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第六章 機械仕掛けの神

神器と強化18(2)

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 美哉と真冬、春人の場合。

 美哉はグングニルの扱いに苦労していた。



「………………」



 グングニルが纏う神気を放とうと、意識を集中させるまではいい。問題はそのあとだ、神気を放つつもりが逆に槍が飛んでいく。

 まあ、飛んでいったとしても手元に戻ってくるが。

 それをずっと繰り返しているために進まない。おまけに神気も一ミリたりとも放てず。



「はあー……」



 ため息をつき、ここまで扱うのに苦労したのは初めてだ。

 集中力や気力だけが削られ、疲労が蓄積されていく。それでもせめて、神気を矛先に纏うことができればと何度も試し結果は同じだった。少し休憩を挟む美哉。



「まさか、ここまで扱いに悩むとは……」



 近くで同じように神器を扱う二人が目に入る。真冬は、相性が良いらしくすぐにその真価を発揮していた。

 アザゼルが用意した耐久、硬さを強化した岩をいくつも破壊していく。



「これ、最高じゃない! 手に馴染む感じも、この斬れ味も!」



 と笑いながらデュランダルを振り回す真冬。

 ただ振り回すだけではない。獲物に合わせ、斬り方を変えている。人形であれば横一文のように斬撃波を起こし真っ二つに、岩などの丸みのある大きなものには叩き割るかの如く上から刀身を振り落とし、手足の多い場合では四方へ斬り込みを入れ、懐に入れば突き刺すように。それぞれに対応できるスタイルを取る。



 春人もヤールングレイプルこと鉄の手袋をつけ、フェニックスからの火種をより強く質量、火力を引き上げていく。



「フェニックス、火種を」



 主の命令に、神獣は口から火種を手袋へ。手の平から炎を出すより手首から先を炎へ、それを得意の手刀の構えで長時間キープできるよう、熱に耐えられる特訓を独自に取り組む。



 美哉も二人を見て、己がどう使いたいのかを改めて考える。



「私なら……」



 真っ先に思いつくのはやはり夏目のために、戦える力が欲しいことだった。

 そうするには、槍の扱いにもっと慣れるべきだろうと休憩を終え、槍を構え昔から教わってきた基礎を思い出す。



 息を吸い吐くを繰り返し、目蓋をゆっくりを開ける。

 イメージしろ、と頭の中で言い聞かす。

 目の前に己をいると、自分ならどう動き槍を使うかと。幻覚でも見ているかのように美哉の視界には、もう一人の自分が今目の前にいた。



「…………っ」



 同じく槍を構えた幻覚が動く。槍を突き出し、こちらが躱せば槍の矛先は横へ一閃し、それも躱せば二段突きへと。

 攻撃を矛先で防ぐ、耳の奥で鉄同士がぶつかり甲高い音が鳴り響く。美哉は、息を吸い込み一歩踏み込む。



 二段突きでも横へ一閃でもない、グングニルの特性を活かす。槍を投げ飛ばし、風を切りもう一人の己を貫く。が、それを躱され美哉は無防備だ。しかしグングニルは、背後から相手を襲う。腰から腹を貫き、美哉の手に戻ってくる。



「ふぅー……」



 息を吐き出し、幻覚の己は消えまた新たに生み出す。

 互いに構え、矛先と柄がぶつかり合う。

 傍から見れば、ただ槍を振り回しているようにしか見えない。だが、アザゼルにも視えている。美哉が、脳内で生み出した己と戦っているイメージが、そしてグングニルから神気が放たれ、威力と美哉の動きのキレも増していく。



「美哉の望みに、グングニルが応えようとしているな」



 大切な人を護る力、それを成そうとする美哉の想いに。

 しばらくして、荒い呼吸をし槍を突き立てその場に座り込む。



「はぁっ、はぁっ……」



 美哉はイメージを一度、解き視線をグングニルへ。

 黄金に輝きを放ち、槍全体に神気を纏う神器がそこにはあった。



「これは……!」



 驚く美哉の元へ二人が近寄る。



「美哉。ずっと一人で槍を振るから、何をしてるのかと思えばすごいことになってるじゃない? グングニルが徐々に黄金に輝き出して、美哉が振るう度に私のところまで波動? みたいな感じが伝わってきたわ」

「それにすごい気迫と集中力だったから、終わるまで声を掛けるのを待っていたんだ」



 真冬、春人がそれぞれ見た感想をこぼす。



「今まで見てきた美哉の雰囲気や戦う姿とは違い、槍を振る姿はまるで戦乙女のようだったしね」

「ああ、それは分かる。確かに、神崎くんの言う通り僕にもそう見えたよ」

「そ、そうですか?」

「ええ」

「うん」



 二人の感想に少し照れくささを感じるが素直に嬉しいもの。笑い合う三人を見守るアザゼルも笑った。



「この三人共、神器に選ばれた貴重な人材だな」



 などと呟く。
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