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第八章 偽りの神人

ウロボロス(2)

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 わたしたちの龍と次男の殴り合いの攻防戦が続き、お互いに何度も復活を繰り返す。とはいえ、このままじゃ埒が明かないわ。



「遥」

「うん」



 遥に目を配らせ次男の弱点を見つけるべく動く。真っ先に思いついたのは、心臓となる核が目の前の戦っている機体にはないということ。

 そうだとしたら、核を隠しながらでも戦える機能があるという案。

 もう一つは、本体が遠隔操作でわたしたちの相手をしているのではという案だけど。

 どちにせよ、本体を見つけ出せば勝機は必ずあるわ! 黒い龍は、わたしと遥の分身体。あれの相手を任せ、本体を捜す。遥の索敵能力で反応を探し、わたしはいつでも動けるように軽くストレッチ。そして遥が見つけた。次男の居場所を。



「奏、見つけた。ここから離れた九時の方角にある建物の中」

「やっぱり、あれは偽物だったのね! 遥、掴まって!」

「ん」



 遥を背負い、浮遊してその場所へ一直線に飛び数分で建物に到着! 扉を蹴り飛ばし叫ぶ。



「見つけたわよ!」

「チッ!」



 そこには何度も壊してきた姿と同じ次男が舌打ちをして立ち上がる。ただし、その大きさはわたしたちの三倍もある巨躯。……っていうか、大きすぎない!

 天井に届く身長と、太い腕が四本ある。これだけ大きければ、外を歩くだけで目立つわ。故に偽物を用意し遠隔操作して、本体は身を隠していたのね。



「まさか、見つけられるとは思わなかったが、ここは褒めてやろう。だが、本体である自分には勝てない」



 なに、この上から目線の宣言。偽物のもそうだけど、本体の喋りにも腹が立つわ。わたしと遥が勝てない? ふんだ! そんなわけないでしょ! 機械の分際で、調子に乗るな!

 あまりの苛立ちに、龍を使わず先に動いて倒しに掛かる。



「奏! ああもう……。仕方がないな」



 後ろから遥の困った声が聞こえたけど、わたしは次男に向かって蹴りを見舞う。

 わたしの蹴りを躱す次男は、その極太の腕を地面に叩きつけ地割れを起こす。すぐさま飛び退り、背後に回って黒炎の塊をぶつけてやる!

 援護に遥が、お得意の水鉄砲を取り出し構え撃つ。それも黒炎が弾丸の形となり襲う。機体を撃ち抜くかと思いきや、わたしの黒炎も、遥の弾丸も想像以上にそのフォルムは頑丈で通じない。

  本体の方が、やっぱり強いよね普通は。



「効かない。効かないぞ! 小娘共!」

「ムカつく!」



 黒炎に耐える機体を持つ次男。攻撃が通じないわたしたちを嘲笑い、毒つくわたしをいたぶることに。突進し、四本の腕が殴りに掛かってくる。連続の殴打を躱し続けるけど、徐々に追い詰められ腹部に一発めり込み体が吹き飛ばされる。



「うぶっ!? がはっ……!」

「奏!?」



 遥の叫び声が聞こえる……。

 壁に背中を強打して、ちょっと息苦しいっ……。

 わたしの視界に、遥が次男の頭部を狙い撃つ。でも、弾丸は弾かれ消滅していく。



「ちっ……」



 あぁ、遥が珍しく舌打ちしてる……。わ、わたしも早く動かないとっ。

 遥は、五発と撃つけどそれを次男は手の平で受け止め消失。



「なっ……!?」

「無駄なことを」



 う、嘘っ!? こ、黒炎の弾丸が消された!?

 これに遥も、わたしもさすがに驚く。まさか、黒炎を手で打ち消されるとは予想していなかったわ。まずい、次は遥だと次男がゆっくりと歩き出してる!

 遥は、わたしを置いて逃げるつもりはない。遠距離がダメなら至近距離で撃つ、と腰を上げ走り出そうとした時、



「行かせない! ここで燃えちゃえ!」

「奏!」



 次男の腰に抱きつき歩みを止め、わたしのの一言と共に全身が黒炎に飲まれ燃え上がる。

 なんとか、動けるようになり退避して遥のそばに駆け寄る。



「遥!」

「奏、大丈夫?」

「なんとかね」



 わたしに目立つ怪我はないことに遥は一安心する。

 燃え上がる中、次男の声が響き渡る。



「この程度で死ぬことはないぞ! 小娘共!」

「「……っ!」」



 その言葉通りに次男は腕を振り乱し、風を起こして炎を消すと姿を見せる。焦げた機体だけど、あちらも目立つ怪我はないみたい。顔の絵文字は、笑み。

 わたしと遥は、そんな次男を睨みつけ構えた。
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