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第四章 神山学園のレヴィアタン
もう一つの証(2)
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翌日、雪平家に泊まり朝を迎えた夏目は、スマホでネットニュースを閲覧していた。
新たな情報はないが、怪我人が数十人はいる模様。一時期はテロ行為かとも噂されていたが、どうやらこの噂は信憑性がないと埋もれ消えたようだ。
昨日の話し合いで決まった新たな技の考案だが、何も浮かばず具体的な使用方法やイメージすら思いつかない。一日で、出来上がれば誰も苦労はしないが。
そこへ、襖がスッと開けられ美哉が部屋に入ってくるなり夏目に抱きつく。
「ちょっ!? 美哉!?」
固まる夏目の首に腕を回し胸を押しつけられ、耳元で喋る美哉の声が直接入り込み吐息がくすぐったい。
「御三家当主は、今回の件での失態を次期当主に責任を取らせる方向で決まったそうです。私、燐、桜が成人するまでの代行の春人の三人は、スルトの討伐に当たり確実に仕留めろと命令が下されました」
「…………っ!」
何も言えず、抱きつく美哉を支える格好のまま動きが止まる夏目。
心臓の鼓動が早鐘を打ち、血が全身を駆け巡る感覚が襲う。あの危険な神獣と、相打ち覚悟で殺せと命令を下したということ。
戦ったからこそ分かる。いくら、神殺しの春人がいるからといって巫女たちだけで勝てる相手ではない。美哉たち、あのスルトのマグマの炎で骨すら残さず肉体が溶け死ぬ。
脳内にそんな最悪の場面を想像してしまい、怒りが沸々と湧き上がっていく夏目の心情。
それを感じ取ったフェンリルとヨルムンガンドが、影から顔を出し心配そうに主を見つめていた。
「当主の命令は絶対。今頃、春人や燐の元にもこの命令がいっているはずです。私たちがスルトの討伐に当たっている間、夏目と真冬は敵の神殺しを仕留めるようにと」
美哉は、普段と変わらない声で伝える。
(こんな命令、間違ってる! 死んででも殺せなんて! そんなもの受け入れられるわけがないだろ!)
夏目は、内心で吐き捨て拒否する。
何も言わない夏目から離れようとする美哉の腕を掴み強く抱きしめた。
「な、夏目……!?」
その行動に驚き固まった美哉の肩に頭を乗せ言う。
「そんな命令を聞く必要なんてない。俺が纏めて相手する」
突拍子もないことを言い出す夏目に、美哉は言葉で止めようと口を開きかけたがその制止を聞くはずもなく顔を上げ見つめ返す。
「神殺しと神獣が同じ場所にいればいいだけだ。それに、美哉は言ったよな? 俺のそばで支えるって。なら、どこにも行くな。俺の手の届かない場所になんか行かせない。一緒に戦って、仕留めればいいだけだろ」
真っ直ぐ見つめられ、強気な声で言われ何も言い返せなくなる。しかし、そんな簡単な話ではないからこそ当主が命令を下したのだ。
「……っ。あのスルトは独断で動いたんですよ? それも夏目ただ一人を狙い、主の言うことを聞かないタイプなら尚のこと危険です!」
美哉も引けない。引けば、夏目は有言実行するだろう。
「神獣二体と契約を交わす夏目を失うわけにはいかないんです! いえ、私が夏目を失いたくはないんですよ!」
その気持は夏目も同じ。美哉を失いたくはないからこそ、自分でも無茶なことを言っている自覚はある。だから、彼も引けない。
「私は、雪平の巫女であり次期当主。今回の件では、現場にいながら被害を出し何もできなかった責任があります。ですから――」
「…………っ!」
美哉の言葉を、行動で遮ってみせた夏目。
それ以上は聞きたくないと、美哉の唇を強引に奪ったのだ。
「……んんっ!?」
二人を黙って見守っていたフェンリルとヨルムンガンドさえ口を開けて、夏目の行動に驚き固まってしまう。
美哉は、くぐもった声をもらし視界は夏目の顔で覆われキスで口を塞がれ言葉を発せられない。
しばらくお互いの吐息だけが口からもれる。美哉の肩を掴む夏目の手に力が入り、体を固定され引き剥がせずいつもの逆の立場に。
ようやく顔が離れ、息を吸い込むことができるように。普段の行動からは想像もしていなかった夏目の意思表示に、見る見る頬を赤らめていく美哉にはっきりと告げる。
「俺も、美哉も一人じゃない。そう言ってくれたのは美哉だ。俺たち全員の戦力があれば、何も問題はないだろ」
さすがの美哉も、これ以上は言えず赤くした頬に触れながら頷く。
フェンリルとヨルムンガンドは念話で話す。
(あの奥手な主がここまで行動で示すとは)
(夏目の意外な一面が見られてボク、楽しいよ兄さん!)
(お前は、相変わらずのようだな。まあ、あの押しに強い美哉が何も言えず頷くだけの姿は確かに面白いが)
などとお互い見た感想を述べる。そこへ、また襖が開き燐と桜、春人が現れる。
終始、夏目と美哉のやり取りを見ていた春人は変わらずの笑顔。
「逢真くんの言う通り。いくら、当主の命令でも相打ち覚悟の命令は素直に頷けない」
「わたしも夏目の意見に賛成だ」
燐も同じ気持ちのようで、首を横に振り拒否を示す。
桜は、夏目の言動を見て顔を赤くさせ咳払い。
「ん、んんっ! 次期当主だけの問題じゃないもの。あたしたちにもあるから」
三人の登場に夏目は驚くことはなく、やることは決まっている。神殺しも神獣も、同時に倒し仕留めればいいと意気込む。
むしろ驚いているのは珍しく美哉の方だ。
「~~~~っ!」
見られていたことに恥ずかしさが込み上げ、唇を噛みしめ涙目で何か言いたげなのだが何も言えない様子。
美哉自身の言動が招いた結果とタイミングを見計らい部屋へ来た三人。全て見られ一人突っ走った姿が、どうしようもないほどの羞恥心が襲い肩を震わせる。
これには、夏目以外のメンバーはその姿が微笑ましく暖かい目で見つめ笑うのっだった。
新たな情報はないが、怪我人が数十人はいる模様。一時期はテロ行為かとも噂されていたが、どうやらこの噂は信憑性がないと埋もれ消えたようだ。
昨日の話し合いで決まった新たな技の考案だが、何も浮かばず具体的な使用方法やイメージすら思いつかない。一日で、出来上がれば誰も苦労はしないが。
そこへ、襖がスッと開けられ美哉が部屋に入ってくるなり夏目に抱きつく。
「ちょっ!? 美哉!?」
固まる夏目の首に腕を回し胸を押しつけられ、耳元で喋る美哉の声が直接入り込み吐息がくすぐったい。
「御三家当主は、今回の件での失態を次期当主に責任を取らせる方向で決まったそうです。私、燐、桜が成人するまでの代行の春人の三人は、スルトの討伐に当たり確実に仕留めろと命令が下されました」
「…………っ!」
何も言えず、抱きつく美哉を支える格好のまま動きが止まる夏目。
心臓の鼓動が早鐘を打ち、血が全身を駆け巡る感覚が襲う。あの危険な神獣と、相打ち覚悟で殺せと命令を下したということ。
戦ったからこそ分かる。いくら、神殺しの春人がいるからといって巫女たちだけで勝てる相手ではない。美哉たち、あのスルトのマグマの炎で骨すら残さず肉体が溶け死ぬ。
脳内にそんな最悪の場面を想像してしまい、怒りが沸々と湧き上がっていく夏目の心情。
それを感じ取ったフェンリルとヨルムンガンドが、影から顔を出し心配そうに主を見つめていた。
「当主の命令は絶対。今頃、春人や燐の元にもこの命令がいっているはずです。私たちがスルトの討伐に当たっている間、夏目と真冬は敵の神殺しを仕留めるようにと」
美哉は、普段と変わらない声で伝える。
(こんな命令、間違ってる! 死んででも殺せなんて! そんなもの受け入れられるわけがないだろ!)
夏目は、内心で吐き捨て拒否する。
何も言わない夏目から離れようとする美哉の腕を掴み強く抱きしめた。
「な、夏目……!?」
その行動に驚き固まった美哉の肩に頭を乗せ言う。
「そんな命令を聞く必要なんてない。俺が纏めて相手する」
突拍子もないことを言い出す夏目に、美哉は言葉で止めようと口を開きかけたがその制止を聞くはずもなく顔を上げ見つめ返す。
「神殺しと神獣が同じ場所にいればいいだけだ。それに、美哉は言ったよな? 俺のそばで支えるって。なら、どこにも行くな。俺の手の届かない場所になんか行かせない。一緒に戦って、仕留めればいいだけだろ」
真っ直ぐ見つめられ、強気な声で言われ何も言い返せなくなる。しかし、そんな簡単な話ではないからこそ当主が命令を下したのだ。
「……っ。あのスルトは独断で動いたんですよ? それも夏目ただ一人を狙い、主の言うことを聞かないタイプなら尚のこと危険です!」
美哉も引けない。引けば、夏目は有言実行するだろう。
「神獣二体と契約を交わす夏目を失うわけにはいかないんです! いえ、私が夏目を失いたくはないんですよ!」
その気持は夏目も同じ。美哉を失いたくはないからこそ、自分でも無茶なことを言っている自覚はある。だから、彼も引けない。
「私は、雪平の巫女であり次期当主。今回の件では、現場にいながら被害を出し何もできなかった責任があります。ですから――」
「…………っ!」
美哉の言葉を、行動で遮ってみせた夏目。
それ以上は聞きたくないと、美哉の唇を強引に奪ったのだ。
「……んんっ!?」
二人を黙って見守っていたフェンリルとヨルムンガンドさえ口を開けて、夏目の行動に驚き固まってしまう。
美哉は、くぐもった声をもらし視界は夏目の顔で覆われキスで口を塞がれ言葉を発せられない。
しばらくお互いの吐息だけが口からもれる。美哉の肩を掴む夏目の手に力が入り、体を固定され引き剥がせずいつもの逆の立場に。
ようやく顔が離れ、息を吸い込むことができるように。普段の行動からは想像もしていなかった夏目の意思表示に、見る見る頬を赤らめていく美哉にはっきりと告げる。
「俺も、美哉も一人じゃない。そう言ってくれたのは美哉だ。俺たち全員の戦力があれば、何も問題はないだろ」
さすがの美哉も、これ以上は言えず赤くした頬に触れながら頷く。
フェンリルとヨルムンガンドは念話で話す。
(あの奥手な主がここまで行動で示すとは)
(夏目の意外な一面が見られてボク、楽しいよ兄さん!)
(お前は、相変わらずのようだな。まあ、あの押しに強い美哉が何も言えず頷くだけの姿は確かに面白いが)
などとお互い見た感想を述べる。そこへ、また襖が開き燐と桜、春人が現れる。
終始、夏目と美哉のやり取りを見ていた春人は変わらずの笑顔。
「逢真くんの言う通り。いくら、当主の命令でも相打ち覚悟の命令は素直に頷けない」
「わたしも夏目の意見に賛成だ」
燐も同じ気持ちのようで、首を横に振り拒否を示す。
桜は、夏目の言動を見て顔を赤くさせ咳払い。
「ん、んんっ! 次期当主だけの問題じゃないもの。あたしたちにもあるから」
三人の登場に夏目は驚くことはなく、やることは決まっている。神殺しも神獣も、同時に倒し仕留めればいいと意気込む。
むしろ驚いているのは珍しく美哉の方だ。
「~~~~っ!」
見られていたことに恥ずかしさが込み上げ、唇を噛みしめ涙目で何か言いたげなのだが何も言えない様子。
美哉自身の言動が招いた結果とタイミングを見計らい部屋へ来た三人。全て見られ一人突っ走った姿が、どうしようもないほどの羞恥心が襲い肩を震わせる。
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