上 下
192 / 220
第八章 偽りの神人

第二幕 近づく一手(1)

しおりを挟む
 直矢が語るのは、悪神に関わること。



「えっとね、まず『地球の歯車』は惑星の仕組みそのものなんだ。これを使えば、誰でも惑星を思いのままに創り変えることが可能で、幾重にも歯車が絡み合う球体だよ。ただし、人の身で使えばそれなりの代償が必要になるんだけど」



 その話に誰もが黙った。誰でも思いのままに惑星を創り変える、そんなものを悪神は手にしいるのか……。機械仕掛けの神であるから、大きな代償はいらないのだろうな。

 神山学園で見た魔法陣、機械人形が徘徊し崩壊した世界を、あの機械仕掛けの神が創り変えたということか。



「でね、悪神が持ってる二冊の白一色のカバーをした本の正体は、『世界の出来事』っていう本なんだ。その本に書くとその通りになるし、書かれている一節を読み上げてもその通りの現象が起こせるの。悪神が、天変地異を起こすことができたのもこれの複製本のお陰だよ。悪神が持つ二冊は、神々が万が一にと複製したんだけど、それを奪い我が物の顔で使用してるんだ」



 なっ!? あ、あのクソ機械仕掛け風情が! 奪って我が物顔で俺たちの学園を破壊して、世界を崩壊にまで追い込みやがって! どこまでも、ふざけたクソ神が! 何が何でも、奴の物をぶっ壊してやる!

 苛立ちが募る俺を気にしながらも直矢は続きを話す。



「最後に、悪神の心臓の在り処は滅びた文明の世界にあるよ。次元の狭間を越え、こことは異なる並行世界。そこは神のみが干渉し行き来できる場所。鼓動する球体こと心臓が、唯一の悪神を殺す方法」

「そうか……。悪神も用心深いのだろうな。この世界に、己の心臓を置いていれば俺やルシファー、紅や夏目が破壊しかねないと考えて隠したのだろう。だが、直矢の裏切りが悪神の首を取ることになるとは予想してないはずだ」



 ふー……、苛立って冷静さを失うところだったがアザゼルの言う通り、直矢が俺と美哉の元に来た時点で悪神を殺す手段を得たも同然。だからこそ、悪神に直矢を殺させない。



「でも、その場所に行くにはお父さんとお母さん、神の子であるフェンリルたちだけなんだ。あとは、案内役の僕くらい。お父さんは人間を通り越してるし、お母さんはヘルが蘇生してるから影響を受けないはずだよ。次元の狭間は危険だから」



 直矢の話では、いくら魔王ルシファーや堕天使総督アザゼルでも難しく、次元の狭間で迷子になれば二度と戻ってくるのは不可能だと。神の子である相棒と俺と美哉、道案内ができる直矢しかいない。



 そして、これが重要な点。その世界にも悪神の本体が存在している。今、この世界にいる悪神はオリジナルが複製した分身体。故に、いくら破壊しようが無限に復活を遂げるらしい。

 オリジナルを殺さなければ、こっちでいくら破壊しても意味がないと。複製本を使用され、樹海と神山学園での戦いと同じ繰り返しになるだけ。

 そんな馬鹿げた話に頭を抱えるアザゼルだったが、悪神を討つ情報が手に入り作戦を立て直す。



「よしっ。滅びた世界に行くのは、夏目とフェンリルたちに美哉、直矢のメンバーだ。そちは任せるぞ」

「ああ。任せろ」

「オリジナルさえ討てば、分身体もこちらのメンバーのみで討ち倒せるはずだからな。夏目たちを送る際、必ず邪魔をしてくるはずだ。何があっても護り抜き、悪神を阻止しろ。いいな?」

『はい!』



 俺たち以外の、残る仲間たちが答える。俺も、アザゼルの言葉に異論はない。なにせ、あの時に呪詛のように吐き続けた言葉を実行できると思うと笑みがこぼれる。

 待ちに待ったぞ、この時を。ようやく、俺の手で殺せる。覚悟してろ、悪神。貴様を殺すのは、俺だ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

パンツを拾わされた男の子の災難?

ミクリ21
恋愛
パンツを拾わされた男の子の話。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

処理中です...