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第四章 神山学園のレヴィアタン

レヴィアタンと陽だまり(4)

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 空海と対峙する夏目は、ヨルムンガンドと目が合うと頷き合う。



「来い、ヨルムンガンド!」

「うん!」



 夏目の叫びに呼応し、神獣との合体技へと。その身にヨルムンガンドの肉体が溶け合い重なり、瞳は金色となり肌の至る所は蒼く澄んだ鱗が現れ、腰にも同じ鱗に包まれた尻尾が生える。



 夏目の吐息は、紫色へと変わり戦闘態勢へ。

 これには空海も予想外どころか、見たことのない現象に驚愕する。



「な、なんだそれは!? し、神獣を纏っただと!? いや、そんなことが可能なわけがない!」



 理解が追いつかない様子の空海に、夏目が最初に動く。真正面から殴りにいくその手には、鱗に覆われグローブの役割を担う。

 おまけに、ヨルムンガンドの神通力も纏った拳は想像以上の威力を発揮。



「おぉりゃあっ!」



 一撃を放つ拳から、大気を揺るがす衝撃波が起こり、空海は本能で危険と察知し飛び退く。が、勢いは衰えることなく届き、地面に着地と同時に胴体に当たり宙へ浮き数十メートル吹き飛ばされる。



「なっ――!?」



 まさか、距離を取っても届くとは思わず目を開き、視界に映る風景が回りながらも受け身を取り衝突のダメージを消す。



「ク、クソッ! なんという威力だ!? 化け物め!」



 足全体が痺れ震える。まともに食らえば、一撃で沈められると考え距離を保ちながらカウンターを狙うべきだと。

 一メートルほど抉られた地面を見て思った以上の威力に放った本人も驚く。



「す、すっげぇ……」

『えへへっ! すごい威力が出たね! 夏目、これならボクたち負けないよ!』



 ヨルムンガンドは笑いながら、嬉々として言う。融合して、初めての実戦に確かな手応え感じ嬉しいのだろう。



 そして、相棒の言うようにショッピングモールでスルトと初めて戦った時に比べれば、ただ一方的に殺られることはない。



「うしっ! このまま、神殺しを倒すぞヨルムンガンド!」

『うん! ボクと夏目の力を見せつけてやるんだ!』



 やる気に満ち、行動に起こす。地面を踏み込み、一気に開いた距離を詰める。

 弾丸の如く真っ直ぐ飛来する夏目へ、空海もカウンターを狙う。



 打撃で仕留める気でいる夏目は、連続の殴打に出た。空海は、放たれる拳を見切り上半身を左右に揺らし躱す。



「――っ!」



 そして、夏目が息を吸い利き手の右腕を引き、力を乗せるのが見て取れた。来る、と身構えカウンターを狙う絶好の機会。



 そんなこと考えもせず、確実にこの一発でダウンさせる気で放つ夏目。

 顔を狙うことをさえも予測され、放たれた拳を避けきって見せる。顔を横へずらし、左耳を掠め皮膚が切れるが気にもせず、夏目の顔面へ空海の拳が減り込む。



「――んぐっ!?」



 夏目にとって、予期せぬ攻撃をまともに食らう。視界は暗転し、口の中を切り鉄の味が広がり、痛みが顔全体に伝わる。



「所詮はガキだな!」



 空海の言葉が聞こえる。殴られた勢いで、後ろへ倒れる夏目の体。その様子に笑みを浮かべ余裕の神殺しへ、贈り物を。



「舐めるなっ!」



 夏目が叫び、倒れ込みそうな体を強引に引き戻した勢いで頭突きをかました。

 ゴツンッ、と鈍い音が互いの額から鳴り響く。



「あぐっ!? こ、このクソガキッ……!」



 額が切れ流れていく血。それは、夏目も同様だった。



「おらぁっ!」



 一言と共に尻尾が、空海の脇腹を横殴る。



「がはっ!?」



 空海の体からボギッと嫌な音と共にくの字へと、そのまま吹き飛ばし地面へ転がっていく。



 夏目は、鼻血を拭い息を吐き出す。

 空海も、立ち上がり脇腹に目をやる。肋骨が一本折れた痛みで考えをすぐに改める。ガキだと甘く見るべきではない。



「ガキでも神殺しということか」



(カウンターがくるとは思ってなかった……。どう動く?)



 両者共に、出方を伺う。下手に動けば、夏目はカウンターを食らう可能性が、空海は尻尾による追加攻撃を受ける可能性がある。



 そのことに両者、息を整え睨み合いが続く中、空海の頭上から氷の雨が降り注いだ。
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