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第四章 神山学園のレヴィアタン

レヴィアタンと陽だまり(5)

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「なっ……!?」



 氷の雨の存在に気づき、逃れるようにグラウンドを駆け回る空海。執拗に狙う、美哉が創り出した氷の雨。



 そこへ、燐も混ざり追加攻撃が襲う。右手首から先を赤い炎が燃え上がり、空海の逃げ道を阻む一振りが落とされた。



「ちっ! うっとしい、小娘共が!」



 炎の斬撃を紙一重で躱し、片脚に重心を置き左足からの二段突きを燐へ繰り出す。瞬時に、二段突きだと気づき一度目の突きから接近をやめ逃れる。



「勘が鋭いな!」



 近寄ることをやめ二段突きから逃れた燐に対して、苛立ち舌打ちが出るのも束の間、空海の足元の土が盛り上がり地面を突き破って氷の棘が襲う。



「な、なにっ……!? いぎっ!?」



 不意をつく形で襲う攻撃に反応が遅れ、腹部に棘が刺さり宙へ体が舞う。



「フェンリル!」

「任せよ! 主、ゆくぞ!」



 フェンリルへ合図と叫ぶ美哉へ呼応し、夏目の元へ駆け首根っこの襟元を噛み放り投げる。



「のぉわぁあ!?」



 空中へ放り投げられ驚きつつも、バランスを取り空海へ目掛け義足の踵落としを叩き込む。



「とりゃあ!」

「あはっ……!?」



 背中に左足からの踵落としが入り、ドゴンッと鈍い音と共に空海の肺から空気が吐き出され地面へ落下。穴を空け、土煙を巻き上げるグランドに着地した夏目。



 叩き落した空海を見つめていると、煙の中から影が揺らめき立ち上がるのが分かった。

 煙が消え、姿を見せた空海は鬼の形相へと変わり夏目たちを睨みつけ殺意と怒りを込め言い放つ。



「クソガキ共が! 調子に乗りやがって! 一人残らず、俺が殺してやるっ!」



 言い終わると、空海の衣服が前触れもなく燃え焼ける臭いが鼻をつく。

 これに美哉とフェンリルが反応した。



「スルトの能力の一部を借りたようですね」

「のようだな。とはいえ、主が扱う我輩らの神通力は扱えぬようだ」

「ここからが本番ですよ。夏目、燐」



 視線は空海へ向けたまま二人に言う美哉。



「おうよ!」

「はい!」



 夏目と燐は、同時に答える。




 その頃の真冬はというと、レヴィアタンをそばにつけスルトと戦闘を繰り広げ、陽菜は離れた位置で見守っていた。



 水と炎が幾度なくぶつかり合い、蒸発しては鎮火を繰り返す。

 時に、真冬は全身に水の鎧を創り装着しスルトへ打撃からの足蹴りを繰り出す。スルトも同様に、炎を纏った平手で真冬の頭上から叩き潰さんとばかりに振り落とし、首の骨ををへし折る勢いで横から振り払う。



 飛び退き、眼前で手が掠めていく。そうして真冬とスルトによる応戦が続いていた。

 レヴィアタンは、真冬を護るべく水の耐久度を上げ援護攻撃へと、口から水の弾丸を吐き出しスルトへ当てる。



 がしかし、真冬の攻撃もレヴィアタンの水のどちらも決定打にならず持久戦に持ち込まれている。



「持久戦になれば、不利なのは私ね……」



 ギリッ、と歯を食いしばり歯軋りをし考える。確実に与えられる一撃はないかと。



「打撃はダメ。炎が邪魔をして、肉体へダメージが入らない。蹴りも同様……」



 レヴィアタンの水の弾丸も同じで、肉体へ届く前に炎の火力に負け蒸発し効果はなし。

 レヴィアタンは、真冬のそばを浮遊し主を見つめる。



 真冬が契約する神獣は、言葉を発することはできない。だが、何を考え何を思い何を訴えてくるのか理解できる。

 お腹が空いた、構って欲しい、眠たい、疲れた、など。いつだって教えてくれるのだ。



 そして、今もまさにレヴィアタンは真冬へ伝えている。

 ”武器を創るからそれを使ってスルトへダメージを入れて”

 と、目で語るレヴィアタン。



「ふふっ」



 笑うは真冬は、レヴィアタンの頭を撫でながら訊く。



「鎌を創れる?」



 その言葉に白い龍の神獣は何度も頷き、水で生み出す要望通りの透き通った鎌を。

 それも大鎌だ。柄は長く、刃の幅は広く先端は鋭利に。



「さすがレヴィアタン。要望以上の武器よ!」



 レヴィアタンから受け取り、振り回し重さ扱いやすさを確認。



「まだまだ、戦いはここからよ!」



 犬歯を見せ笑う真冬は、水の大鎌をスルトへ向け吠えた。
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