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第六章 機械仕掛けの神

第二幕 神器と強化19(1)

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 桜と陽菜の場合。

 四音がそばにつき神器の扱い方の説明を受ける。



「己が何をしたいのかをよく考えること、そして強く想うことが何より大事よ。神器はその想いが強ければ強いほど応えてくれるから」



 桜は腕輪を、陽菜は指輪を見て考える。

 この先の戦いは、神殺しではない。神だ。

 たとえ機械仕掛けの神だとしても人間ではない。戦う力を持たない二人だが、その能力はなんのためにあるのか。



 桜は思い描く。仲間を護れる力を――。

 スルトの炎に飲まれ、何もできずただ兄の背に隠れるだけじゃ意味がない。もっと結界が強固であれば、神獣の力でも破壊されなければ、仲間を護り続けれられるのではないかと。

 誰にも壊されない結界を想像する。仲間を護り、盾にだってなれる己だけの結界の力を――。



 何か掴めそうな桜に四音は言う。



「そのまま思い描き望みなさい。そうすれば、神器は必ず応えてくれるから」

「はい!」



 四音の言葉に、桜は力強く頷き続ける。



 一方の陽菜は、指輪を見つめながら立ち竦む。

 桜は一歩進んだ、しかし陽菜は足踏みをしている感覚だ。

 戦うのは正直怖い。今まではずっと真冬が護ってくれていた。きっとこれからもそうだろう。



「………………」



 非力な自分の代わりに、体を張って自ら敵に向かっていくのが真冬だ。でも陽菜には、それができず足が竦み動けない。

 想像しただけで膝を抱えうずくまってしまいそうになる。

 そんな陽菜に四音が抱きしめる。



「……っ」



 肩をビクつかせ顔を上げる陽菜を、真っ直ぐ見つめ返し四音は言う。



「怖いわよね? 誰だってそうよ、戦いに恐怖を抱くの。怖くないわけがない、それでも戦わないと護れない。だからみんな戦うの。でもね、怖いと思うことは恥ではないわ」



 励ますように優しい声で。



「感情が正常に働いている証拠。でもそこから半歩でいい、踏み出す勇気を持ちなさない。そうすれば貴方が、本当に護りたい、助けたいと思う人、みんなを貴方の力がそうしてくれるわ」



 頭を撫で、気づかせるように陽菜へ。



「忘れてはダメ。そばには誰がいる? 貴方の声を一番に気づき、共に立ってくれる人は誰? ふふっ。このことだけは絶対に覚えておきなさい」

「……あっ」



 そう陽菜の背中を押してくれる。

 離れる四音を見つめ言われたことを思い出す。



 陽菜のそばにいつも必ず真冬がいること、何があっても駆けつけ、手を握り、護ってくれる。自分の声をどんなに離れていても聞き取ってくれる。

 護りたいのは真冬だ、助けたいのも真冬。

 自分にとって一番大事で大切な人。



「ヒナは、まだ……」



 今はまだ仲間のためになんでもできるわけではない。それでも真冬のために力になりたい。そして最終的には、仲間のために自分の力で助けたい。

 真冬を護り助けられるようになれば、きっとそれは自信に変わるだろうそう。すれば仲間のために、怖くても一歩前に踏み出し助けられるようになる。

 そのためには、神器を扱えるようになりたい。



「ひ、ヒナも変わりたい……!」



 強く望み、思い描く、変わりたい自分像を――。

 四音は二人を見守り微笑む。



「大丈夫よ。貴方たちなら、きっと変われるはずだから」



 こうなりたい、ああなりたい、変わりたい己を見つけ、思い描き強くなろうとする。そんな桜と陽菜に向け呟く。
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