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第二部 第七章 終わりの始まり

神器VS神の機械(4)

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 俺たちが見守る中、煙は徐々に晴れていく。

 足元は、ただ大きな穴が空いただけで神前先輩の姿はなく、豚人形は辺りをキョロキョロと見渡す。



「アウッ?」



 姿を捜し、視線を四方に向けるが見当たらない。おそらく、俺以外の誰も視えないのだろう。レヴィアタンの能力で姿を透過し、風景に溶け込み消えているように見せている。

 俺の目は、ヨルムンガンドとの融合で肉眼で見えないものも視える。そのため、神前先輩とレヴィアタンの能力による透過に気づきあえて豚に声を掛ける。



「おい、豚人形。貴様が捜している人物はそこにはいないぞ?」

「アアッ?」

「ああほら、貴様の背後にいるぞ」



 人指を背後に指して嘘の情報を与えた。豚人形は、俺の言葉通りに背後を振り返り拳を振り下ろす。けれど、そこに誰もおらず地面に拳がめり込み抜けなない。



「ほら、今度は貴様の足元だ。気をつけろ、剣で斬られるぞ?」

「アアウウッ!」



 またしても、俺の言葉に豚人形はその場で四本の足で足踏みを何度も繰り返すために、豚人形の回りにヒビが広がり抜け下半身が埋まってしまい四つん這いの姿に。



「はっ。無様な姿だな豚人形」



 鼻で笑う俺のちょっとした手助けに神前先輩も姿を現す。



「助かったわ、逢真。ちょうど首を、どう斬り落とすか考えていたところなのよ。お陰で上手くいきそうだわ」

「それは良かった」



 そう言い、豚人形の背中に飛び乗り歩き項へと辿り着く。



「され、この位置ならデュランダルでも可能でしょ」



 ふふっ、と笑いながら柄を両手で握りしめ、聖剣を構え力を乗せ振り下ろす刀身は、ブヨブヨの脂肪に飲まれるがそんなもの意味もなさないがの如く斬る。



「ウウッ、アアアアアアアアッ!」



 苦痛の叫びを上げ、赤黒い色の血飛沫が舞い脂肪を斬り開き、機械の体へと到達したのだろう。神前先輩の手から更に押し込み聖なる波動を解き放つ。



「落ちろ!」



 その言葉と共に光り輝き見事、ゴドンッと豚人形の首を斬り落としてみせた。胴から切断され、地面に赤黒い色の血溜まりを作り機体もその場に倒れ込み機能停止。



「さあ、終わったわ」



 機体から飛び降り戦闘終了と同時に仲間が帰ってくる。



「ただいま。色々と見つけてきたよ」

「待たせてすまない」

「おう、お前たち」

「泊まれそうな場所を見つけたわよ、みんな」



 紅と燐は無事に食料を調達でき、アザゼルと四音は一時的に住める場所を見つけたようだ。

 アザゼルと四音に案内されやってきた場所は旅館。倒壊は免れたようだが機械人形のせいで、今は誰も住んでいないがライフラインも辛うじて生きており、温泉もあるらしくここでしばらく休むことに。



「部屋割りだが――」

「美哉と相棒たちで一部屋を使う。文句はないだろ?」



 部屋割りについて話すアザゼルの言葉を遮り決める。美哉以外と寝泊まりする気はない、と態度で示す俺にアザゼルも苦笑し、四音は「いいんじゃないかしら」と。

 紅も、



「美哉ちゃんとイチャつくには他の人は邪魔だからね。いいよ」



 その言い分に俺は堂々と肯定。



「そうだ。俺と美哉の邪魔をされるのは腹が立つ。部屋にも露天風呂が付いているようだし、二人きりで入りたいから誰も部屋に入ってくるな」



 この発言に、神前先輩と立花先輩が乗った。



「じゃあ、私たちも二人で一部屋を使うわ。ヒナと一緒にお風呂も入りたいし」

「うん。ヒナも、真冬ちゃんと、一緒に入りたい」

「そういうことだから、お先に」



 と立花先輩を連れて部屋へ向かう。ふむ、先輩たちの関係を知っている以上、俺も美哉も何も言わずただ見送る。



「わたしも! 遥と一緒がいい!」

「ぼくも、奏と一緒がいいから使わせてもらう」



 奏と遥も、二人同士がいいと仲良く手を繋ぎ先輩のあとに続き先に部屋へ。あの二人は、その方がいいだろう。転生体もあるだろうが、話に聞く限りずっと一緒に生きてきたみたいだしな。

 東雲先輩は紅を見て、



「男同士で部屋を使うかい?」



 と訊くが紅は首を横に振りながら、何故か燐を捕まえその行動に俺も不思議に思う。

 紅? 珍しいな、誰かを選ぶような行動に出るなんて。さっきの調達中に、燐と何かあったか?

 戸惑うのは捕まえられた燐だ。目を丸くさせ、掴む手を凝視して疑問符を浮かべている。



「オレは、燐と一緒の部屋を使うよ。春人くんは兄妹で使いな。桜ちゃんも、こういう時こそ本当に甘えられる兄と一緒の時間を過ごすもの良いと思うよ? 心身共に休めるのも重要なことだからね。さあ、燐。行こうか」



 と腰を抱き寄せ連行。燐は、慌てながら腕を引き剥がそうとするが力は紅の上だ。



「ま、待て! どうしてわたしが紅と一緒なんだ!? ちょっ!? 力強いな! 紅、手を放せ!」

「はいはい、抵抗しても無駄だよ燐」



 俺は気づく。紅は、基本的に名前呼びのくんやちゃんづけ。しかしだ、燐にだけは呼び捨てということに。

 少し考えれば行き着く答え。

 紅はもしかしなくとも燐のことを……と。

 これはこれで、応援したくなる展開だ。美哉を見れば、美哉も俺と同じ答えに行き着いたようで、燐に向け「あらあら」と微笑んでいた。

 桜はどうすればいいのか迷い、東雲先輩が家族水入らずと部屋へ桜と共に行ってしまう。

 最後に残ったアザゼルと四音、この二人も付き合いが長い何も言わずとも酒でも呑むかと調達した中から酒を持って部屋へ向かう。



「俺たちも部屋へ行くか」

「そうですね」



 俺たちも部屋へ入りようやく一息。ヨルムンガンドとの合体も解き、畳の上に寝転ぶ。



「やっと、落ち着けるね」

「はいです。休むのも重要です」



 ヨルムンガンドとヘルは、息を吐きリラックスした状態へ。



「フェンリル、何か食べるか?」

「む? 何があるのだ?」

「そうだなあ……」



 紅と燐から受け取った食料の袋を漁り、畳の上に広げていく。レトルトカレー、チンするご飯、湯煎する密封ハンバーグ、あとはスナック菓子類か。

 レンジも湯煎も、ライフラインが生きているから可能だな。



「我輩はハンバーグを所望する」

「あ、ボクはねカレーがいい!」

「わたくしもカレーがいいです」

「ほれ、ハンバーグとカレー。美哉はどうする?」

「そうですね……。夏目はどれにしますか?」

「俺は、カレーにハンバーグを乗せる」



 贅沢はダメだろうが、たまにはこういうことをしないと腹の虫が治まらない。



「それはいいですね! 私もそうします!」

「なら、決まりだな。準備するか」



 四音から、鍋を受け取っており湯を張り湯煎とチンするご飯をレンジへ。皿も用意し、久々の俺たちが集まった食事に笑い合う。
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