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第四章 神山学園のレヴィアタン
その身に纏うのは(2)
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普段通りに学生生活を送る一方で、放課後は部活に顔を出さず直帰し習得に励む。
しかし、上手くいかないもの。溶け合ういわば融合はできても五感共有が阻み、吐き気と気持ち悪さに解けてしまい長く続かないのだ。
「おえっ……」
「ううぅ……」
青い顔で床に倒れ、共にダウンする主と弟を見守ることしかできないフェンリル。今回の件に関して、手というか力を貸すことができないため無理をしないよう監視を含め見守ることに。
夏目とヨルムンガンドは諦めず、何度も挑戦しては倒れ込むを繰り返す。一喜一憂で得られるとは思っていないが時間がない。そのことが逆に、焦りへ変わっていないか心配してしまう相棒の心情。
見るからに疲れているヨルムンガンドが、夏目へ提案する。
「ねえ、どちらかの視界だけを使うのはどう? 共有なんだし、視界を遮ったとしても見えると思うんだ」
夏目は「それだ!」と声を出し上体を起こしてさっそく試す。
まず、ヨルムンガンドの視界を試みる。
瞳は金色へ変わり、脳へ送る視界から得る情報は夏目が見ている光景とは違った。艶やかで濃い色の世界が広がっている。
今度は夏目の視界を利用。
『う~ん、なんていうか夏目の見る光景は色が少し色褪せて変な感じ。それに、前方しか見えないのも何だか不便だね』
そう感想をこぼすヨルムンガンド。
それは夏目も思ったことだ。自分が見ている視界とは違い、ヨルムンガンドの視界は横から背後とまではいかずとも後ろも見える。人間の視界と違って死角が狭く、視野の広さに舌を巻いた。
「視界は、ヨルムンガンドの方を利用した方がいいな」
『分かった!』
次は、神獣の視界を利用し行動が起こせるかどうか。普段、己が見ている光景とは異なり不思議な感覚が残る。
夏目は部屋の中を歩き回ろうとするが、見ている感覚は他者からで動くのは自分という感覚に歩き方が変というかぎこちない。
腕を伸ばし、すり足で、脚を振り上げられず踏み出せない状態。不安定な場所で、バランスを取ろうとしているようにも見えなくもない。
「なっ、ちょっ……」
「主よ、歩き方がおかしいぞ」
そうフェンリルに指摘され、普通に歩こうと一歩踏み出したその時に足がもつれ転ぶ夏目。
受け身も取れず、盛大に床へ顔をぶつける。ベタンッ! と音を鳴らしその痛みも、融合したヨルムンガンドに伝わる。
「うげっ!?」
『いっ、たあいっ!』
弟の悲痛な声が、夏目の体からもれ転んだ本人も赤くなった鼻を押さえながら涙目だ。
「いっ、てえぇ……」
手をつき立ち上がり歩こうとするが、やはりぎこちないを通り越して産まれたての子鹿のように膝が震え、腰が低くガニ股歩きの格好になる夏目。
「………………」
主のその姿に何とも言えない表情になるフェンリル。そこへ、部活を終えて帰宅した美哉が扉を開け部屋の中へ。
「ただいま戻りま――」
そして、そんな夏目の姿を目の当たりにし言葉と共に動きも止まってしまう。
鼻を赤くし涙目で、不格好な姿を晒しすり足で震えながら歩く恋人の姿を見て美哉は、
「……何かに取り憑かれもしましたか?」
と、こちらも未だに何とも言えない表情のままのフェンリルに訊く。
「……いや、愚弟との習得のため励んでいる姿だ……」
訊かれ、首を振りながら苦しげな返答。
「そうですか……」
一言こぼす美哉は最後に。
「燐や桜たちには見せたくはない姿ですね……」
その言葉に、フェンリルも何度も同意見だと頷いてみせた。習得のためとはいえ、笑いのネタにしかならない夏目の姿は、心に留めておきたい気持ちでいっぱいだ。
恋人と相棒の会話を聞く余裕のない夏目とヨルムンガンドは、必死な様子で習得しようと頑張っていた。
しかし、上手くいかないもの。溶け合ういわば融合はできても五感共有が阻み、吐き気と気持ち悪さに解けてしまい長く続かないのだ。
「おえっ……」
「ううぅ……」
青い顔で床に倒れ、共にダウンする主と弟を見守ることしかできないフェンリル。今回の件に関して、手というか力を貸すことができないため無理をしないよう監視を含め見守ることに。
夏目とヨルムンガンドは諦めず、何度も挑戦しては倒れ込むを繰り返す。一喜一憂で得られるとは思っていないが時間がない。そのことが逆に、焦りへ変わっていないか心配してしまう相棒の心情。
見るからに疲れているヨルムンガンドが、夏目へ提案する。
「ねえ、どちらかの視界だけを使うのはどう? 共有なんだし、視界を遮ったとしても見えると思うんだ」
夏目は「それだ!」と声を出し上体を起こしてさっそく試す。
まず、ヨルムンガンドの視界を試みる。
瞳は金色へ変わり、脳へ送る視界から得る情報は夏目が見ている光景とは違った。艶やかで濃い色の世界が広がっている。
今度は夏目の視界を利用。
『う~ん、なんていうか夏目の見る光景は色が少し色褪せて変な感じ。それに、前方しか見えないのも何だか不便だね』
そう感想をこぼすヨルムンガンド。
それは夏目も思ったことだ。自分が見ている視界とは違い、ヨルムンガンドの視界は横から背後とまではいかずとも後ろも見える。人間の視界と違って死角が狭く、視野の広さに舌を巻いた。
「視界は、ヨルムンガンドの方を利用した方がいいな」
『分かった!』
次は、神獣の視界を利用し行動が起こせるかどうか。普段、己が見ている光景とは異なり不思議な感覚が残る。
夏目は部屋の中を歩き回ろうとするが、見ている感覚は他者からで動くのは自分という感覚に歩き方が変というかぎこちない。
腕を伸ばし、すり足で、脚を振り上げられず踏み出せない状態。不安定な場所で、バランスを取ろうとしているようにも見えなくもない。
「なっ、ちょっ……」
「主よ、歩き方がおかしいぞ」
そうフェンリルに指摘され、普通に歩こうと一歩踏み出したその時に足がもつれ転ぶ夏目。
受け身も取れず、盛大に床へ顔をぶつける。ベタンッ! と音を鳴らしその痛みも、融合したヨルムンガンドに伝わる。
「うげっ!?」
『いっ、たあいっ!』
弟の悲痛な声が、夏目の体からもれ転んだ本人も赤くなった鼻を押さえながら涙目だ。
「いっ、てえぇ……」
手をつき立ち上がり歩こうとするが、やはりぎこちないを通り越して産まれたての子鹿のように膝が震え、腰が低くガニ股歩きの格好になる夏目。
「………………」
主のその姿に何とも言えない表情になるフェンリル。そこへ、部活を終えて帰宅した美哉が扉を開け部屋の中へ。
「ただいま戻りま――」
そして、そんな夏目の姿を目の当たりにし言葉と共に動きも止まってしまう。
鼻を赤くし涙目で、不格好な姿を晒しすり足で震えながら歩く恋人の姿を見て美哉は、
「……何かに取り憑かれもしましたか?」
と、こちらも未だに何とも言えない表情のままのフェンリルに訊く。
「……いや、愚弟との習得のため励んでいる姿だ……」
訊かれ、首を振りながら苦しげな返答。
「そうですか……」
一言こぼす美哉は最後に。
「燐や桜たちには見せたくはない姿ですね……」
その言葉に、フェンリルも何度も同意見だと頷いてみせた。習得のためとはいえ、笑いのネタにしかならない夏目の姿は、心に留めておきたい気持ちでいっぱいだ。
恋人と相棒の会話を聞く余裕のない夏目とヨルムンガンドは、必死な様子で習得しようと頑張っていた。
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