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第八章 偽りの神人

近づく一手(3)

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 大型スーパーを見つけた俺たちは、周囲を警戒しながら店内へ。バックヤードへ向かい、無事な米や缶詰め、冷凍食品、飲料を確保。



「どれもまだ保つな」

「そうですね。まだ無事な食料が残っていて助かりました」

「ああ。とはいえ、まだ足りないが」

「他にも残っていればいいんですが……」

「どうだろうな。地下へ逃げた人たちが、俺たちと同じように調達しに来ていれば残っている可能性は低いかもしれないしな」

「機械人形が多い街は、危険でそこから離れているでしょうけど。腐らないわけではありませんから。あ、夏目。これを」

「おう」



 美哉が手渡したのは、四音から預かった魔法陣だ。陣が描かれた紙は、収納魔法。床に紙を置いて発動させると、陣が展開しそこへ食料や飲料などを入れていく。



「夏目お兄さん、これもいれて!」

「これもお願いします」

「どんどん、入れていいぞ」



 奏が持ってきたのはスナック菓子だ。両手に抱え、陣へポイポイ入れていく。遥はジュース類、こちらも両手で持てる分だけ持って陣へ入れては運んでの往復。

 フェンリルも、加工肉を見つけて持ってくると入れる。ヘルと直矢も、ゼリーやレトルト食品を見てけたようで嬉しそうに放り込んでいく。



 スーパーのバックヤードから出て次の場所へ向かう。未開封のタオルや衣服なども陣の中へ入れ、日用品も見つけ使えそうな物は次から次へと確保。

 二軒目も終わり、三軒目で徘徊していた機械人形に遭遇。腕がチェンソーになっており、奏と遥が準備運動にちょうどいいと迎え撃つと。



「遥、いくよ!」

「うん」



 機械人形は一体だけだが、身長はおよそ三メートルで頭が二つに腕が四本、脚だけは二本と上半身だけ二体分あるみたいだな。



 奏と遥は、向かい合うと抱きしめ合い額をくっつける。その様子を見守る俺たち。二人の影は重なり溶け合うと、次第に尻尾を喰らう二匹の龍の姿へと変化していく。

 機械人形も腕を振り回し襲い来る。しかし、影から実体を得た龍が顕現し機械人形の機体に巻きつく。絞め上げ、機体はひしゃげ遂には耐え切れず四肢がバラバラに壊れた。あまりにも簡単に破壊する龍に内心で驚く。



 こうも、あっさり破壊できるものなのか。一分も経たず、終わらせる。やはり、この二人を仲間に引き込んで正解だったな。

 ――ピィィイイイイイッ。

 と、ヨルムンガンドを纏っていたお陰で聞き取りれた。どうやら、破壊される寸前に犬笛のように音を鳴らし増援を呼ぶ。その結果、数体の機械人形がこちらへ向かってくる。



「遥、まだいけるよね?」

「いけるよ」

「じゃあ、あれやっちゃおう!」

「いいよ」



 何かやる気だな。焦ることもなく二人は、黒い龍へ手を伸ばすと互いに溶け合う。全身が黒へ飲まれ次に見せた時には完全な黒龍へと姿を変える。これに直矢も興味津々ではしゃぐ。男の子は、こういう龍とか好きだもんな。



「なにあれ!? 黒い龍だ! カッコいい!」



 二人の姿を見たフェンリルが説明する。



「ふむ。奏の方は、王冠を被るだけの手足のない素のままの姿のようだ。遥の方は王冠と両翼に尻尾、手足のあるドラゴンの姿。どちらも、ウロボロスの姿と語られている」

「あの姿を見ると、ウロボロスの転生体なんだなと改めて思わせてくれるな」

「うむ。主は、良き仲間を見つけたようだぞ」

「ああ。本当に頼もしい」



 奏が腹を膨らませ黒炎を吐き出す。黒龍の吐息(厨二病っぽく、ドラゴンブレスとでも呼ぼうか。まあ、そのままだが)をぶちかまし、辺りは黒炎によって焼き払われ、そこへ遥が突っ込む。黒炎は肉体を傷つけることもなく、むしろ纏い空中を飛び回り、鋭い爪が深々と抉り、尻尾の先には黒炎が燃え、その火を機械人形に燃え移らせ破壊、翼で旋風を起こし吹き飛ばし、その手で掴み取ると四肢を引き千切り、握り潰す。



 黒炎を吐き終わった奏は援護に回り、遥に近寄る機械人形へ体当たりをかまし機体をへし折る。

 そうして、増援に来た全ての機械人形を破壊し終わると姿が元に戻った。



「ふー……」

「暴れた」



 二人の強さを目の当たりにした俺は笑う。



「はははっ! すごいな、お前たち。本当に強くて、頼もしい仲間だ」

「すごい! すごい! お姉ちゃんたちの黒龍、カッコいい! 今度、僕を背に乗せて飛んで欲しいな!」

「二人が仲間になってくれて本当に良かったですね」



 直矢は興奮してその場を何度もジャンプしておねだり、美哉も微笑みそう言う。



「えへへっ。なんだか、照れるわ」

「嬉しいね。こんな風に言ってもらえるの」

「ねっ。わたしたちの、どんな姿を晒してもすんなり受け入れてくれる。なんだか、安心感を覚えるわ」

「だね」



 俺たちの言葉に、照れくそうにそれでいて嬉しそうに笑う二人だった。
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