172 / 220
第二部 第七章 終わりの始まり
幕章 待っている
しおりを挟む
〈※夏目目線に戻ります〉
――時は遡り……。
美哉を蘇生して一ヶ月。しかし、彼女は目覚めない……。
ずっと眠り続けていた。ヘル曰く、仮死状態に近いのだと。
べッドで眠る美哉のそばに俺は常にいた。相棒たち以外は、誰もこの部屋に入れさせない。
……美哉を蘇生した時、アザゼルたちに驚かれそして危険行為だと怒られた。が、そんなことどうでもいい。
アザゼルは、
「一歩、間違えればお前もフェンリルたちも死んでいたんだぞ!?」
と。だが、俺からすれば美哉のいない世界で生きる気など毛頭ない。だがら、言い切る。
「美哉が死ぬのなら、俺も喜んで死んでやる」
俺の言葉に、仲間は言葉を飲み込み黙った。
ただ、紅だけは俺の姿を見て少し悲しげに言う。
「夏目くん。力を酷使したんだね……」
俺の髪は真っ白になっている。命を削った後遺症とでも言おうか、まあ気にすることもないが。
「これ以上、話すことはない。部屋に戻る」
話を切り上げ、リビングから出て自室に戻る。仲間が心配し怒る気持ちも分からないわけではない、だが俺にとってそれ以上に大事なのは美哉だ。
部屋の中に入ると鍵をかけ、椅子に座り左足を見た。美哉を蘇生するために自らの命を使い、寿命を削ったがそれを補ったのが相棒たちだ。その結果、俺の肉体は人間のそれとは大きく異なる。
代償に支払った左足は義足だったが、今では生身の足が再生し血が通い元通りに。神の子である相棒たちのお陰で、俺は人間から神の子に近い肉体を得た。
軽度の傷なら一瞬で再生し、骨が折れたとしても数分で治すほどに。臓器は、一日もあれば完治するだろう。
即死級の攻撃にも耐えるだろうな。まだ、試したことはないため分からないが。
他にもヘルが持つ氷結、ヨルムンガンドが持つ猛毒、何よりフェンリルが持つ青い炎も手助けなく行使できる。
俺は、そんな肉体を新たに手に入れた。
とはいえ、変わったのは肉体だけではない。心も。
以前の俺なら、仲間を心配させないよう行動には気をつけ、根は優しく思いやりがあると言われたことも。美哉からは、押しに弱く面倒ごとに巻き込まれるタイプだと。
俺自身にも心当たりならある。恋愛やエッチなことに関しては奥手だった。
「が、今は違うな。思考も感情も……」
顔を手で覆い、今は美哉に触れたくて仕方がない。
すぐにでも抱きしめたい、温もりを感じたい、誰にも触れさせたくはない、その目に映すのは俺だけでいい。求めるのも、必要とするのも、愛するのも俺だけ。
どこにも行かせない、俺の手の届く範囲にいればいい。俺のそばにいろ、俺にだけ笑みを見せてくれ。
……そんな、ドロドロとしたドス黒い感情がずっと渦巻き、抑制するのが困難になりつつある。
仲間の目を気にするつもりもなく、俺の邪魔は許さない。敵は全て殺す、一人も一体残らず殺し尽くす。
そう考え行動するようになった。
まず、家の周辺には桜に結界を張らせ、燐には敵の情報を集めさせ、俺は足りない知識を頭に叩き込んだ。
最近では、ただ敵を倒すための戦い方ではなく確実に殺すための戦い方に変更し、深夜に徘徊し機械人形が有象無象しており実戦にはちょうどいいからと試している。
現状、そんな生活を続けている。
「ふぅー……」
息を吐き出し、眠る美哉を見つめる。今の俺を見たら美哉はどう思うだろうか?
――怖がる? 嫌う? 遠ざける?
そんなことを考えたあとに必ず行き着く思考回路。
「ははっ」
笑みをこぼし、指の隙間から美哉だけを視界に映す。
自分でも分かる。俺の目は、虚ろで狂気を孕み、それでいて愛おしくて堪らない壊れ狂った愛情がある。
「大丈夫だ。そんなことは起きない、起こさせない」
……だって、俺が美哉を心の底から愛し求めているんだぞ? 俺たちは相思相愛だ。
もし、そんなことになるなら……そうなる前に体にも心にも刻めばいいこの俺を。
俺なしでは生きていけないようにすればいい。
「そうだろ? 今の俺のように」
と、口に出す。そして、心の底から願う。
ああ、早く目覚めてくれ美哉――と。
――時は遡り……。
美哉を蘇生して一ヶ月。しかし、彼女は目覚めない……。
ずっと眠り続けていた。ヘル曰く、仮死状態に近いのだと。
べッドで眠る美哉のそばに俺は常にいた。相棒たち以外は、誰もこの部屋に入れさせない。
……美哉を蘇生した時、アザゼルたちに驚かれそして危険行為だと怒られた。が、そんなことどうでもいい。
アザゼルは、
「一歩、間違えればお前もフェンリルたちも死んでいたんだぞ!?」
と。だが、俺からすれば美哉のいない世界で生きる気など毛頭ない。だがら、言い切る。
「美哉が死ぬのなら、俺も喜んで死んでやる」
俺の言葉に、仲間は言葉を飲み込み黙った。
ただ、紅だけは俺の姿を見て少し悲しげに言う。
「夏目くん。力を酷使したんだね……」
俺の髪は真っ白になっている。命を削った後遺症とでも言おうか、まあ気にすることもないが。
「これ以上、話すことはない。部屋に戻る」
話を切り上げ、リビングから出て自室に戻る。仲間が心配し怒る気持ちも分からないわけではない、だが俺にとってそれ以上に大事なのは美哉だ。
部屋の中に入ると鍵をかけ、椅子に座り左足を見た。美哉を蘇生するために自らの命を使い、寿命を削ったがそれを補ったのが相棒たちだ。その結果、俺の肉体は人間のそれとは大きく異なる。
代償に支払った左足は義足だったが、今では生身の足が再生し血が通い元通りに。神の子である相棒たちのお陰で、俺は人間から神の子に近い肉体を得た。
軽度の傷なら一瞬で再生し、骨が折れたとしても数分で治すほどに。臓器は、一日もあれば完治するだろう。
即死級の攻撃にも耐えるだろうな。まだ、試したことはないため分からないが。
他にもヘルが持つ氷結、ヨルムンガンドが持つ猛毒、何よりフェンリルが持つ青い炎も手助けなく行使できる。
俺は、そんな肉体を新たに手に入れた。
とはいえ、変わったのは肉体だけではない。心も。
以前の俺なら、仲間を心配させないよう行動には気をつけ、根は優しく思いやりがあると言われたことも。美哉からは、押しに弱く面倒ごとに巻き込まれるタイプだと。
俺自身にも心当たりならある。恋愛やエッチなことに関しては奥手だった。
「が、今は違うな。思考も感情も……」
顔を手で覆い、今は美哉に触れたくて仕方がない。
すぐにでも抱きしめたい、温もりを感じたい、誰にも触れさせたくはない、その目に映すのは俺だけでいい。求めるのも、必要とするのも、愛するのも俺だけ。
どこにも行かせない、俺の手の届く範囲にいればいい。俺のそばにいろ、俺にだけ笑みを見せてくれ。
……そんな、ドロドロとしたドス黒い感情がずっと渦巻き、抑制するのが困難になりつつある。
仲間の目を気にするつもりもなく、俺の邪魔は許さない。敵は全て殺す、一人も一体残らず殺し尽くす。
そう考え行動するようになった。
まず、家の周辺には桜に結界を張らせ、燐には敵の情報を集めさせ、俺は足りない知識を頭に叩き込んだ。
最近では、ただ敵を倒すための戦い方ではなく確実に殺すための戦い方に変更し、深夜に徘徊し機械人形が有象無象しており実戦にはちょうどいいからと試している。
現状、そんな生活を続けている。
「ふぅー……」
息を吐き出し、眠る美哉を見つめる。今の俺を見たら美哉はどう思うだろうか?
――怖がる? 嫌う? 遠ざける?
そんなことを考えたあとに必ず行き着く思考回路。
「ははっ」
笑みをこぼし、指の隙間から美哉だけを視界に映す。
自分でも分かる。俺の目は、虚ろで狂気を孕み、それでいて愛おしくて堪らない壊れ狂った愛情がある。
「大丈夫だ。そんなことは起きない、起こさせない」
……だって、俺が美哉を心の底から愛し求めているんだぞ? 俺たちは相思相愛だ。
もし、そんなことになるなら……そうなる前に体にも心にも刻めばいいこの俺を。
俺なしでは生きていけないようにすればいい。
「そうだろ? 今の俺のように」
と、口に出す。そして、心の底から願う。
ああ、早く目覚めてくれ美哉――と。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
劣等生のハイランカー
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す!
無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。
カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。
唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。
学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。
クラスメイトは全員ライバル!
卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである!
そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。
それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。
難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。
かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。
「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」
学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。
「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」
時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。
制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。
そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。
(各20話編成)
1章:ダンジョン学園【完結】
2章:ダンジョンチルドレン【完結】
3章:大罪の権能【完結】
4章:暴食の力【完結】
5章:暗躍する嫉妬【完結】
6章:奇妙な共闘【完結】
7章:最弱種族の下剋上【完結】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる