偽りの神人 ~神造七代の反逆と創世~

ゆー

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第八章 偽りの神人

ウロボロス(4)

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 奏たちが次男と戦っている間、俺と美哉たちは機械人形と戦っていた。

 美哉のグングニルが、機械人形の群れに投擲され次々と勢いが衰えることなく胸元を貫いていく。相棒たちの攻撃は、機体を燃やし毒で溶け全身が一瞬で氷結。

 俺はいつもの合体で、腰から生える尻尾で数体を纏めて横殴り、四肢に巻きつき機体を捻じ曲げ破壊。時折、機械人形が攻撃するが、直矢がそれを許さず手からレーザービームを放ち穿つ。



「お父さんを殺らせないよ!」

「助かる。直矢」

「えっへん! 僕も、役に立ちたいもん!」

「直矢は十分、俺の役に立ってるぞ」

「ほんと!? やったー!」



 さて、逃げる人々を襲おうとする機械人形も残さず殲滅。そうして、建設内部の機械人形をあらかた片づける。

 避難も進み、球場へ移動しているようだな。



「真冬たちも上手くいったようですね」

「ああ。こっちも終わりそうだしな。とはいえ……」

「夏目? どうかしましたか?」



 ある場所を見つめる俺を見て首を傾げる美哉。

 美哉の視線を無視して俺の中で、気に食わないことがあり行動に起こす。それは、産み落とす施設や無理やり働かされていた場所、牢獄がある箇所、塔以外の建物の破壊だ。



「学園を破壊され、町を蹂躙された恨み。少しくらい晴らさないとな」



 そう呟き、俺は両手に蒼炎を生み出す。そして、獰猛な笑みを浮かべ放った。

 右手を振り、施設を焼き払い蒼く燃え上がる。左手の蒼炎は培養器がある施設を燃やし尽くす。



「ふ、ふふっ、ふははははははははははっ!」



 蒼く、どこまでも蒼い炎は空高く火柱を上げ灰へと変えていく光景を眺め俺は声に出して笑う。

 全て、何もかもを燃やしてやる!

 鬱憤が溜まっていた反動か、俺は破壊衝動のまま次から次にと建物を蒼炎で焼け野原に変えていく。



「……溜まっていたんですね。夏目」

「のようだな。主も、ずっと我慢していたのだろう」

「僕も混ざりたい」

「ダメです。直矢は、私と一緒にいましょうね?」

「ええ~」



 しばらくして俺の鬱憤晴らしも終わり、球場の護衛に切り替えそちらへ向かう。

 球場は、奴隷とされていた人々で溢れ返り陽菜は治療に手が一杯。桜も結界の維持で、それ以外の余裕はない。燐も配給、東雲先輩も物資を配るので手が空いていない様子。奏と遥も戻り、休む暇なく球場の死守に回る。

 日が沈み夜がやってくる。俺の元にアザゼルから連絡が入る。



『夏目。あと二日で完成するから、それまで何としても持ち堪えろ』

「了解だ」

「夏目くん。今、四音から連絡があってね……って、もしかしてアザゼルから聞いたかい?」

「紅。ああ、今さっきアザゼルからあと二日で完成するから護り切れってな」

「そうか。じゃあ、作戦に移ろうか」

「ああ」



 どうやらその連絡は、紅にも四音から届いており徹夜覚悟で守り抜くことに。

 美哉と直矢たちを引き連れて待機。すると、



「あ、お父さん。来たよ」



 直矢が教えてくれる。指差すその方角には、機械人形の大群が空と陸から攻め込んできていた。紅から、俺たちと神前先輩、奏と遥に指示が飛ぶ。



「あと二日、何が何でも護り抜く。一体足りとも近づけさせるな!」

『了解!』



 と、全員が答え防衛戦が始まった。

 北は俺と美哉たち、東は神前先輩&レヴィアタン、南は奏と遥、西は紅の陣地で戦う。



「フェンリル、ヨルムンガンド、ヘル! 遠慮はいらない! 全力で叩きのめせ!」

「その命令を待っていたぞ、主!」

「任せて! ボク、頑張る!」

「ご命令のままに、です!」

「直矢、いくぞ!」

「うん!」



 神獣たちが出し惜しみなしで本来の姿となり迎え撃つ。フェンリルの炎が陸から攻め込む機械人形を一掃、ヨルムンガンドは地面を這い薙ぎ倒し、ヘルの能力によって一瞬で氷像へと変えられる。俺は合体せず、直矢を背負い蒼炎で機械人形を討つ。

 直矢は脚を、俺の腰に交差させて手からレーザービームを空に向け四方に放ち撃ち落としていく。美哉も俺のそばで氷とグングニルで応戦。他の場所は、直矢が教えてくれた。



 神前先輩もレヴィアタンと共に空と陸に分かれ攻撃に出た、と。空はレヴィアタンが抑え込み、陸からは神前先輩が振るうデュランダルの餌食となり破壊。

 奏と遥の方も黒い龍が、機械人形を噛み砕き空の連中は地面へと叩き落されている、そうだ。

 紅の方も心配はいらない。八岐大蛇が、空も陸の機械人形を喰らっては尾で叩き割り、紅が持つ神器の剣で斬り刻まれ消滅。



「お父さんの仲間、みんな強いね!」

「ああ、本当にな。敵じゃなくてよかった、と本気で思う」

「ふふっ。みんな頼りになる仲間ですからね」



 親子でそんな会話をしながらも、体と視線は動き回り機械人形を一歩も球場へ向かわせない。

 あちこちで、爆音や轟音が鳴り響き黒い煙が立ち込めた。





     ◇◇◇◇◇





 夜が明け、機械人形は一時撤退していく。だが、これで終わりではない。また夜には、第二戦の防衛戦が待っている。

 昼間の間に体を休め、日が沈むと同時に機械人形共を目視で確認。最初に比べ数は減ったものの、やはり大群で攻めくる。



「昨日と同様の陣地にて迎え撃て!」

『おう!』



 紅の掛け声で、昨日と同じ陣形で迎え撃つ。球場の周辺は、機械人形の残骸が積み上がり神獣が大暴れ周辺の建物も半壊。

 それを誰も気に留めることはない。俺たちは、ただ襲撃に耐え続けるだけ。

 二度目の防衛戦も耐え切った俺たちの元にアザゼルと四音が合流。



「待たせたな、お前たち!」

「ようやく、完成したわ!」

「さっそくだが、始めるぞ」

「あとは、わたしとアザゼルに任せて」



 球場内の中央に移動した二人は、球場全体に大規模な魔法陣を展開させ、神山町を模した街へ転移させる。眩い光に包まれ、一瞬で移動完了だ。

 こうして、防衛は成功し俺たちもそちらへ一時撤退することに。

 移動後、全員に疲れが見え休む。人々も、アザゼルたち二人から機械人形に襲われない街だと説明を受け、ようやく解放されたと泣き崩れる者もいた。

 これで、少しは心身共に休めそうだな。

 創られた空を見上げ、そんなことを思うのだった。
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