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第六章 機械仕掛けの神

悪神の降臨09(7)

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 視界を赤く染め上げる、この辺り一体を焦土と化す隕石。

 夏目は、頭の中であれしか手がないと考えフェンリルを呼ぶ。



「フェンリル、蒼炎を使うぞ!」

「承知した!」



 猶予はない、フェンリルの口の中に右手を突っ込み牙が刺さり血が滴ると、発火剤となり蒼く燃え上がる。炎が漏れ出す右手を引き抜き、夏目の叫びに呼応する。



「燃え盛れ!」



 火力が増していき、蒼い炎を頭上高く振り上げ、球体のイメージではなくヨルムンガンドを頭で描いた。何もかもを飲み込み焼き尽くす蛇を。

 蒼炎は、夏目のイメージ通りの姿へと球体から蛇の形へと。



「なっ!?」

「嘘でしょ……」



 この土壇場で作り変える夏目に驚愕するアザゼルとルシファー。



「全て飲み込め!」



 と、叫び放つと蒼炎の蛇は、夏目の手から離れ天へと昇り落ちる隕石に大口を開け炎の中へ飲み込む。



「溶かせっ!!」



 夏目の言葉に、質量はむろん火力が勢いを増し隕石は跡形もなく溶け消滅していく。

 役目を果たした蒼炎の蛇も上空で消えていき、事なきを得てこれに誰もが胸を撫で下ろす。

 とはいえ、森林が未だに燃えていることに変わりはなく、休む暇もなく真冬とレヴィアタンを筆頭に消火作業に追われる。

 上空から水を流すレヴィアタン、地上からは美哉とヘルの氷で鎮火させ終わった頃には、悪神の姿が見えず逃げられたことにアザゼルは唇を噛む。

 陽菜は二人の治療に当たり、残りのメンバーは次なる手を思案していたが謎があり浮かばない。



「機体を消し飛ばしたはずが、どうやって復活したんだよ……」

「不死身なのか、それともいくつもの換えの機体があるのか……」

「それに、あの二冊の本はいったい……」



 夏目が口にする謎に、紅と燐も頭を悩ませる。悪神の能力が何のか、謎に思う点は尽きないのが現状だ。そして、悪神はどこへ消えたのかということ。

 アザゼルとルシファーが、広範囲で索敵の陣を展開したが何一つ見つけられなかった。

 治療と鎮火が終わり、全員は樹海から出ることに。フェンリルが本来の大きさに戻り、全員を背に乗せ夏目宅に帰り休息を取るとついでに泊まる運びへ。



 体を休めるのも大事なこと、美哉と紅の手料理に腹を満たし、お風呂で疲れを取り緊張を解す。居間に布団を敷き燐たちはそこで眠る。

 みなが寝静まった深夜に、一人起きて庭に出てきた夏目。

 夜空を見上げながら考え込む。



(倒したと思っても倒し切れず、それどころかパワーアップして俺たちを殺しにきた。……あれに勝てるのか?)



 不安が募る。



(俺の攻撃が通用した気がしない。アザゼル先生たちの攻撃すら効いてない。そんな奴をどうやって倒せばいいのか分からないし、俺たちが勝つ姿が浮かばない……)



 そんなことを考える夏目のそばに、相棒のフェンリルが寄り添い声をかける。



「主、そんなに不安がることはなかろう。我輩がそばにいるであろう?」

「フェンリル……」



 と、隣にいるフェンリルを見ると、何故か根拠もなく安心してしまう。それに、さっきまで抱いていた不安が少し消え笑みを浮かべる夏目。



「へへっ。そうだな、相棒がいてくれる」

「であろう。主には我輩がいて、美哉も弟と妹もいるのだ。勝てないことなどない。必ず、主たちは勝利を掴む。そう我輩は信じているのだ。故に主はどんと構え、我輩や弟たちの力を思う存分に振るえばよい。それに応えるのが相棒としての役割」

「そっか。そうだよな、ありがとう。フェンリル」

「礼などいらぬ。思ったことをそのまま言ったにすぎん」



 ははっ、と笑い合う夏目とフェンリル。



 相棒がそう言ってくれることに心の底から嬉しく感じ、胸の奥が温かさに包まれる。大丈夫だ、必ず勝って戦いなんてない楽しい日常に戻る。

 そう思う夏目だった。
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