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第六章 機械仕掛けの神

神器と強化16(4)

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 意識を取り戻した夏目は、フェンリルのお腹に頭を置き寝転がっていた。



(ああ、俺ってば意識を失って……)



 視界がはっきとし上体を起こす。



「起きたね、夏目くん。フェンリルたちが治療してくれたから、体の方は大丈夫だと思うけど。まだ痛む?」

「そういえば……どこも痛くない?」

「それはよかった。じゃあ、特訓の続きといこうか」

「分かった」



 紅から扱う方法を聞く夏目。



「今までは、破壊するため神通力を纏い力を放っていた。そうだよね?」

「ああ。こう……拳とか脚に纏わせて力任せに思い切り」

「なるほど。確かに、殴る蹴るで相手にダメージを入れられる。だけどそれは表面上だけで、内面には届きにくいんだ。ほら、喧嘩とかで殴り合うと顔とかに痣や打撲ができるけど、体力や気力が尽きいないと相手は倒れない。夏目くんの戦い方はそんな感じだね」

「ほうほう……」

「最後の方は、夏目くんの体力とか気力が尽きかけ、そこへ神獣の力が後押ししてくれたから勝ててこれた。でも、この先はそれじゃあダメだ。なにせ、相手は機械仕掛けの神」

「…………」



 そう、この先の敵は使徒でも神殺しでもない。機械仕掛けの神が相手だ。

 今までの戦い方では、神に届くことはないだろう。



「だからこそ、この扱い方をマスターしてもらう必要がある。受けて分かったと思うけど、表面ではなく内面に届く一撃」



 夏目の打撃は皮膚を焼き、骨を折り、衝撃波を起こす。だが、ただそれだけで神殺し相手だと一発で倒せたことはない。

 何度も放ち、時に夏目の気力や体力が保たないことも幾度いなくあった。春人の時、空海の時もそう、持久戦となると消費が激しい。

 神通力の扱い方で最後はヘトヘト、または追い込まれる。その度に、相棒たちに助けられてきたのも事実。



 それでは、悪神には勝てないどころか届かない。

 消費を最小限にかつ攻撃は即死を与えるほどの威力を、それが今の夏目には必要な力と扱い方。



「さて、始めようか」

「おう!」



 紅の言葉に立ち上がり拳を握る。

 ヨルムンガンドと合体し、鱗のみで自身を護る。神通力は、全身にではなく攻撃を放つ瞬間にのみ。



 夏目の拳を受けるのは紅だ。彼に向け拳を放つが弱く彼は平気な顔で「まだまだ足りない」と。

 夏目は、この特訓で思い出す。燐に神通力を学んだ時、こんな風に打ち込みを続けていた頃のことを。

 それに特訓はもう慣れている。だから苦とは思わない。

 紅の指示の元、夏目は何度も打ち込み彼が使ったように、より強い技を手に入れるべく奮闘する。

 そうして、それぞれ神器の扱い方を学ぶのだった。



 アザゼルと四音、紅の三人は集まり報告。



「二人共に、問題なく神器の力を発揮できるようになっているわ」



 そう最初に言うのは、桜と陽菜の担当の四音だ。



「そうか。美哉たちも十分に戦力になる。その上で更に強くなった」



 アザゼルも、美哉と真冬、春人のことをそう評する。



 最後に紅は、



「正直、最初の彼では全く戦力にならないと思っていた。使徒相手にボロボロになり弱く覚悟も足りない。でも、これはオレの見当違いだったよ。夏目くんは強い」



 日に日に夏目は強くなり、神獣との関係も強固な絆が生まれ、このメンバーで唯一悪神に届きうる力を持ち始めている。そう紅は思った。

 故に、紅自身でも夏目に特訓をつけ本当の神殺しへと成長を促す。

 今回の特訓も夏目は、異常な成長速度を見せた。まだ教えて一日も経っていないというのに、紅同様に形になってきているのだ。



「まだ威力やインパクトの瞬間に少し無駄があるとはいえ、あの飲み込みの速さや成長は恐るべきものだよ」



 そう語る紅に、アザゼルも四音も笑みを見せる。



「悪神を滅ぼす鍵は夏目だな。あいつには、もっと強くなってもらわないと」



 アザゼルの意見に四音も同意するが、一つだけ不安要素があった。



「夏目くんが力を発揮できる理由は、きっと美哉さんでしょうね。彼女がそばにいれば、アザゼルの言うように悪神を滅ぼせるけれど。もし彼女を失うことがあれば、悪神どころか今ある全ての――いえ、言うべきではないわね。ごめんなさい」



 四音の話に黙り込むアザゼルと紅。



「四音の言いたいことは分かる。美哉ちゃんを失った時、きっと夏目くんは悪神よりもっと最悪で最凶の敵となるだろう。オレは、そう考える。だからこそ……」

「ああ。紅の言う通り、それだけは何があっても避けるぞ」



 紅の言葉に、続くようにアザゼル言う。

 彼には、この世界を護るために戦ってもらう、のだとここにいる三人共に同じことを考える。
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