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第八章 偽りの神人

予想外の出会い(2)

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 混乱する俺たちだが、美哉が咳払い一つし目の前の少年に訊く。



「えっと、あなたは誰ですか?」



 少年は、笑って名前から教えてくれた。



「僕は、直矢って言うの。この名前は、お父さんとお母さんの名前からもじったんだよ。お父さんの夏目と逢真から『な』と『お』で、お母さんから美哉の『や』を合わせて直矢。すっごく気に入ってる名前なんだ! 僕が自分で考えてつけたの。僕を生み出した悪神がいるけど、それは父親じゃないないから」



 …………やはりか。だが、三男とかいう悪神の子と出くわして戦ったが、目の前の直矢だったか、とは見た目も話し方というのか雰囲気がまるで違う。

 三男は、確かにあの憎く殺してやりたい悪神に似ていた。けれど、直矢は人間に近い感じがするな。



「つまり、生みの親は悪神だがその息子でない、そう言いたいのか?」

「うん。だって――」



 俺の問いに直矢は語る。悪神は、機械仕掛けの子を三人を生み出した。でも、それも所詮は道具だった。己の手足となり、邪魔な神殺し共を殺すための兵器でしかない。

 直矢には、戦闘データがインストールされていてその元が美哉なのだと。そして、感情も遊び半分でインストールさておりその結果、直矢に人間と同じ親の愛情を求め喜怒哀楽が生まれてしまい、五ヶ月前から俺たちをずっと視ていたと。

 話したい、家族が欲しいと、それは孤独と寂しさそういう想いが溢れ、密かに行動を起こし俺たちにあえて気づかれるようにした。



「――っていうことなんだ」

「そ、そうか……」

「そう、だったんですね……」



 これには誰もが驚き、何より直矢のことで悩む。見た目の話も聞く。名前も黒曜の機体も嫌いで、自ら作った人工皮膚を全身に被り、人間のような姿になり学ランを好んで着込んだそうだ。

 そんな直矢に、美哉が触れる。頭を撫でると、



「えへへっ」



 と嬉しそうに笑い、美哉が「直矢」と呼べば喜びを見せ腰に抱きつき、甘えるその姿は確かに母親を求める子供そのもので……。

 け、警戒を解くか、解かないか……。



 真剣に悩む羽目になる。それは相棒たちも同じで、悩む間も直矢は美哉に甘えている。身長が百センチほどしかないため、幼い子供で抱っこを求めると美哉が抱き上げ、頬ずりをする様は親子を見ている気分になってくる。



 ……なんだろうな、想像してしまう。俺と美哉に、子がいればこんな感じになるんじゃないかって。

 そう思うと、直矢に対して警戒が薄れていく。だがしかし、本当に敵ではないのかという疑う気持ちもある。



『フェンリル、ヨルムンガンド、ヘル。どう思う?』



 念話で相棒たちに語りかける。



『ふむ。美哉に甘える様子は、確かに母親を求める子供ではある』

『うん。甘えん坊、みたいな感じだよね』

『しかし、それが演技という可能性もあるのです』

『だよな……』

『ですが……』

『どうした? ヘル』

『あの笑顔が、本当に演技なのか……わたくしには、そうは見えないです』



 ……笑顔、か。



『よし、直矢の言葉を信じる方向でいく』

『主が決めたのなら構わぬ』

『うん、分かった!』

『はいです』



 相棒たちと相談した結果、信じる方向へ。

 なにせ、美哉に抱っこされその顔は屈託のない笑顔で言うからだ。



「あのね、あのね! 僕、お父さんとお母さんと一緒に暮らしたい! それで、いっぱい遊びたいし、色んな場所にお出かけしてお泊りしたい!」

「ふふっ。それは良い案ですね。どこに行きましょうか? キャンプも楽しそうですし、海水浴もいいですね」

「海、行きたい! 一緒に泳ぐの! あとね、バーベキューも!」

「お肉ばかりではなく、野菜もしっかり食べないとダメですよ?」

「ええー。野菜、嫌い」



 などと、美哉と楽しげに話をし願望を口にする直矢。

 これには何も言えず、俺もヘル同様に嘘を吐いているようには見えない。

 やれやれ。これじゃあ、本当に親子のようだな。俺と相棒たちは、しばらく二人の様子を見守ることに。
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