95 / 220
第四章 神山学園のレヴィアタン
第四幕 その身に纏うのは(1)
しおりを挟む
夕食を食べ終えたあと、思いついたことをヨルムンガンドに説明する夏目。
「あのな――」
それは、夏目とヨルムンガンドの五感共有と融合しその身に纏うという方法。
夏目は、ヨルムンガンドが持つ硬い鱗と猛毒を扱うことができればスルトに勝てるのではないかと。鱗は身を護る鎧の役割、猛毒は敵を倒すための攻撃の手段として。
アニメを鑑賞して思いついたことだ。
その説明を聞いたヨルムンガンドはとぐろを巻きながら考え込み、美哉はアニメ鑑賞から面白い発想をすると笑う。
フェンリルは、夏目とヨルムンガンドの想いが強く疎通ができれば可能ではないかと推測。
「うん! ボク、やってみたい!」
そう口にし意気込む。ロボットのよな合体とは少し違うかもしれないが、夏目と一心同体とも取れる説明にやる気に満ちた目を向ける。
「じゃあ、明日から試してみよう!」
「うん!」
翌日、一階の空いている部屋を使いさっそく試してみる。
ヨルムンガンドは、首に巻きつき夏目の頭に顔を乗せた。まずは、その身に纏う方法から実践。
静かに呼吸を合わせ、鼓動が重なりお互いの感覚が溶け合うイメージを描く。肉体は夏目のままで、皮膚はヨルムンガンドの鱗を、猛毒は自身を傷つけるのではなく敵を打ち倒すために。
美哉とフェンリルが見守る中、ヨルムンガンドの体が徐々に夏目の体へと吸い込まれるように消えていくのが肉眼でも視認できる。
「こんなことが可能だなんて……」
驚く美哉に、フェンリルがつけ加えた。
「契約を交わし、お互いに信頼し合っているからこそ可能だ。主と愚弟の肉体が一つになろうとしている。神殺しと神獣は、切っても切り離せぬ繋がりが存在する。主は、その繋がりを利用して今回の合体技を生み出そうとしていると、そう我輩は見る。とはいえ、意識してなのか又は無意識で見出したのかは分からぬが、思想が他の神殺しとはあまりにも違い過ぎる」
それに関して美哉も同じ意見だった。前者なら相当なもの、後者だとしてもここまで神獣と心を通わせ信頼を築けるのは驚愕いや、畏怖すべき事柄であり今までの神殺しとは全く異なる思考回路を持った神殺しということだ。
そう話している間にも、ヨルムンガンドの体は夏目と溶け合い完全に消えていた。
ゆっくりと、目蓋を開ける夏目の瞳が黒目から金色へと。頬の皮膚が蒼く澄んだ鱗へ一部変化し、犬歯が口の端から少し突き出している。
フェンリルは、これは成功したか? と思った矢先にそれは起きた。
夏目とヨルムンガンドの声が重なり悲鳴を上げたのだ。
「おえっ!? 無理!」
『気持ち悪い!』
と叫び一人と一匹、その場に膝から崩れ落ち夏目たちのそばに美哉が慌てて駆け寄る。
「夏目!? ヨルムンガンド!? 大丈夫ですか!?」
合体は強制的に解け、青い顔をする夏目と床に伸び全身をピクピクさせ白目を剥くヨルムンガンド。
「は、吐きそう……」
弱々しく呟き倒れる。
「うぷっ……」
今にも吐きそうな夏目の背中を擦る美哉。
「ふむ、どうやら全く違う肉体を一つにしようとしたこと、五感共有でお互いが見る視界、聞こえる音、感じる匂いに脳の情報処理が追いつかず吐き気を催し、解けたようだな」
冷静に分析をするフェンリルが伝える。美哉も、すぐに習得できるとは思っていない。そう簡単な話ではないのだから。
「こればかしは慣れるほかあるまい」
「そうですね。夏目、ヨルムンガンド。頑張ってください」
フェンリルと美哉は、苦笑いでそう言うしかない。
吐き気と想像以上の気持ち悪さに青い顔をしながら、お互いの顔を見合せ渋い表情とたったの一度で体力をげっそり減らし、疲れ切った声で「「がんばる……」」としか答えられない夏目とヨルムンガンド。
「あのな――」
それは、夏目とヨルムンガンドの五感共有と融合しその身に纏うという方法。
夏目は、ヨルムンガンドが持つ硬い鱗と猛毒を扱うことができればスルトに勝てるのではないかと。鱗は身を護る鎧の役割、猛毒は敵を倒すための攻撃の手段として。
アニメを鑑賞して思いついたことだ。
その説明を聞いたヨルムンガンドはとぐろを巻きながら考え込み、美哉はアニメ鑑賞から面白い発想をすると笑う。
フェンリルは、夏目とヨルムンガンドの想いが強く疎通ができれば可能ではないかと推測。
「うん! ボク、やってみたい!」
そう口にし意気込む。ロボットのよな合体とは少し違うかもしれないが、夏目と一心同体とも取れる説明にやる気に満ちた目を向ける。
「じゃあ、明日から試してみよう!」
「うん!」
翌日、一階の空いている部屋を使いさっそく試してみる。
ヨルムンガンドは、首に巻きつき夏目の頭に顔を乗せた。まずは、その身に纏う方法から実践。
静かに呼吸を合わせ、鼓動が重なりお互いの感覚が溶け合うイメージを描く。肉体は夏目のままで、皮膚はヨルムンガンドの鱗を、猛毒は自身を傷つけるのではなく敵を打ち倒すために。
美哉とフェンリルが見守る中、ヨルムンガンドの体が徐々に夏目の体へと吸い込まれるように消えていくのが肉眼でも視認できる。
「こんなことが可能だなんて……」
驚く美哉に、フェンリルがつけ加えた。
「契約を交わし、お互いに信頼し合っているからこそ可能だ。主と愚弟の肉体が一つになろうとしている。神殺しと神獣は、切っても切り離せぬ繋がりが存在する。主は、その繋がりを利用して今回の合体技を生み出そうとしていると、そう我輩は見る。とはいえ、意識してなのか又は無意識で見出したのかは分からぬが、思想が他の神殺しとはあまりにも違い過ぎる」
それに関して美哉も同じ意見だった。前者なら相当なもの、後者だとしてもここまで神獣と心を通わせ信頼を築けるのは驚愕いや、畏怖すべき事柄であり今までの神殺しとは全く異なる思考回路を持った神殺しということだ。
そう話している間にも、ヨルムンガンドの体は夏目と溶け合い完全に消えていた。
ゆっくりと、目蓋を開ける夏目の瞳が黒目から金色へと。頬の皮膚が蒼く澄んだ鱗へ一部変化し、犬歯が口の端から少し突き出している。
フェンリルは、これは成功したか? と思った矢先にそれは起きた。
夏目とヨルムンガンドの声が重なり悲鳴を上げたのだ。
「おえっ!? 無理!」
『気持ち悪い!』
と叫び一人と一匹、その場に膝から崩れ落ち夏目たちのそばに美哉が慌てて駆け寄る。
「夏目!? ヨルムンガンド!? 大丈夫ですか!?」
合体は強制的に解け、青い顔をする夏目と床に伸び全身をピクピクさせ白目を剥くヨルムンガンド。
「は、吐きそう……」
弱々しく呟き倒れる。
「うぷっ……」
今にも吐きそうな夏目の背中を擦る美哉。
「ふむ、どうやら全く違う肉体を一つにしようとしたこと、五感共有でお互いが見る視界、聞こえる音、感じる匂いに脳の情報処理が追いつかず吐き気を催し、解けたようだな」
冷静に分析をするフェンリルが伝える。美哉も、すぐに習得できるとは思っていない。そう簡単な話ではないのだから。
「こればかしは慣れるほかあるまい」
「そうですね。夏目、ヨルムンガンド。頑張ってください」
フェンリルと美哉は、苦笑いでそう言うしかない。
吐き気と想像以上の気持ち悪さに青い顔をしながら、お互いの顔を見合せ渋い表情とたったの一度で体力をげっそり減らし、疲れ切った声で「「がんばる……」」としか答えられない夏目とヨルムンガンド。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう
果 一
ファンタジー
目立つことが大嫌いな男子高校生、篠村暁斗の通う学校には、アイドルがいる。
名前は芹なずな。学校一美人で現役アイドル、さらに有名ダンジョン配信者という勝ち組人生を送っている女の子だ。
日夜、ぼんやりと空を眺めるだけの暁斗とは縁のない存在。
ところが、ある日暁斗がダンジョンの下層でひっそりとモンスター狩りをしていると、SSクラスモンスターのワイバーンに襲われている小規模パーティに遭遇する。
この期に及んで「目立ちたくないから」と見捨てるわけにもいかず、暁斗は隠していた実力を解放して、ワイバーンを一撃粉砕してしまう。
しかし、近くに倒れていたアイドル配信者の芹なずなに目撃されていて――
しかも、その一部始終は生放送されていて――!?
《ワイバーン一撃で倒すとか異次元過ぎw》
《さっき見たらツイットーのトレンドに上がってた。これ、明日のネットニュースにも載るっしょ絶対》
SNSでバズりにバズり、さらには芹なずなにも正体がバレて!?
暁斗の陰キャ自由ライフは、瞬く間に崩壊する!
※本作は小説家になろう・カクヨムでも公開しています。両サイトでのタイトルは『目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう~バズりまくって陰キャ生活が無事終了したんだが~』となります。
※この作品はフィクションです。実在の人物•団体•事件•法律などとは一切関係ありません。あらかじめご了承ください。
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。
いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成!
この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。
戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。
これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。
彼の行く先は天国か?それとも...?
誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。
小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中!
現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる