上 下
141 / 220
第六章 機械仕掛けの神

新たな仲間と動き出す存在20(5)

しおりを挟む
 部室に来ると、部外者のはずの紅が訪れていた。彼は高校生の年齢ではないはず(年齢不詳)なのだが、どうやらアザゼルが呼び招き入れたようだ。

 一応、春人の許可はもらっている。

 現在、部室には部員以外に春人や真冬、陽菜たちも集まっている。全員と四音が揃い、アザゼルは特訓メニューをみんなに伝える。



「さて、全員に特訓をつけるぞ。まず、紅は夏目の特訓相手として。美哉、燐、春人、真冬には俺がつく。桜と陽菜には四音がつくことになる。四音、二人のことは任せた」

「ええ。分かったわ」



 紅が夏目につく理由は簡単だ。彼も同じく元来の神通力を扱える上に、八岐大蛇の能力を完全に引き出し制御できるため。

 今以上に、夏目には神獣の力を引き出すために紅自らが教える運びへと。

 美哉たち三人も同じ理由。博識なアザゼルであれば、巫女の能力を最大限に引き出すことも神殺しである二人の強化も可能だろう。

 桜と陽菜の両名は、支援がメインになるだろうとそのために四音が教える。



「そこでだ。お前たちに、とっておきの武具を用意した」



 そう言い、手元に陣を展開させ武器をそれぞれに手渡す。



「まず、燐にはこいつだ」



 燐には〝魔剣ダーインスレイヴ〟。――一度、鞘から抜いてしまうと生き血を浴びて完全に吸うまで鞘に収まらないといわれた魔剣の代表格の一つ。漆黒の鞘に刀身は赤黒い。



「桜にはこれだな」



 桜には〝スヤマンタカ〟。――持ち主が善人だとよく守護し、悪人だと滅ぼす力があるとされる神器。ヒンドゥー教の主神ヴィシュヌが、身につけていた宝石で手首を飾るとされる。結界をより強固にする補助役割を担うため、両手に嵌められるよにした腕輪。



「陽菜には」



 陽菜には〝ククルカンの宝石〟。――マヤ神話創造神ククルカンが持つ空気を操る力を持つ宝石。左右の中指に嵌められるようした指輪、中央には碧色の宝石が埋め込まれている。離れた一からでも仲間へ癒やしの能力が及ぶよう、空気を操り治癒の力を届ける役割を担うため。



「で、春人。お前さんにはこれだ」



 春人には〝ヤールングレイプル〟。――鉄の手袋の意、北欧神話の神トールが保有する鉄製の手袋であり、神獣の業火をより扱えるようにするため。



「真冬にはこいつが合うはずだ」



 真冬には〝デュランダル〟。――『ローランの歌』によれば黄金の柄の中には、聖ピエール(聖ペテロ)の歯、聖バジル(聖バシリウス)の血、パリ市の守護聖人である聖ドニ(聖ディオニュシウス)の毛髪、聖母マリアの衣服の一部ら聖遺物が納められている。作中では、『切れ味の鋭さデュランダルに如くもの無し』とローランが誇るほどの切れ味を見せる。そして、ロンスヴァルの谷で敵に襲われ瀕死の状態となったローランが、デュランダルが敵の手に渡ることを恐れて岩(もしくは大理石)に叩きつけて折ろうとするが、剣は岩を両断して折れなかったというエピソードが有名。



「最後、美哉にはこいつを渡す」



 美哉には〝グングニル〟。――北欧神話の主神オーディンが持つ槍。グングニルの性質について『その槍は正しい場所にとまったままでいない』と説明されている。この文の意味については、『決して的を外さない』と『敵を貫いた後に自動的に手元に戻る』との二通りの解釈がある。また、この槍を向けた軍勢には必ず勝利をもたらす。グングニルの穂先は、しばしばルーン文字が記される場所の一つとされている。



 各々の能力の強化や補助と役割に合う武具をルシファーが探し、アザゼルが細かい調整を施し用意した優れもの。

 ただ、一人。アザゼルから渡されていない夏目が訊く。



「あ、あれ? 俺にはないの?」

「ああ、お前さんにはなしだ。お前さんの力は、契約する神獣の絆と信頼、そして神通力。今の夏目じゃ、神器はその邪魔になる可能性が高い。今はまだ早い、紅のように完全に扱えるようになってからだな」

「ええー……」



 と、言われ少し不満気になる夏目だった。



 ちなみにだが紅も所有しており、天羽々斬と天叢雲剣。どちらも、八岐大蛇と深く関係している剣だ。

 こうして、夏目以外に渡った神器。

 手渡された神器を全員が扱えるようになるため、恒例の特訓と底上げが始まった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう

果 一
ファンタジー
目立つことが大嫌いな男子高校生、篠村暁斗の通う学校には、アイドルがいる。 名前は芹なずな。学校一美人で現役アイドル、さらに有名ダンジョン配信者という勝ち組人生を送っている女の子だ。 日夜、ぼんやりと空を眺めるだけの暁斗とは縁のない存在。 ところが、ある日暁斗がダンジョンの下層でひっそりとモンスター狩りをしていると、SSクラスモンスターのワイバーンに襲われている小規模パーティに遭遇する。 この期に及んで「目立ちたくないから」と見捨てるわけにもいかず、暁斗は隠していた実力を解放して、ワイバーンを一撃粉砕してしまう。 しかし、近くに倒れていたアイドル配信者の芹なずなに目撃されていて―― しかも、その一部始終は生放送されていて――!? 《ワイバーン一撃で倒すとか異次元過ぎw》 《さっき見たらツイットーのトレンドに上がってた。これ、明日のネットニュースにも載るっしょ絶対》 SNSでバズりにバズり、さらには芹なずなにも正体がバレて!? 暁斗の陰キャ自由ライフは、瞬く間に崩壊する! ※本作は小説家になろう・カクヨムでも公開しています。両サイトでのタイトルは『目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう~バズりまくって陰キャ生活が無事終了したんだが~』となります。 ※この作品はフィクションです。実在の人物•団体•事件•法律などとは一切関係ありません。あらかじめご了承ください。

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。

いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成! この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。 戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。 これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。 彼の行く先は天国か?それとも...? 誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。 小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中! 現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...