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第四章 神山学園のレヴィアタン
風紀委員長の襲来(3)
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美哉に指示された校舎方面へ向かう夏目。しかし、後ろから息を切らすこともこの上なく楽しげな顔と笑い声が迫る。
駆ける速度も体力もアスリート選手以上のものに恐れを抱く。
「な、なんでっ、息を……切らすこともなく、速度も落ちずっ、追いかけ続けられるんだよ!?」
夏目は、苦しそうに息を切らし体力が底を尽きそうで走る速度も落ちてきていた。
『言葉より脚を動かすがよい!』
「む、無茶なっ……!」
フェンリルンに急かされ、立ち止まり脚を休ませる暇もなく走り続ける。
「こ、校舎が見えてきた……!」
校舎が見え、美哉との合流地点だと胸を撫で下ろす夏目に思いもよらないことが起きた。
一歩、踏み出した瞬間に地面がぬかるみ右足を取られ前のめりに転けたのだ。
「おわっ!? うげっ!」
右足を見えれば水を含んだ地面に飲まれ抜けない。
「な、なんでっ!?」
昨日、雨は降っておらずそれどころか晴天だった。今日も昨日同様に雲一つない晴天。
ましてや、踏み込んだ一箇所だけがぬかるむなどありえない。
何が起きてどうしてこうなったのか、足に力を入れても抜けず手で引っ張っても抜けない状況に脳内はパニックを起こす。
(な、なんだよこれ!? なんで抜けないんだ! ちょっ、早く抜けろ!)
そこへ、背後に誰かが立つ気配がする。追いかけ回していた先輩だ。
「中々、楽しめたわ後輩くん。同じ神殺しとの鬼ごっこもいいわね」
彼女は、夏目を見下ろし笑いかける。その言葉に、頭の中に浮かび上がる人物が一人。
――風紀委員長。
(た、確か風紀委員長も同じ神殺しだって、美哉から聞いた気が……)
『この地面、神獣の能力によるもので間違いない』
フェンリルも念話で夏目に伝え、ヨルムンガンドはぬかるむ土を頭で必死に掻き出し右足を抜こうとするが、どこからとなく水が止めどなく溢れ出し上手くいかない。
「これ、ただの水じゃないよ! 夏目の足首に纏わりついてどうにもできない!」
叫ぶその声は、背後に立つ彼女にも聞こえている様子で口の端を吊り上げる。
「当然でしょ。その水は、私の神獣の能力よ。そう簡単にどうこうこなんて、できやしない。さて、怖い幼なじみが来る前にさっさと終わらせましょうか」
そう言って、夏目の目の前に移動ししゃがみ込み手を伸ばす。
「…………っ!」
その手は顔へ近づき、目を開き固まった。鼓動が早く脈を打ち危機感を募らせる夏目。
むぎゅっ、と頬を片手で挟まれ唇が尖り間抜けな顔に。
「??????」
頬を挟まれた状況に、ますます脳内がパニックを起こしアホ毛が動く。グルグル回転し、疑問符をいくつも浮かび奇妙な動きをするアホ毛。
それを見ていた彼女が、もう片手でそのアホ毛を掴み上げ引っ張った。
脳天に痛みが走り、苦痛な表情になり叫ぶ夏目。
「いっ!? いはい! いはいいはいっ!」
アホ毛を掴む彼女の手首を夏目も掴み、引き離そうと力を込めるが手放されることはなくむしろ余計に上下左右に引っ張られた。
「この髪の毛、どういう仕組で動いてるわけ? 生き物?」
「いはいって! はなへ!」
グイグイと引っ張られ、涙目の夏目を助けようとフェンリルが影から小型犬サイズとなって姿を現し吠え、ヨルムンガンドも透明化を解き同時に彼女へ威嚇。
「主から離れよ小娘!」
「夏目をいじめるな!」
二体の神獣を見ても動じず、むしろもっと楽しくなってきたじゃないと言いたげにニヤリと笑って見せる。
「ようやく姿を見せたわね。じゃあこっちも」
彼女の影が揺らめき、そこから白い鱗と翼を持った手足のない小型の龍が現れた。
「「「――――ッ!?」」」
これには、夏目を含む誰もが驚く。まさか、龍が出てくるとは思っていなかった。フェンリルは、己が持つ知識から白い龍を検索する。
ヒットしたのは二体。白い竜とレヴィアタン。
「少し遊んであげな」
自らの神獣に命ずると、白い鱗を持つ龍はフェンリルとヨルムンガンドを見つめ体から水を出す。
その水は、意思を持つかのように鞭となり襲い掛かる。
頭上から叩きつけるように振るわれ、フェンリルとヨルムンガンドは夏目から引き離され退避。
「に、兄さん! 夏目から離されたよ!」
「分かっておる!」
地面に当たりバシャンッ、と水が弾けるがその水は土に吸い込まれることはなく鞭の形へ戻り、夏目の神獣に攻撃を続け、木にぶち当たり弾けても元に戻る。
フェンリルの反撃で爪を繰り出すが、水のため切れず意味をなさない。
ヨルムンガンドは、威力を抑え猛毒を白い龍に向けて吐き出す。
しかし、白い龍は水の塊を口から吐き出し猛毒を包み込む。水の中で、浄化されてしまい無力化されヨルムンガンドには打つ手なし。
これには夏目は冷や汗が流れ、フェンリルは焦りを覚える。
(な、何かないか!?)
いくら思考を巡らせても案が浮かばず、それどころか身動きが取れない夏目。
「夏目!」
そこへ、聞き慣れた声がする。
「チッ。早いお出ましで」
彼女も声がする方へ視線を向け舌打ちをし、自身の神獣へ攻撃をやめるよう顔で命ずる。
フェンリルとヨルムンガンドも、現れた美哉の姿を見て一安心。
美哉は、夏目の頬とアホ毛を掴む彼女へ珍しく殺意を向け言い放つ。
「その手を放してください。これ以上、夏目を傷つけるのなら容赦はしませんよ?」
この場の空気が、美哉の放つ冷気で文字通り凍てつく。
駆ける速度も体力もアスリート選手以上のものに恐れを抱く。
「な、なんでっ、息を……切らすこともなく、速度も落ちずっ、追いかけ続けられるんだよ!?」
夏目は、苦しそうに息を切らし体力が底を尽きそうで走る速度も落ちてきていた。
『言葉より脚を動かすがよい!』
「む、無茶なっ……!」
フェンリルンに急かされ、立ち止まり脚を休ませる暇もなく走り続ける。
「こ、校舎が見えてきた……!」
校舎が見え、美哉との合流地点だと胸を撫で下ろす夏目に思いもよらないことが起きた。
一歩、踏み出した瞬間に地面がぬかるみ右足を取られ前のめりに転けたのだ。
「おわっ!? うげっ!」
右足を見えれば水を含んだ地面に飲まれ抜けない。
「な、なんでっ!?」
昨日、雨は降っておらずそれどころか晴天だった。今日も昨日同様に雲一つない晴天。
ましてや、踏み込んだ一箇所だけがぬかるむなどありえない。
何が起きてどうしてこうなったのか、足に力を入れても抜けず手で引っ張っても抜けない状況に脳内はパニックを起こす。
(な、なんだよこれ!? なんで抜けないんだ! ちょっ、早く抜けろ!)
そこへ、背後に誰かが立つ気配がする。追いかけ回していた先輩だ。
「中々、楽しめたわ後輩くん。同じ神殺しとの鬼ごっこもいいわね」
彼女は、夏目を見下ろし笑いかける。その言葉に、頭の中に浮かび上がる人物が一人。
――風紀委員長。
(た、確か風紀委員長も同じ神殺しだって、美哉から聞いた気が……)
『この地面、神獣の能力によるもので間違いない』
フェンリルも念話で夏目に伝え、ヨルムンガンドはぬかるむ土を頭で必死に掻き出し右足を抜こうとするが、どこからとなく水が止めどなく溢れ出し上手くいかない。
「これ、ただの水じゃないよ! 夏目の足首に纏わりついてどうにもできない!」
叫ぶその声は、背後に立つ彼女にも聞こえている様子で口の端を吊り上げる。
「当然でしょ。その水は、私の神獣の能力よ。そう簡単にどうこうこなんて、できやしない。さて、怖い幼なじみが来る前にさっさと終わらせましょうか」
そう言って、夏目の目の前に移動ししゃがみ込み手を伸ばす。
「…………っ!」
その手は顔へ近づき、目を開き固まった。鼓動が早く脈を打ち危機感を募らせる夏目。
むぎゅっ、と頬を片手で挟まれ唇が尖り間抜けな顔に。
「??????」
頬を挟まれた状況に、ますます脳内がパニックを起こしアホ毛が動く。グルグル回転し、疑問符をいくつも浮かび奇妙な動きをするアホ毛。
それを見ていた彼女が、もう片手でそのアホ毛を掴み上げ引っ張った。
脳天に痛みが走り、苦痛な表情になり叫ぶ夏目。
「いっ!? いはい! いはいいはいっ!」
アホ毛を掴む彼女の手首を夏目も掴み、引き離そうと力を込めるが手放されることはなくむしろ余計に上下左右に引っ張られた。
「この髪の毛、どういう仕組で動いてるわけ? 生き物?」
「いはいって! はなへ!」
グイグイと引っ張られ、涙目の夏目を助けようとフェンリルが影から小型犬サイズとなって姿を現し吠え、ヨルムンガンドも透明化を解き同時に彼女へ威嚇。
「主から離れよ小娘!」
「夏目をいじめるな!」
二体の神獣を見ても動じず、むしろもっと楽しくなってきたじゃないと言いたげにニヤリと笑って見せる。
「ようやく姿を見せたわね。じゃあこっちも」
彼女の影が揺らめき、そこから白い鱗と翼を持った手足のない小型の龍が現れた。
「「「――――ッ!?」」」
これには、夏目を含む誰もが驚く。まさか、龍が出てくるとは思っていなかった。フェンリルは、己が持つ知識から白い龍を検索する。
ヒットしたのは二体。白い竜とレヴィアタン。
「少し遊んであげな」
自らの神獣に命ずると、白い鱗を持つ龍はフェンリルとヨルムンガンドを見つめ体から水を出す。
その水は、意思を持つかのように鞭となり襲い掛かる。
頭上から叩きつけるように振るわれ、フェンリルとヨルムンガンドは夏目から引き離され退避。
「に、兄さん! 夏目から離されたよ!」
「分かっておる!」
地面に当たりバシャンッ、と水が弾けるがその水は土に吸い込まれることはなく鞭の形へ戻り、夏目の神獣に攻撃を続け、木にぶち当たり弾けても元に戻る。
フェンリルの反撃で爪を繰り出すが、水のため切れず意味をなさない。
ヨルムンガンドは、威力を抑え猛毒を白い龍に向けて吐き出す。
しかし、白い龍は水の塊を口から吐き出し猛毒を包み込む。水の中で、浄化されてしまい無力化されヨルムンガンドには打つ手なし。
これには夏目は冷や汗が流れ、フェンリルは焦りを覚える。
(な、何かないか!?)
いくら思考を巡らせても案が浮かばず、それどころか身動きが取れない夏目。
「夏目!」
そこへ、聞き慣れた声がする。
「チッ。早いお出ましで」
彼女も声がする方へ視線を向け舌打ちをし、自身の神獣へ攻撃をやめるよう顔で命ずる。
フェンリルとヨルムンガンドも、現れた美哉の姿を見て一安心。
美哉は、夏目の頬とアホ毛を掴む彼女へ珍しく殺意を向け言い放つ。
「その手を放してください。これ以上、夏目を傷つけるのなら容赦はしませんよ?」
この場の空気が、美哉の放つ冷気で文字通り凍てつく。
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