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第八章 偽りの神人

第三幕 ウロボロス(1)

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 わたしこと、双葉奏と遥の二人は次男を引き連れて塔建設内部の南側へ。そこには、奴隷となった人もいないし、開拓途中で止まった開けた場所。

 この場所で、わたしたちが討つ!

 次男は、四本の腕にチェンソーを装備していて起動させた。



「奏、くるよ」

「分かってる!」



 わたしたちを、バラバラにすべく向かって来る。



「死ねぇえ!」



 死ぬのは、あんたよ! と、内心で毒つきながらわたしと遥は黒い龍を影から顕現させて迎え撃つ。

 電動する刃に龍は斬り刻まれるけど、無限や循環の意があるウロボロスは何度でも再生して、次男の機体に絡みつき手脚をへし折ってやるわ。

 機体はバラバラになったと思ったけど、地面に落とす影が歪んでそこから同じ機体の次男が現れる。そのヘルメットのようなフォルムの顔に表示される絵文字は怒り。そして、わたしから見て目障りな泣き顔。



「よくも、父上から授かった大事で大切な体を破壊してくれたな! ううぅっ、痛いだろ!」

「はあ? こいつ、なに言ってるの? 戦いなんだから、当然のことをしただけじゃない」

「奏、相手をするだけ無駄だよ」



 ムッ、となるわたしに遥がそう言う。

 破壊されたことに怒って、痛いと言い泣きの絵文字を見せる次男に不愉快さが増していく。



「殺してやる!」

「それ、わたしのセリフだから!」



 次男は距離を詰めるべく背中から機械の翼を展開して、空中へ飛び回ると真っ直ぐにわたしと遥を目掛け飛来してくる。

 わたしたちは左右に分かれ躱し、黒い龍も空中へと躍り出ると空中戦へと切り替わった。

 四肢を噛み砕き、解体して地面へ叩き潰しても先程と同様に影から新たな機体を得て復活。さすがは悪神の子ってことね。からくりを見破らないと何度、あいつを破壊しても意味がないわ。

 わたしたちの黒い龍も、四本の腕によって微塵切りにされてしまう。

 その様に次男は笑いの絵文字を浮かべ、声も楽しげに言い放つ。



「これで身を守る術がなくなったよぉ!」



 ……あの絵文字と声が、だんだんと腹立ってきたんだけど! 人を小馬鹿にするみたいな顔の絵文字と耳障りな声!



「奏、落ち着いて」

「分かってるけど」

「大丈夫。ぼくがいる」

「遥……。そうだよね!」

「ん。いくよ」

「オッケー!」



 息を吸い、焦ることも恐怖することもない。わたしと遥は手を握り、余裕のある笑みで言い返す。



「「龍は無限、死はなく永遠に循環する」」

「はああ? …………っ!?」



 意味が分からない次男の前に、何の前触れもなく黒い龍も復活を遂げ四本の腕を肩から噛み砕く。腕を失った次男相手に龍は、口を大きく開け喰らうのではなく吐息。それは黒い炎の塊よ。二発吐き出し、機体を燃やし穿つ。灰も残さず燃やし尽くすの。



 わたしたちは試したい。灰も残らない状態でも、次男は復活できるのか。それとも、このまま死んでくれるのかどうかを。

 結界は……前者ね。影もない、だけど灰の中から新たな機体で復活して見せる。ただし、腕はチェンソーではなく何も持っていないけど。

 次男は、こうも簡単に何度も壊されたのは初めてみたいで怒り心頭。絵文字も、怒りを表現する様々な文字が表示される。



「き、貴様ら! 殺す! 殺す! 殺す! 殺すっ!」



 声も低く、同じ言葉を何度も繰り返す。武器を装備していないところ見ると、夏目お兄さんと同じ肉弾戦になるわね。



「遥」

「うん。ここからは、肉弾戦になる」



 その読み通り、次男は拳を振り上げ龍の頭を殴り掛かった。大振りに拳を振り下ろし、もう片手は二体目の顎下を狙いアッパーを見舞う。

 龍は拳を受け頭が一発で潰れ、もう一体も頭が吹き飛び倒れるけどこちらも何事もなかったかのように復活するのよ。



 真っ向から次男の左拳を飲み込み噛み砕く。それでも次男の殴打は止まらない。無事な右の拳が襲い掛かる。殴打を額に受けてもわたしたちの龍も尻尾で応戦。

 黒い龍と、機械の次男との殴っては喰らうが続く。
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