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第五章 真実に近づく者たち

神の子の三兄妹(2)

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 ヘルとの共同作業とは言ったものの、巨大ロボットを創り出せる場所がない。その話を今日は来ているアザゼルに相談する夏目。



「ということなんですけど、どこかいい場所ってあります?」

「なるほどな。というか、いつの間にそんなに仲良くなったんだ? ほんと、変わった奴だな夏目は。お、あったあった。この辺でいいか」

「アザゼル先生? それは?」

「ちょうど実験してみたくてな」



 そう言い、部室の床に見たことのない魔法陣を展開させ、それを見ていた一行は驚く。ルーン文字や黒魔術、白魔術など様々な文字を組み合わせ編んだアザゼルの固有魔法陣。



「これは、俺が生み出した魔法陣だ。擬似空間を創ったんだが、まだ誰も招いてなくてな。お前たちに色々と試してもらいたい。全く同じの神山町を、この疑似空間内に創り出している最中だ。耐久度やよりオリジナルの神山町に似せるため、お前たちの記憶を元に複製、神獣の攻撃でも破壊されない空間を創りたい。って、ことでだ。手を貸してもらうぞ」



 そう長々と説明をするアザゼル。プラモデルを組み上げるように、楽しげでだが行っていることは神の御業に言葉を失う面々。

 誰もが、さすが堕天使総督で何でもありだ、と唸らせてみせる。



「時間の経過も、現実と変わらない作りになっている。安心して、入っていいぞ」

「何でもありすぎて、何を言えばいいのやら」



 とはいえ早速、夏目は兄妹と共にアザゼルが創った擬似空間の中へ。魔法陣を通して光に包まれ、数秒後には擬似空間内に到着。

 説明された通り知っている街並みと学園、ただ一つ違うのは空だ。



「うわぁ……! 空が綺麗だ!」



 空を見上げる夏目は見惚れてしまう。銀河を連想させる空模様になっているためだ。

 アナウンスが、空間内に響く。



『いくらでも壊してもらって構わんぞ。修復の魔法陣も、この空間全体に施しておいたからな。好きなだけ暴れろ。以上』



 というわけでヘル主導で始まった。氷像で全長十五メートルの巨大ロボットを創るのは簡単だ。問題はそこからこれをどうやって動かすかだが。

 ヘルの意思で動かそうとするが、動きがぎこちなくゆったりすぎてこれではすぐに敵に破壊される。大きいこともあり狙いやすい的でしかない。

 あと、姿がカオスだ。顔となる部分は獣で、胴体は蛇で、足は鳥、腕は人のそれなのだが見ているだけで気持ち悪いフォルム。



(い、いや、このフォルムはさすがに……)

「……………………」



 これには、さすがのフェンリルも開いた口が塞がらない。



「……気持ち悪いよ。こんなのロボットじゃなくて、ただのキメラだよ」



 ヨルムンガンドは、率直に包み隠さずもらす。夏目も「あはは……」と乾いた声で苦笑い。



「お、おかしいです……。わたくしの描くイメージと掛け離れているです……」



 ヘルも、こんなはずではないと頭を捻りながら描いたイメージと違うことに悩む。

 キメラを見上げる夏目たち。ヘルに何かアドバイスをと思うが、キメラを前に言葉が思い浮かばない。

 そこでようやく、フリーズしていたフェンリルが我に返りヘルにアドバイスを送る。



「ヘルよ、描いているイメージが表面的で纏まっていないからであろう。そこは、主のイメージを直接、頭に流した方が早い」

「纏まっていない……。それは確かにそうかもです。逢真夏目、そのお願いしても?」

「もちろん。まずは、人型にしよう」

「はいです」



 ヘルと額をくっつけ、夏目は子供の頃に観ていた機体アニメを思い出し頭の中に描く。巨大で、背中から光の翼を放出し、手には大きな剣を持ち振りかざし、目は翡翠色に輝き白と赤のフォルム、見た目からカッコよくて強く敵の機体を薙ぎ倒す一騎当千の姿。



 テレビの前で夢中になって観ていた。

 イメージを流すはずが、ヘルは夏目の過去の記憶を覗いてしまう。イメージよりも鮮明に動く姿から、音や色そして何より戦い剣を振るい、敵を倒すシーンが頭に流れ込む。雑誌で見たものより迫力があり、夏目が夢中になってしまう理由が分かるほどだ。

 しばらくして、夏目から額を離し心躍る記憶に突き動かされた。



「あ、あれ? もういいのか?」

「大丈夫です」



 今、視た夏目の記憶をヘルは脳に刻み込む。忘れないよう、鮮明に思い出せるように。

 ヘルは息を吸い集中。氷像を生み出し形へ、それは確かに夏目が思い出し描いたあの機体ユニットへと。

 イメージを流してもらうつもりだったが、記憶を覗く形になったお陰でヘルの脳内で描くものが、曖昧から確かなものへと変わり人型のロボットに。

 色は、透明な水色だか姿は子供の頃に観て夢中になっていた機体そのもの。



「す、すっげえ! マジか! 俺が子供の頃に観てたやつのまんまだよ!」



 これに夏目は興奮してはしゃぐ。



「ヘル、すごいよ! カッコイイ! ボク、これに乗りたい!」



 ヨルムンガンドも、興奮しすぎて地面の上で飛び跳ね目を輝かせる。



「ふっ。さすが、我輩の妹だ」



 フェンリルも、一発で成功させたことに誇らしげだ。

 それぞれの反応を見て、頬を赤らめ照れるヘルだが夏目たちに褒められて素直に嬉しい様子。

 さて、この次のお題は実際にヘルの意思で動かすことだ。
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