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第八章 偽りの神人

ウロボロス(3)

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 次男を睨みつけながら遥が、わたしに伝える。



「弾丸もダメ、蹴りも通じないみたいだから、奏の力で斬ってしまえばいい。龍を戻して、隙を作るから」

「オッケー。任せて!」



 遥の案に乗り、龍を呼び戻すとすぐにわたしたちのそばへ。周りを二匹がグルグルと回り、次男もさすがに警戒を見せる。

 念じれば龍は次男へ向かって飛来、無数の歯を持つ口が開き噛み砕かんと襲う。四本の腕が龍を掴み取り、引き千切ろうと伸ばすけどそう簡単にはいかないから!



「チッ。千切れないのか!」



 舌打ち、毒つく次男へ接近。手刀の型に、黒炎を手首から先に纏い貫こうと真っ直ぐ伸ばす。その手が危険と判断し避けようとする次男の太とももに、遥が撃つ弾丸が数発当たり回避行動を阻止。



 ナイス! さすが、遥! これならいける!

 わたしの手刀が、腕を一本貫き持っていく。二の腕から先を失った腕、けど三本の腕がわたしの頭部を目掛け振り下ろされる。

 その拳を、二匹の龍が全身を使って護る。その隙にわたしは一旦離脱。次男は、怒り龍を蹴り上げ踏みつけるその脚に龍が絡みつき噛む。

 ガブリッ、と。



「なっ!? こ、この龍風情が! 離せ!」



 その行動に焦りも見せる次男。噛みつかれ振り解こうともがくけれど、無数の歯が機体を穿ち顎で固定され龍は離れようとしない。

 もう一匹も同じように、脚に絡みついては胴体へ伸び噛みつく。火花が散り、身動きを封じられる次男。

 ふんっ。わたしたちの龍を甘く見るからそうなるの! ざまあみろ、よ!



「奏、思うのは自由だけど。今は、あと」

「もう、心を読まないでよ~」

「はいはい。ほら、チャンスだよ」

「分かってる!」



 遥の言うように、この機を逃せば仕留められないかもしれない。だから、残りの腕を斬り落とすため、両手に黒炎を纏いもう一度、接近して振るう。龍に巻きつかれた状態でも次男はその手で、わたしの黒炎を受け止め抵抗を見せる。

 でも、わたしもここで引くわけにはいかないの! ってことで、次男の顔に頭突きを入れ、手が離れた一瞬の隙に二本目の腕を斬る。



「うぐっ……!」

「まだまだ!」



 間髪入れず三本目を狙ったけど、さすがの次男もここで殺られるわけにはいかず、平手打ちを目の前にいるわたしの顔に見舞う。



 ――バチンッ!



 と、乾いた音と衝撃がわたしを襲う。視界は歪み、顔と頭に痛みが走った。

 強烈なビンタを喰らったわたしの体勢が、揺らぎ崩れ落ちそうになるのを踏ん張り耐える。次男の脇から突き刺すように腕を振り上げた。



「……っ!」

「なっ……!?」



 手刀は、三本目の腕を斬り落としてみせた。わたしの頬はきっと赤く腫れてる。口の端も切って血が一筋流れて、口の中が鉄の味で広がった。それでも、わたしの攻撃は止まらなし止めない!

 最後の腕を斬り落としに掛かる。腕一本では防ぐのは不可能、身動きを封じられ逃げられない状態!



 そんな次男に容赦なく、わたしは手刀を振り下ろすけどそれは空を切った。わたしの視界が霞み、あと一歩のところで届かなった……。

 あ、あれ……。うそ、でしょ……。

 膝から崩れ落ちるわたしの様を見て、次男は顔に絵文字を浮かべ笑う。



「ははっ! 自分が勝つのだ!」



 嘲笑い、叫ぶ次男。

 ……っ! わ、笑っていられるのも今のうちだから!

 お前なんかに、勝利はこないの! なぜなら、遥がいるから!

 わたしの後ろから遥がくる。銃を見せつけ、次男は銃口を手の平で塞ぐ。未だに笑っている悪神の子に遥は言う。



「至近距離かつ一点集中、ついでに威力強めで撃てばその手はどうなるのかな」

「――――っ!?」



 と。次男が気づくより先に引き金を引く。黒炎の弾丸が手の平に風穴を開けた。

 反動で腕が後ろへ引かれ、遥は顔の中央に銃口をつけ至近距離で撃つ。一発ではなく何十発と黒炎の弾丸が撃ち込まれる。最初は耐えた。黒炎に、けれど同じ箇所を、威力が落ちず何度も撃たれれば次第にヒビが入り広がり耐えきれない。



「ま、待て……!」

「待たない。お前は、ぼくの大切な奏を傷つけた。だから、塵一つ残さないっ!」



 火花がきっと次男の視界を埋め尽くし、黒炎の弾丸は機体を貫き内側から焼いていく。次男が倒れ、機体全身が燃え尽きるまで撃ち続ける遥。



 遥がカッコいい! わたしのために、怒って倒す様にもうメロメロになるわ!

 なんて、尻もちつくわたしはそんなことを考える。

 こうして次男を討ち取った。



「奏、大丈夫?」

「うん。もう平気。それよりも、容赦なく撃つ姿に惚れ惚れしちゃった! もう、遥がカッコいいの!」

「……元気そうでよかったよ」



 笑みを浮かべ、軽口を叩けるわたしに一安心する遥。



「遥。勝ったね」

「だね」



 わたしたちの龍は姿を消し、遥がわたしの手を取り起こしてくれる。

 二人して、笑いながら建物をあとにする。
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