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第六章 機械仕掛けの神

悪神の降臨10(6)

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 鬼の形相となった悪神の姿が変わる。腕の数が八本に増え、顔が左右に二つ、合計三つ。それぞれの手には扇が二つ、剣が二本、二冊の本、槍が二本ともはや神とは言えない姿へと。



「な、なんだ、あの姿は……」



 言葉を失う夏目。

 悪神は、扇を振りかざし二度振るうと旋風を起こし吹き荒れる。立っているのも困難なほどの風力、その場に膝をつき吹き飛ばされないよう身を屈めるしかない面々。



「ちょっと、この力はなに!? ……ヒナッ!」

「ま、真冬ちゃん!」



 文句を言う暇もなく、吹き飛ばされそうな陽菜の手を掴み取り引き寄せ、護るように抱きしめる真冬。



「お、お兄様……!」

「桜、僕のそばに!」



 東雲兄妹も身を寄せ合い耐える。美哉はグングニルを、燐は剣を地面に突き刺し、耐え続けるが悪神の次なる行動に目を開いた。

 剣を振り下ろしたのだ。地面が数メートルの距離を深く抉り、衝撃波で夏目たちの体が吹き飛ばされた。

 悲鳴がこだまする。

 それでは終わらず、通常の三倍の大きさの槍が飛来し洞窟の壁に突き刺さると、そこからヒビ割れ大穴を空け破壊し、二冊の本に書かれている一節を読み上げる。



「――――――」



 人間では理解できない言霊。すると、頭上で雷が何度も発生し、水が溢れ足首まで浸かるとそこへ雷を落とし感電が全員を襲う。



『――――――――ッ!』



 洞窟内に夏目たちの悲痛な叫びがこだました。

 天変地異を、悪神の手で引き起こし追撃と言わんばかりに悪神はまた一節を読み上げる。



「――――――」



 何語を喋っているのか理解できない夏目。ヨルムンガンドの鱗のお陰で致命傷は避けられたが、全身が痺れ動けない状態だった。それは仲間がみな同じ、フェンリルとヘルが護りの体勢を取り警戒。



(……っ! か、体が痺れて、動けない……!)



 読み上げ終わると、雪が降り次第に吹雪へと。視界が真っ白に変わり肌に刺さる冷気、呼吸すると喉が凍るような痛みが襲う。

 どこからか轟音が聞こえてくるとアザゼルが叫ぶ。



「全員、この洞窟から抜けだせ! 今すぐにだっ!!」



 と、言う焦った声。

 その理由はすぐに分かった。悪神が創り出した雪崩がこの狭い空間内に、頭上から流れ込んできたからだ。

 これでは生き埋めになることを誰もが理解し退避行動を取る。



「美哉!」

「夏目!」



 フェンリルが夏目とヘルを背に乗せ、美哉は彼の声で顔を上げ手を取り回収、真冬たちも神獣が回収し入口へ急ぎ駆ける。

 陽菜は真冬が、桜は春人が、燐は紅が助け形振り構わず出口へ逃げ雪崩から逃れることに成功。

 洞窟の入り口へと出てきた面々は息が荒く、数秒遅れてアザゼルとルシファーも洞窟から脱出。



「な、なんつーデタラメな力だよ……」

「神、という名がつくだけのことはありますね……」



 息を整える夏目と美哉の会話のあと、地響きが伝わり全員が見上げる視線の先に洞窟から出てくる悪神。

 その手に持つ槍と剣が、無慈悲に雨の如く降り注ぐ。



「させぬわ!」



 フェンリルが吠え、青い炎を吐き燃やそうと試みるが炎は逆に利用されてしまう。槍と剣に纏わせ威力が増し、森林を焼き払う結果に。

 その場から離れ体勢を整える余裕すら与えず、二度目が放たれおまけに追尾型に切り替わり全員に襲い掛かる。アザゼルとルシファーの力で護りと攻撃に打って出る二人。



「アザゼル!」

「先生!」



 紅と夏目が叫ぶ。

 アザゼルが光の球を創り撃ち落とし、ルシファーが魔力による壁を作り護る。それでも悪神は扇を使い旋風を生み出し、軌道を無理やりに変え二人の体に剣が突き刺さり、斬りつけ鮮血が飛び散った。



「大蛇! 二人を!」

「加勢するです!」

「レヴィアタン!」

「フェニックス!」



 紅が八岐大蛇との融合を解き、喚び出し八つの頭で降り注ぐ槍と剣を薙ぎ払わせる。ヘルの能力の一つ氷像に変え、それをレヴィアタンがへし折っていき、フェニックスも旋風で押し返す。

 武器の雨を何とか凌ぐ面々だが、悪神は見下ろし嘲笑うように言葉を残す。



「これで終いだ。愚か者共」



 そう告げ、この辺り一体を焦土と化す隕石を落とす。

 血塗れのアザゼルとルシファーは言葉を失い、夏目たちの視界を赤く染め上げるのだった。
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