じように案内所へ向かい依頼者を待つ。

「ねえ、あなた、案内人?」

 そう声をかけてきたのは若い女性だ。二十代前半の女性が三人。

「ええ。そうですよ。ご依頼ですか?」

 いつもの営業スマイルで答える。

「そうなの。西地区の一番街へ、往復の案内を頼めないかしら?」

 西地区の一番街か。確かあそこは、腕試しにもってこいの地区だったはず。

 三人の女性を観察。一人は短弓を携え背中には矢が入った筒を背負う、二人目はショットガンを肩にかけ、最後の一人は僕に声をかけてきた彼女、アパッチ・リボルバーという複数の武器を一体化させ拳銃を携え。
 ダガーで突き、ナックルで殴り、発泡する武器ということを武器屋の店主から教えてもらったことがあったな。

「そのご依頼、引き受けましょう。依頼料ですが――」

 と、依頼を引き受け報酬は現金で話がついた。

 三人を連れて西地区の一番街まで、これまた自転車で移動する。車もあるが、ほとんどの者が徒歩か自転車を使う。
 西地区まではそれほど遠くはない。そのため、三十分ほどで目的地に到着。扉を開き、中へ入っていく三人。

「じゃあ、また帰りお願いね」
「はい。お気をつけて」

 そう言葉を交わし、三人を見送る。

 僕は、街には入らない。案内が仕事だ、わざわざ危険がある場所に首を突っ込む理由はないからな。
 曇り空を見上げ、彼女たちが戻ってくるのをただただ待つ。

 待つこと数時間、時間潰しに読書をする。持ってきていた小説を一冊、読み終えた頃に扉が開く。
 本を閉じリュックにしまい、彼女たちの方へ振り返る。
 行きは汚れもなかった衣服、今は赤く染まり泥だらけ。屍人と殺し合ってきたのだろう。

「ごめんなさい。結構、時間かかちゃって」
「いえ。構いませんよ。怪我人は?」
「ああ、この見た目だものね。大丈夫よ、誰も噛まれていないし平気」
「そうですが。では、中央区まで案内します」
「お願い」

 自転車に乗る前に軽く、返り血と泥を落とし帰る。

 中央区に帰ってくると、換金できる銀行まで案内をする。中央区は、急激に発展した影響で様々な店が入り組み目的の場所を見つけるのが少々、面倒でもあるため案内人を頼るのが楽でもある。

 三人を銀行まで案内をし依頼完了だ。

「これ、報酬の現金ね」
「ありがとうございます」
「こちらこそ、スムーズに今日の狩りができて良かったわ。また、縁があればお願いね」
「はい。その時は是非」

 報酬を受け取り、別れ帰宅する。
 一日にこなせる依頼は一件から三件といったところ。場所が遠ければ時間もかかる、近場ならまた案内所に戻り依頼者が来るのを待つ。

 案内役も、それなりにいるから仕事がこないこともざらにある。

「今のところは順調だな」

 昔は仕事がこなくて餓死するかもしれないと困り果てたこともあったが。それでも、案内という仕事しかできない僕にとって選択なんてない。だから、がむしゃらになって色んな人に案内はいりませんかって聞き回っていたな。

 そんなことを思い出しながら、人工の太陽が傾き夜の訪れを眺める。
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