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第二部 第七章 終わりの始まり
最愛の人との再開(3)
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部屋に入ってきた俺を見つめる美哉の姿。
ずっと、待っていた。目覚めるのを。俺の、俺だけの……!
「――美哉!」
我慢できず、美哉に抱きつく。
そんな俺を抱きとめ、背中を撫でる美哉の手の温もりが伝わり涙が込み上げてくる。
「夏目。心配をかけてしまいましたね、ごめんなさい……」
……っ! 謝ることなどない! ないんだ!
俺は首を横に振り、涙声で否定する。
「美哉が謝ることなんてない! 良かった……! ああ、本当に良かった! 目覚めてくれて!」
腕の中にいる美哉。ずっと聞きたかった声、触れたかった体と全身で感じたかった温もり。その全てが今、俺が抱きしめている。こんなに嬉しいことはない!
嬉しさのあまり、涙が頬を伝い泣いてしまう。溢れ止まらない涙を、美哉の細い指が拭い微笑み俺を見つめる。
「夏目、見ない間に白くなったのですね……」
「…………」
右手が前髪に触れそんなことを呟き、左手は胸元に添えて言葉を続けた。
「それに体つきも以前より更に、逞しくなっているような気がします……」
「……っ!?」
服越しの触れただけで気づく美哉に一瞬だけ、気づかれたのではないかとドキリとした。それを隠すよう、すぐに笑みを作り明るめの声で答える。
「この半年で体を更に鍛えたんだよ。あの時の弱いままじゃ意味がないからな。誰であろうと負けることは許されない、そう思って」
以前と変わらないように装い、そう返す俺の瞳の奥を見つめる美哉。まるで、嘘を見抜くように……。
前髪と胸元に触れていた手が頬に触れ優しく包み込む。
「美哉?」
「夏目……。ごめんなさい……」
何故、泣きそうな顔でまた謝る? 言ったはずだ。美哉が謝ることはないと。なのに、どうして、そんな顔をするんだ?
「謝るな。美哉は、何もしてないだろ? 謝る必要は――」
「いいえ……」
俺の言葉を遮り、首を振る。
「……夏目が、変わってしまう理由を作ったのが私だから、です……」
「――っ」
その言葉に息を呑む俺と相棒たち。
部屋の空気が静まり返り、俺は何を言い返せばいいのか戸惑う。
な、なんで気づく? どこで、気づく要素があった?
こんなあっさり、美哉に気づかれるとは予想していなかった。だからか、俺の中で不安が募っていく。
「言葉遣いや声も以前とは違います。纏う雰囲気も、私に触れる手がどこにも行かせない、そんな風に感じるんです。何より、この白髪が物語っているでしょう?」
美哉の言葉に目を開き固まった。
髪に関しては、いくらでも理由をつけて説明するつもりだった。だが、まさか言葉遣いや声、纏う雰囲気、触れる手からバレるなんて誰が予想できる。
「それに分かるんです。私は一度、死んでしまったはず。そんな私を蘇生するために、夏目が可能な限り命を削りながら力を使い結果、白髪になったことくらい。違いますか?」
「あっ……。そ、それは……」
美哉に問われ言葉が詰まった。何も言えない。
美哉は全部、理解してしまっている……。このままだと、このドス黒い狂気なまでの感情にまでも気づかれてしまう……!
な、何か言わなければと思っても上手く言葉が出てこない。
「やはり、そうでしたか……」
それが答えとなり、一言こぼす美哉。
見守っていた相棒たちも何も言えず黙り込む。
こんな形でバレるなんて……。
嫌われてしまったか? 俺を拒絶するのか? 俺を突き放すつもりか? 俺を……。
嫌な思考が巡り抱きしめる腕に力が入る。離れられないよう、どこにも行かせないよう、ドス黒く狂気に満ちた感情が荒れ狂う。
ダメだ……。抑えられない……。どうすればいい……。俺は、どうすれば……。
ああ、そうだ。このまま美哉を縛ってしまおう――。
という思考が駆け巡る。
フェンリルを縛っていた足枷と紐を、今度は美哉に使って永遠に、俺のそばからいなくならないように閉じ込めてしまえばいい。ずっと、俺といればいい! 他の誰でもない、俺と共にずっとずっと一緒に!
狂気と歪んだ愛が漏れ出しそうな時、美哉は微笑んだ。
「いいですよ。夏目が望むのならどんなことでも、私は受け入れるつもりですから。私を縛りたいと思うのならいくらでも、欲望のままに貪りたいというのなら私の全てを喰らっても構いません。ただし、私を愛してくれないと嫌です」
「なっ……!?」
美哉の全てを見透かした言葉に、度肝を抜かれ何度も瞬きをして狂気もドス黒い感情も引っ込む。
「み、美哉……。わ、分かるのか? 俺の心が……」
「ええ、夏目のことなら何でも。長い間、眠っていたとしても夏目の顔を見て触れれば分かるんです。夏目が何を想い考えているのか」
ふふっ、と笑い俺を抱きしめ返す美哉。
なんだよそれ……。反則じゃないか。
背中に腕を回し、至近距離で見つめ額同士を合わせた。
「分かるのなら謝るな。きっと以前から心の底にあった感情なんだよ。それが、美哉を失いかけて表に出てきただけだ。お前は何も悪くない。ただ、今の俺がこうなった、それだけのことだ」
俺も、美哉を見つめ返し頬に触れる。
「そうですね。もう謝ったりしません。以前の夏目も、今の夏目も、私は好きですよ。この気持ちだけは、何があっても変わることはありません。だから、嫌いになったとか拒絶するとか思わないでください。そんな風に思われるのは心外です」
……っ! ああ、その言葉が聞きたかったんだ……。美哉の口からでないと、安心できないし信じられないんだよ俺は。
「ああ。もう思わない、考えもしない」
「夏目。他の誰でもないあなたをずっと愛しています」
「美哉。俺もだ。他の誰でもない、美哉だけを愛してる」
ゼロ距離で見つめ合い続け、どちからでもなくゆっくりと目を閉じキスを交わす。
ほんの数秒だけの口づけ、お互い離れると目が合い笑い合う。
ずっと、待っていた。目覚めるのを。俺の、俺だけの……!
「――美哉!」
我慢できず、美哉に抱きつく。
そんな俺を抱きとめ、背中を撫でる美哉の手の温もりが伝わり涙が込み上げてくる。
「夏目。心配をかけてしまいましたね、ごめんなさい……」
……っ! 謝ることなどない! ないんだ!
俺は首を横に振り、涙声で否定する。
「美哉が謝ることなんてない! 良かった……! ああ、本当に良かった! 目覚めてくれて!」
腕の中にいる美哉。ずっと聞きたかった声、触れたかった体と全身で感じたかった温もり。その全てが今、俺が抱きしめている。こんなに嬉しいことはない!
嬉しさのあまり、涙が頬を伝い泣いてしまう。溢れ止まらない涙を、美哉の細い指が拭い微笑み俺を見つめる。
「夏目、見ない間に白くなったのですね……」
「…………」
右手が前髪に触れそんなことを呟き、左手は胸元に添えて言葉を続けた。
「それに体つきも以前より更に、逞しくなっているような気がします……」
「……っ!?」
服越しの触れただけで気づく美哉に一瞬だけ、気づかれたのではないかとドキリとした。それを隠すよう、すぐに笑みを作り明るめの声で答える。
「この半年で体を更に鍛えたんだよ。あの時の弱いままじゃ意味がないからな。誰であろうと負けることは許されない、そう思って」
以前と変わらないように装い、そう返す俺の瞳の奥を見つめる美哉。まるで、嘘を見抜くように……。
前髪と胸元に触れていた手が頬に触れ優しく包み込む。
「美哉?」
「夏目……。ごめんなさい……」
何故、泣きそうな顔でまた謝る? 言ったはずだ。美哉が謝ることはないと。なのに、どうして、そんな顔をするんだ?
「謝るな。美哉は、何もしてないだろ? 謝る必要は――」
「いいえ……」
俺の言葉を遮り、首を振る。
「……夏目が、変わってしまう理由を作ったのが私だから、です……」
「――っ」
その言葉に息を呑む俺と相棒たち。
部屋の空気が静まり返り、俺は何を言い返せばいいのか戸惑う。
な、なんで気づく? どこで、気づく要素があった?
こんなあっさり、美哉に気づかれるとは予想していなかった。だからか、俺の中で不安が募っていく。
「言葉遣いや声も以前とは違います。纏う雰囲気も、私に触れる手がどこにも行かせない、そんな風に感じるんです。何より、この白髪が物語っているでしょう?」
美哉の言葉に目を開き固まった。
髪に関しては、いくらでも理由をつけて説明するつもりだった。だが、まさか言葉遣いや声、纏う雰囲気、触れる手からバレるなんて誰が予想できる。
「それに分かるんです。私は一度、死んでしまったはず。そんな私を蘇生するために、夏目が可能な限り命を削りながら力を使い結果、白髪になったことくらい。違いますか?」
「あっ……。そ、それは……」
美哉に問われ言葉が詰まった。何も言えない。
美哉は全部、理解してしまっている……。このままだと、このドス黒い狂気なまでの感情にまでも気づかれてしまう……!
な、何か言わなければと思っても上手く言葉が出てこない。
「やはり、そうでしたか……」
それが答えとなり、一言こぼす美哉。
見守っていた相棒たちも何も言えず黙り込む。
こんな形でバレるなんて……。
嫌われてしまったか? 俺を拒絶するのか? 俺を突き放すつもりか? 俺を……。
嫌な思考が巡り抱きしめる腕に力が入る。離れられないよう、どこにも行かせないよう、ドス黒く狂気に満ちた感情が荒れ狂う。
ダメだ……。抑えられない……。どうすればいい……。俺は、どうすれば……。
ああ、そうだ。このまま美哉を縛ってしまおう――。
という思考が駆け巡る。
フェンリルを縛っていた足枷と紐を、今度は美哉に使って永遠に、俺のそばからいなくならないように閉じ込めてしまえばいい。ずっと、俺といればいい! 他の誰でもない、俺と共にずっとずっと一緒に!
狂気と歪んだ愛が漏れ出しそうな時、美哉は微笑んだ。
「いいですよ。夏目が望むのならどんなことでも、私は受け入れるつもりですから。私を縛りたいと思うのならいくらでも、欲望のままに貪りたいというのなら私の全てを喰らっても構いません。ただし、私を愛してくれないと嫌です」
「なっ……!?」
美哉の全てを見透かした言葉に、度肝を抜かれ何度も瞬きをして狂気もドス黒い感情も引っ込む。
「み、美哉……。わ、分かるのか? 俺の心が……」
「ええ、夏目のことなら何でも。長い間、眠っていたとしても夏目の顔を見て触れれば分かるんです。夏目が何を想い考えているのか」
ふふっ、と笑い俺を抱きしめ返す美哉。
なんだよそれ……。反則じゃないか。
背中に腕を回し、至近距離で見つめ額同士を合わせた。
「分かるのなら謝るな。きっと以前から心の底にあった感情なんだよ。それが、美哉を失いかけて表に出てきただけだ。お前は何も悪くない。ただ、今の俺がこうなった、それだけのことだ」
俺も、美哉を見つめ返し頬に触れる。
「そうですね。もう謝ったりしません。以前の夏目も、今の夏目も、私は好きですよ。この気持ちだけは、何があっても変わることはありません。だから、嫌いになったとか拒絶するとか思わないでください。そんな風に思われるのは心外です」
……っ! ああ、その言葉が聞きたかったんだ……。美哉の口からでないと、安心できないし信じられないんだよ俺は。
「ああ。もう思わない、考えもしない」
「夏目。他の誰でもないあなたをずっと愛しています」
「美哉。俺もだ。他の誰でもない、美哉だけを愛してる」
ゼロ距離で見つめ合い続け、どちからでもなくゆっくりと目を閉じキスを交わす。
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