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第二部 第七章 終わりの始まり

第三幕 最愛の人との再開(1)

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 奏、遥と話し終えたあと二人を自宅へ招く。

 俺が外出の際には、美哉のそばにヘルがつくことになっている。そのため、そばにはフェンリルとヨルムンガンドが常に控え共に行動する。

 二人は、俺の家を目にして驚いた顔をした。ここへ来てまだ数時間しか経っていないだろうが、街を歩き己の目で見てきたから分かっているはず。無傷で残っている家があるなんて、といったところか。



「これ、結界……?」

「みたい。この結界で守られてる」



 ほう……。目には視えないし、触れなければ分からない結界に気づくか。さすがは、ウロボロスの転生体。



「二人共、こっちだ」

「お、お邪魔します」

「します」



 家への中に入れ、リビングへ通しソファーに座るよう促し話す。



「我が家が無事なのは、巫女がいるからだ。その巫女に結界を張らせ、機械人形を近づけさせないようにしてある」



 俺の説明に納得する二人と、リビングへトレイを持って紅茶を運んでくる人物。

 小柄で、セミロングの亜麻色の髪、茶目の女性はソファーに座る二人へ自己紹介と共に挨拶。



「初めまして。あたしは、東雲桜よ。夏目くんの友人の一人で、結界の力を宿す巫女でもあるの。よろしくね」

「は、はい。よろしくお願いします! わたしは、双葉奏って言います!」

「よろしくです。ぼくは、二条遥」

「奏ちゃんと遥ちゃんね。紅茶、よかったらどうぞ」

「はい!」

「いただきます」



 桜が二人の前に紅茶を置き、俺にもストレートティーを手渡す。



「砂糖はいつも通りでよかった?」

「ああ。結界の維持は問題ないか?」

「ええ。アザゼル先生と神器のお陰で今のところは何もないわ。あたしの方も、肉体に影響はないから大丈夫」

「そうか。維持を続けてくれ」

「任せて」



 会話を終えた桜は、二人に笑みを向けリビングから出て行く。

 紅茶に口をつけ一口、飲む俺に奏は目を光らせ好奇心が刺激でもされたのか訊いてくる。



「この家には、女性が二人も一緒に住んでるの!? もしかしてハーレム状態とか!?」

「奏、それ失礼だよ」



 と、奏の裾を引っ張り前のめりで訊く彼女を制止する遥。

 二人……? ああ、地下で会った燐のことを言っているのか。



「ハーレムなわけないだろ。地下で会った燐と今会った桜も仲間だ。あと、俺は美哉一筋だ。浮気などするか」



 俺の言葉に、奏は少しつまらなそうな顔をして座り直す。隣に座る遥は、やれやれといった風に肩を竦め紅茶を飲む。



「さて、奏と遥には少しやってもらいたいことがある」



 紅茶を半分ほど飲み終えてからそう切り出す。

 二人は首を傾げ、何を? と。



「俺以外の神殺しに、その存在理由の説明と、この家の護衛を二人にしてもらう」



 そう言う俺の話に顔つきが変わった。



「神殺しの存在理由を知っているのは俺と、八岐大蛇と契約をしている神殺しだけだ。あと二人は知らない。後日、紹介する時に話しておいてほしい」

「それはいいけど、護衛っていうのは?」



 奏の質問に、簡潔に答える。



「この家に今、俺にとって一番大切な人が眠っている。彼女を護るため二人の力がいる」

「なるほどね。分かったわ! わたしと遥に任せて! ね? 遥」

「ん。ぼくたちにできることは何でもする」

「頼もしいな。ありがとう。それと、衣食住を保証する。この家の物は好きに使ってくれて構わない。ただし、俺の部屋には許可なしに入るな。それさえ守れば自由にしていい」

「オッケー! じゃあ、さっそくこの家を見て回るわよ、遥!」

「はいはい」

「桜に案内を頼むといい」



 話を終えた奏は、遥の手を引っ張り家の中の探検に出る。その案内役を桜が請け負い、リビングを出てまずは一階から教えるようだ。

 半分、残った紅茶を飲みながら考える。

 半年前の悪神と戦う前に、アザゼルと四音ことルシファーに真実を教えられた。が、神殺しの存在理由については何も聞いていない。

 まさか、神殺しにそんな秘密があったとはな。知った時は、腸が煮えくり返る思いだったぞ。何故、教えなかったと言いたい気持ちはあった。



 しかしだ、もし機械仕掛けの神と戦う前に、存在理由を知っていたら本当に戦えていたか? という不安要素があったかもしれない。俺だけではなく、他の仲間にも。

 そう考えれば、あの時に何も言わなかった二人の気持ちを汲むべきだろう。

 空になったカップの底を見つめる俺にフェンリルが、



「まさか、転生体と巡り会うとは。我輩でも初めて見たぞ」

「あっ、それボクも思った! 本当にいたんだね!」



 ヨルムンガンドも、兄の背にとぐろを巻きながら変わらずの元気な声で言う姿に、笑みを作り返す。



「この半年で力はむろん、知識を叩き込んだからな。こんな世界だ、もしやと思いこの街の外をヨルムンガンドの目を使って視ていたが、こうも簡単に俺の方へ引き込めたのは良かった。黒炎を視た時、何かしらの転生体とは思ったが。まさか、ウロボロスだったとはな。貴重な戦力にもなる。あとは、他の仲間に紹介すればいいだけ」



 これにフェンリルとヨルムンガンドも同意。



「うむ、この家を護る護衛としても申し分ない。結界が永遠に持つとは限らぬ、どこか綻びが生まれるやもしれぬし、攻め込まれた際に美哉を護る者がいなければならぬ」

「そうだよ。ヘルが常にそばにいるとはいえ、何が起きるか分からないのが現状だもん。この前だって、あの変な人形がいっぱい攻めて来てすぐ夏目が察知して、一キロ先で殺し合ったところだし」



 相棒たちの話に五日前のことを思い出す。

 燐や東雲先輩、神崎先輩たちは物資の調達に出払っていた。紅も悪神の動向を探るため別行動中、アザゼルとルシファーも塔の建設に関しての情報と、拉致られた人間の現状を知るために家にはいなかった。



 桜は家で待機、俺が美哉のそばにいたその時に数キロ先で機械人形の存在を察知した。

 俺は、すぐさま行動に出た。相棒を連れこの家の一キロ先で戦闘になったのだ。機械人形は大群その数は百、それを俺たちだけで殺し尽くす。

 結果的に、被害はなくバラバにした機械人形の残骸がそこら中に転がったが。

 だが、あの時のようにまた大群で襲い誰も美哉のそばにいなかったらと思うと、腹の底から怒り、殺意、憎悪が止めどなく湧いて破壊と殺人衝動に駆られてしまいそうになる。



 奏と遥に護衛を頼んだのは、それを避けるための処置だ。

 カップを置き、ソファーから立ち上がり相棒たちと共に自室へ戻る。
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