191 / 220
第八章 偽りの神人
予想外の出会い(4)
しおりを挟む
落ち着いた直矢を連れて旅館へ戻る俺たち。
「あ、おかえりなさい! 夏目お兄さん、美哉お姉さん! ……っと、え?」
「おかえりさない。お兄さん、お姉さん。……と、子供?」
奏と遥が出迎えてくれる。けれど、俺が抱きかかえる直矢を見て固まった。そして、予想通りの反応を見せる。
直矢が、人間ではないと気づいた二人が警戒を露わにし身構えた。
「それ……」
「うん。間違いないよ、奏」
「…………っ」
直矢も二人のことを知っているのだろう、息を呑み俺にしがみつき奏と遥から顔を逸らす。まあ、どちらも当然の反応だな。
「二人共、落ち着け。部屋で詳しいことを話すからまずは警戒を解け」
「……夏目お兄さんがそう言うなら」
「うん」
俺の言うがままに、二人は警戒を解き部屋へ行き、ここまでの経緯を話す。
直矢の正体と俺たちとの関係、得られた情報の一部を。
「ええっ!? そ、そんなことがあるの!?」
「驚いた。まさか、こんなことが起きるなんて」
聞き終えた奏と遥は、直矢を凝視してしまう。美哉の膝の上に乗り離れようとせず、ヘルが頭を撫でると「へへっ」と嬉しそうに笑い、ヨルムンガンドがそばに這うと体を撫で回し楽しそうにする様子。
「ねえ、遥」
「なに」
「夏目お兄さんが嘘を言っているようにも、この子が騙してるようにも見えないわ」
「そうだね。ぼくもそう思う」
「わたしの直感がね、悪神を滅ぼす鍵になるって」
「奇遇だね。ぼくの直感も同じことを言ってる」
「じゃあ、決まりね! 直矢くんを信じるわ!」
「うん」
「そうか。良かった」
二人が信じてくれないと、この先の戦いで困る。ウロボロスの力は必要不可欠だ。それに、俺と同じことを奏も遥も思ったうようだな。直矢は、悪神の心臓の在り処を知っている。探す手間が省けるというもの。
何より、護ると言ったそばから仲間と敵対関係になるのはごめんだ。
「ってことは、みんなにも説明するんだよね?」
「ぼくたちみたいに受け入れてくれるといいけど」
「そうだな……。今夜に説明するつもりではいるが、直矢を殺すと言うのならその時はやむを得ない」
「夏目……」
「夏目お兄さん……」
「お兄さん……」
美哉たちの表情が暗くなる。俺の気持ちを、仲間のことを考えると表情が暗くなるのも分かる。俺としても、それだけは避けたい。
どうなるか……。
◇◇◇◇◇
その日の夜に集まった仲間にも説明をする。
直矢を見て、開いた口が塞がらず驚きを隠せないメンバーたち。空気が少し、重くなるのを感じる。悪神の子であり、美哉の戦闘データをインストールされ、身勝手に感情をも入れられ、得たのは愛情を求め、寂しさを知ってしまった機械仕掛けの子。
どう対応するべきか、悩んでいるのだろう。
だが、そんな中で神前先輩と立花先輩はすぐに受け入れ茶化す。
「へぇ~。二人の子とは、手が早いわね。逢真~」
「子供、可愛い」
ニヤニヤと笑う神埼先輩と、直矢を見て微笑む立花先輩。それに続き紅まで受け入れたようで、
「なるほど。ということは、パパとママとして頑張らないといけないわけだね」
「そうよ。イチャつくのも程々にしなさいよ逢真。あんた、美哉が目覚めてから欲求が激しいんだから」
「そうだね。さすがに、我が子の前であんなことやこんなことは厳禁だよ。夏目くん」
と二人して笑いながら言う。
こ、こいつら俺をからかってるだろ! 言われなくとも直矢の前で、そんな姿を晒すわけないだろ! それくらい分かってるわ!
「うるさいぞ! そこ二人!」
「あははは! 逢真が怒ったわ!」
「もう、真冬ちゃん、いじめちゃダメだよ」
「ごめん、ごめん。つい、ね」
「からかうのはここまでにして。何か、困ったことがれば言っておいで。オレも手を貸すから」
くそっ……。やっぱり、からかってんじゃねか。でも、紅からの申し出はありがたい。
「ああ。相談に乗って欲しい時はそうする」
そうして、二人が空気を和ましてくれたお陰で燐と桜、アザゼルと四音も大丈夫と判断してくれたようで、仲間の全員が直矢を受け入れてくれた。
「夏目の話は分かった。でだ、直矢に訊きたいことがある」
「そうね。悪神の心臓と『地球の歯車』、『世界の出来事』について。知っていることを教えてくれるかしら?」
「ああ。『地球の歯車』と『世界の出来事』とはなんだ? 俺でも知らない言葉だぞ」
「うん、分かった」
アザゼルと四音の言葉に、一言そう返し俺の膝の上に座り直した直矢が語る。悪神に関わることを――。
「あ、おかえりなさい! 夏目お兄さん、美哉お姉さん! ……っと、え?」
「おかえりさない。お兄さん、お姉さん。……と、子供?」
奏と遥が出迎えてくれる。けれど、俺が抱きかかえる直矢を見て固まった。そして、予想通りの反応を見せる。
直矢が、人間ではないと気づいた二人が警戒を露わにし身構えた。
「それ……」
「うん。間違いないよ、奏」
「…………っ」
直矢も二人のことを知っているのだろう、息を呑み俺にしがみつき奏と遥から顔を逸らす。まあ、どちらも当然の反応だな。
「二人共、落ち着け。部屋で詳しいことを話すからまずは警戒を解け」
「……夏目お兄さんがそう言うなら」
「うん」
俺の言うがままに、二人は警戒を解き部屋へ行き、ここまでの経緯を話す。
直矢の正体と俺たちとの関係、得られた情報の一部を。
「ええっ!? そ、そんなことがあるの!?」
「驚いた。まさか、こんなことが起きるなんて」
聞き終えた奏と遥は、直矢を凝視してしまう。美哉の膝の上に乗り離れようとせず、ヘルが頭を撫でると「へへっ」と嬉しそうに笑い、ヨルムンガンドがそばに這うと体を撫で回し楽しそうにする様子。
「ねえ、遥」
「なに」
「夏目お兄さんが嘘を言っているようにも、この子が騙してるようにも見えないわ」
「そうだね。ぼくもそう思う」
「わたしの直感がね、悪神を滅ぼす鍵になるって」
「奇遇だね。ぼくの直感も同じことを言ってる」
「じゃあ、決まりね! 直矢くんを信じるわ!」
「うん」
「そうか。良かった」
二人が信じてくれないと、この先の戦いで困る。ウロボロスの力は必要不可欠だ。それに、俺と同じことを奏も遥も思ったうようだな。直矢は、悪神の心臓の在り処を知っている。探す手間が省けるというもの。
何より、護ると言ったそばから仲間と敵対関係になるのはごめんだ。
「ってことは、みんなにも説明するんだよね?」
「ぼくたちみたいに受け入れてくれるといいけど」
「そうだな……。今夜に説明するつもりではいるが、直矢を殺すと言うのならその時はやむを得ない」
「夏目……」
「夏目お兄さん……」
「お兄さん……」
美哉たちの表情が暗くなる。俺の気持ちを、仲間のことを考えると表情が暗くなるのも分かる。俺としても、それだけは避けたい。
どうなるか……。
◇◇◇◇◇
その日の夜に集まった仲間にも説明をする。
直矢を見て、開いた口が塞がらず驚きを隠せないメンバーたち。空気が少し、重くなるのを感じる。悪神の子であり、美哉の戦闘データをインストールされ、身勝手に感情をも入れられ、得たのは愛情を求め、寂しさを知ってしまった機械仕掛けの子。
どう対応するべきか、悩んでいるのだろう。
だが、そんな中で神前先輩と立花先輩はすぐに受け入れ茶化す。
「へぇ~。二人の子とは、手が早いわね。逢真~」
「子供、可愛い」
ニヤニヤと笑う神埼先輩と、直矢を見て微笑む立花先輩。それに続き紅まで受け入れたようで、
「なるほど。ということは、パパとママとして頑張らないといけないわけだね」
「そうよ。イチャつくのも程々にしなさいよ逢真。あんた、美哉が目覚めてから欲求が激しいんだから」
「そうだね。さすがに、我が子の前であんなことやこんなことは厳禁だよ。夏目くん」
と二人して笑いながら言う。
こ、こいつら俺をからかってるだろ! 言われなくとも直矢の前で、そんな姿を晒すわけないだろ! それくらい分かってるわ!
「うるさいぞ! そこ二人!」
「あははは! 逢真が怒ったわ!」
「もう、真冬ちゃん、いじめちゃダメだよ」
「ごめん、ごめん。つい、ね」
「からかうのはここまでにして。何か、困ったことがれば言っておいで。オレも手を貸すから」
くそっ……。やっぱり、からかってんじゃねか。でも、紅からの申し出はありがたい。
「ああ。相談に乗って欲しい時はそうする」
そうして、二人が空気を和ましてくれたお陰で燐と桜、アザゼルと四音も大丈夫と判断してくれたようで、仲間の全員が直矢を受け入れてくれた。
「夏目の話は分かった。でだ、直矢に訊きたいことがある」
「そうね。悪神の心臓と『地球の歯車』、『世界の出来事』について。知っていることを教えてくれるかしら?」
「ああ。『地球の歯車』と『世界の出来事』とはなんだ? 俺でも知らない言葉だぞ」
「うん、分かった」
アザゼルと四音の言葉に、一言そう返し俺の膝の上に座り直した直矢が語る。悪神に関わることを――。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
劣等生のハイランカー
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す!
無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。
カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。
唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。
学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。
クラスメイトは全員ライバル!
卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである!
そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。
それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。
難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。
かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。
「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」
学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。
「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」
時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。
制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。
そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。
(各20話編成)
1章:ダンジョン学園【完結】
2章:ダンジョンチルドレン【完結】
3章:大罪の権能【完結】
4章:暴食の力【完結】
5章:暗躍する嫉妬【完結】
6章:奇妙な共闘【完結】
7章:最弱種族の下剋上【完結】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる