上 下
129 / 220
第五章 真実に近づく者たち

神の子の三兄妹(4)

しおりを挟む
 ヒュドラーも、夏目たちの存在に気づき上空から降下し襲い掛かってくる。



「ヘル、我輩と共にヒュドラーを迎え撃つぞ! 主とヨルムンガンドは神殺しを見つけよ!」

「分かりました、兄様!」

「了解! いくぞ、ヨルムンガンド!」

「うん!」



 フェンリルの指示に素早く動く。そうして、ヘルVSヒュドラー戦が始まった。

 ヘルは、氷像の完成したての巨大ロボットを創り出し、手には大剣を持ち構え、氷で翼を形成しその巨躯を空へ。



 フェンリルは妹の傍らに控え護りに入る。

 氷像機体は、ヘルの神通力を流し遠隔操作でヒュドラーにぶつけた。尻尾を掴み取り、地面へ叩き落とす。

 常に神通力を流し込み、頭の中には夏目から得られた機体の戦い方をイメージし続ける。

 ヒュドラーの巨躯が、擬似空間内の建物を潰し、地面が揺れ土煙を盛大に巻き上げる。機体は着地し、剣を振り下ろすがしかしそこにヒュドラーの姿がない。



「逃げられたです!?」

「ヘル、下だ! 地面を這っておる!」



 落下した箇所から逃れ、地面を這いずり機体の片脚に巻きつき全身の小さな穴かっら毒霧を撒き散らす。それは、黒い霧のように霧散し広がっていく。

 巻きつかれた片脚から嫌な音とヒビが入りついには砕ける。



「ヘル!」

「負けないです!」



 フェンリルがヘルの名を呼び、ヘルはすぐさま神通力を流し込み瞬時に脚を直す。手に持たせた大剣を、直した脚に未だに巻きつくヒュドラーの胴体に目掛け振り下ろし突き刺す。



「ギャァァァアアアアアアアッ!」



 血飛沫が舞い、ヒュドラーの口から苦痛の声がこだまする。一度、片脚から離れ距離を取った。だが、距離が開く前に、つかさず機体を操り体当たりをぶちかます。



「やられたらやり返す、です!」

「気を抜くな、ヘル!」

「はい!」



 ヒュドラーは、機体の勢いで後方に吹き飛びながらも宙で体勢を整え翼による旋風を起こし、機体にぶつけ小さな傷をつけるがこれもヘルの神通力によって元に戻る。

 機体とヒュドラーが睨み合う。



「ヘルよ、ヒュドラーの翼を斬り落とし肉体を力の象徴でもある氷像に変えてしまうがよい」



 フェンリルからの指示に、ヘルは頷き機体を動かす。真っ直ぐ、ヒュドラーへ突貫。

 ヒュドラーも対抗すべく全身から毒霧を撒き散らすが、フェンリルの青い炎が街並みを灰にするほどの火力で燃やし尽くす。

 機体が持つ大剣が翼を狙い、横から根元に刃が通り斬り落とした。



「アアアアアアアアアアアアアッ!」



 激痛に大口を開け叫ぶヒュドラーは、片翼を失いバランスを崩したところにもう一方の翼にも容赦なく剣が振り下ろされ、半分に斬られ飛ぶ機能を失い地に落ちていく。



「これで終わりです!」



 その掛け声と共に、ヘルの力が畳み掛けるように襲う。抵抗を許さず、一瞬でヒュドラーの全身が氷漬けとなり氷像が生まれた。

 これでヒュドラーは完全に身動きが取れなくなる。

 フェンリルは息を吐き出しヘルに言う。



「うむ。よくやった、我輩が直接手を貸さなくともヘル一人でやれるではないか」



「いえ、兄様が毒を無力化し指示をくれたからこそ、わたくしが勝てたものです。それに、あの人の記憶を見せてもらえなければ、わたくしが望んだこれも完成はしなかったはず。ずっと近くで監視、いえ観察させてもらえたお陰で巨大ロボットを創造してみようと考えに至ったのです。全ては、あの人と兄様たちがそばにいてくれたからです」



 照れ隠しなのか少し早口で、しかし笑みを浮かべ胸を張り答えるヘル。

 あの人、が誰を指すのか理解したフェンリルも笑う。



「そうか。ならば、よい」



 と、一言そう口にするのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...