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第三章 林間合宿と主なき神獣
弟の暴走(2)
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夏目の口から語られた、中学時代の話を聞き押し黙る燐とフェンリルたち。まさか、ここまで美哉の影響を受けているとは予想していなかったらしい。
桜も話を聞いていたようで、夏目のそばに来ると肩に手を置く。
「夏目くんも色々と苦労してきたのね」
「?」
何故、同情されているのかいまいち分かっていない夏目。
それに燐も腕を組み何度も頷き言う。
「先輩の欲深さと束縛の強さがよく分かる話だな。とはいえ、中学では友人が作れなかったとしても今は違う。わたしと桜がいる」
「そうね。あたしも夏目くんと、こうして話をして一緒にいるし部活だって同じで仲間だしね」
「…………っ!」
二人の言葉に今更ながら気づく。中学の頃は一人も友人と呼べる人はいなかったが、一年遅れて入学した今では友人と呼べる二人がいる。それは今までなかったことだ。美哉に、強引に部活へ入部させられたとはいえ同じ時間を共有している。
何より、神殺しや神獣から巫女という非日常の側に身を置き頼れる仲間だ。
そこへフェンリル、ヨルムンガンドもつけ加えた。
「我輩もいるではないか。主と共に生き、旅をするという約束もある」
「ボクもボクも! 一緒に行くって決めたもん! 美味しいもの食べて、兄さんと夏目と綺麗な景色を見に行くんだ!」
夏目の足元に擦り寄るフェンリル、頬に頭を押しつけるヨルムンガンド。嬉しいこと言ってくれる相棒たちの頭を撫で笑う。
「そうだった。俺にも友人ができて約束もある。みんな、ありがとう」
燐、桜、相棒たちに礼を言う夏目だった。
そんな過去話とオリエンテーリングを終え自由時間を挟んだあとは、生徒たちお待ちかねの夕食のバーベキューの時間だ。班ごとに分かれ思い思いに楽しむ。
夏目の姿はそこになく、燐と桜も同様に。生徒、教師から離れた場所に集まっていた。御三家と関係がある教師も、この林間合宿に同行しており保健の女教師だ。
「は~い。追加のお肉と野菜、持ってきたわよ~」
「あっ、ありがとうございます」
と、トレイに乗せた肉と野菜をテーブルの上に置いていく。彼女から食材を受け取った桜が、手際よく色々と焼いていく。
「あとは好きにしてね~」
そう言い残し去っていく。
女教師も、夏目や春人が神殺しであることを知っている。そのため、フェンリルが姿を現しても特に何も言わない。
見送り、姿が見えなくなってから透明化を解き姿を現すヨルムンガンド。現状、夏目たち以外に知られると面倒になることを考慮した燐と桜が、しばらくの間は秘密にしておこうとという理由でそれ以外の前では透明化をしている。
「香ばしくて美味しい!」
好きなだけ肉とさついまいも、かぼちゃを食べるヨルムンガルド。フェンリルは、大好きな肉を嬉しそうに食べていた。
「ガブッ、ハウッ、ハグッ」
串に刺さず、皿に移した肉や野菜を食べる夏目も楽しんでいた。隣りにいる燐も、焼いた肉をひょいひょいと皿に移していく。
「ちょっと、燐! お肉ばかり取らない! 野菜も食べる!」
「こういう時には、肉に限るだろう」
「そういうことじゃないから! 夏目くんを見習って!」
「ん? 夏目は、肉を食べないのか?」
肉ばかりを取る燐に対して怒る桜は夏目を見て言い、皿に肉よりもさついまいもやかぼちゃ、とうもろこし、むきエビを食べていた。
「む? いや、肉も食べるぞ。けど、タレに絡むこれも美味しいし網で焼くと何か違う味になるというか。それこそ、こういう時にしか食べられないから俺はこっちばっか食べるな」
「うん、確かに夏目の言うことも一理あるな。網で焼くと、香ばしさが増しタレに絡ませるとより一層に美味しく感じる」
「だろう? 美味しくて手が止まらない」
「そうだな」
などとしみじみに言う夏目と燐だが、桜は笑顔を浮かべてトングで野菜を燐の皿へ大量に移す。
「燐は、野菜も食べてね。あっ、夏目くんにはこっちのお肉どうぞ」
「ちょっと待て! 勝手に、わたしの皿に入れるな!」
「おっ、ありがたい。やっぱ、肉も美味い!」
わいわい、と騒ぎ夕食を楽しむ。ある程度、楽しんだあと燐から夏目、桜、フェンリルたちへ言う。
「昼間は、襲撃がなかったが今夜もそうとは限らない。そこでだ、襲撃を待ち返り討ちではなくこちらから動く」
燐は皿と箸を置き続ける。
「使徒共を引き摺り出すぞ。そこで、ヨルムンガルドには誘き寄せるために目立ってほしいんだ」
かぼちゃを咥え、タレの入った皿に投入し頬張るヨルムンガルドは口を動かし可愛く頭を傾げて見せる。
「あの湖に戻り、ヨルムンガルドはここにいるぞ、と使徒共に示してほしい」
「もぐもぐ……。ごっくん。それで、上手くいくの?」
かぼちゃの次はとうもろこしを咥え、またタレの入った皿に投入し口いっぱい頬張りながら燐へ訊く。
「ああ、上手くいく。いや、させる。林間合宿は明日で終わる。今夜を逃せば、使徒共を町へ連れ込むことになる」
燐の言葉に、夏目も桜も表情が険しくなる。
林間合宿は二泊三日だ。明日の夕方には神山学園に戻り、そこで解散となりそれぞれ帰宅となるだろう。
「明日には帰る。だからこそ、今夜中に決着をつけなければならない」
「分かった。ボク、やる」
「ありがとう。助かる」
ヨルムンガルドは、燐の顔を真っ直ぐ見つめ返し答える。
使徒をここで仕留めなければ、神山町がヨルムンガルドを巡る戦場に変わりかねない。それだけは何としても、避けなければならいことをここにいる誰もが理解していることだ。
「みんあ、今夜中に終わらせるぞ」
「ああ」
「ええ」
燐の言葉に、誰もが頷き夜になってから動くことに。
桜も話を聞いていたようで、夏目のそばに来ると肩に手を置く。
「夏目くんも色々と苦労してきたのね」
「?」
何故、同情されているのかいまいち分かっていない夏目。
それに燐も腕を組み何度も頷き言う。
「先輩の欲深さと束縛の強さがよく分かる話だな。とはいえ、中学では友人が作れなかったとしても今は違う。わたしと桜がいる」
「そうね。あたしも夏目くんと、こうして話をして一緒にいるし部活だって同じで仲間だしね」
「…………っ!」
二人の言葉に今更ながら気づく。中学の頃は一人も友人と呼べる人はいなかったが、一年遅れて入学した今では友人と呼べる二人がいる。それは今までなかったことだ。美哉に、強引に部活へ入部させられたとはいえ同じ時間を共有している。
何より、神殺しや神獣から巫女という非日常の側に身を置き頼れる仲間だ。
そこへフェンリル、ヨルムンガンドもつけ加えた。
「我輩もいるではないか。主と共に生き、旅をするという約束もある」
「ボクもボクも! 一緒に行くって決めたもん! 美味しいもの食べて、兄さんと夏目と綺麗な景色を見に行くんだ!」
夏目の足元に擦り寄るフェンリル、頬に頭を押しつけるヨルムンガンド。嬉しいこと言ってくれる相棒たちの頭を撫で笑う。
「そうだった。俺にも友人ができて約束もある。みんな、ありがとう」
燐、桜、相棒たちに礼を言う夏目だった。
そんな過去話とオリエンテーリングを終え自由時間を挟んだあとは、生徒たちお待ちかねの夕食のバーベキューの時間だ。班ごとに分かれ思い思いに楽しむ。
夏目の姿はそこになく、燐と桜も同様に。生徒、教師から離れた場所に集まっていた。御三家と関係がある教師も、この林間合宿に同行しており保健の女教師だ。
「は~い。追加のお肉と野菜、持ってきたわよ~」
「あっ、ありがとうございます」
と、トレイに乗せた肉と野菜をテーブルの上に置いていく。彼女から食材を受け取った桜が、手際よく色々と焼いていく。
「あとは好きにしてね~」
そう言い残し去っていく。
女教師も、夏目や春人が神殺しであることを知っている。そのため、フェンリルが姿を現しても特に何も言わない。
見送り、姿が見えなくなってから透明化を解き姿を現すヨルムンガンド。現状、夏目たち以外に知られると面倒になることを考慮した燐と桜が、しばらくの間は秘密にしておこうとという理由でそれ以外の前では透明化をしている。
「香ばしくて美味しい!」
好きなだけ肉とさついまいも、かぼちゃを食べるヨルムンガルド。フェンリルは、大好きな肉を嬉しそうに食べていた。
「ガブッ、ハウッ、ハグッ」
串に刺さず、皿に移した肉や野菜を食べる夏目も楽しんでいた。隣りにいる燐も、焼いた肉をひょいひょいと皿に移していく。
「ちょっと、燐! お肉ばかり取らない! 野菜も食べる!」
「こういう時には、肉に限るだろう」
「そういうことじゃないから! 夏目くんを見習って!」
「ん? 夏目は、肉を食べないのか?」
肉ばかりを取る燐に対して怒る桜は夏目を見て言い、皿に肉よりもさついまいもやかぼちゃ、とうもろこし、むきエビを食べていた。
「む? いや、肉も食べるぞ。けど、タレに絡むこれも美味しいし網で焼くと何か違う味になるというか。それこそ、こういう時にしか食べられないから俺はこっちばっか食べるな」
「うん、確かに夏目の言うことも一理あるな。網で焼くと、香ばしさが増しタレに絡ませるとより一層に美味しく感じる」
「だろう? 美味しくて手が止まらない」
「そうだな」
などとしみじみに言う夏目と燐だが、桜は笑顔を浮かべてトングで野菜を燐の皿へ大量に移す。
「燐は、野菜も食べてね。あっ、夏目くんにはこっちのお肉どうぞ」
「ちょっと待て! 勝手に、わたしの皿に入れるな!」
「おっ、ありがたい。やっぱ、肉も美味い!」
わいわい、と騒ぎ夕食を楽しむ。ある程度、楽しんだあと燐から夏目、桜、フェンリルたちへ言う。
「昼間は、襲撃がなかったが今夜もそうとは限らない。そこでだ、襲撃を待ち返り討ちではなくこちらから動く」
燐は皿と箸を置き続ける。
「使徒共を引き摺り出すぞ。そこで、ヨルムンガルドには誘き寄せるために目立ってほしいんだ」
かぼちゃを咥え、タレの入った皿に投入し頬張るヨルムンガルドは口を動かし可愛く頭を傾げて見せる。
「あの湖に戻り、ヨルムンガルドはここにいるぞ、と使徒共に示してほしい」
「もぐもぐ……。ごっくん。それで、上手くいくの?」
かぼちゃの次はとうもろこしを咥え、またタレの入った皿に投入し口いっぱい頬張りながら燐へ訊く。
「ああ、上手くいく。いや、させる。林間合宿は明日で終わる。今夜を逃せば、使徒共を町へ連れ込むことになる」
燐の言葉に、夏目も桜も表情が険しくなる。
林間合宿は二泊三日だ。明日の夕方には神山学園に戻り、そこで解散となりそれぞれ帰宅となるだろう。
「明日には帰る。だからこそ、今夜中に決着をつけなければならない」
「分かった。ボク、やる」
「ありがとう。助かる」
ヨルムンガルドは、燐の顔を真っ直ぐ見つめ返し答える。
使徒をここで仕留めなければ、神山町がヨルムンガルドを巡る戦場に変わりかねない。それだけは何としても、避けなければならいことをここにいる誰もが理解していることだ。
「みんあ、今夜中に終わらせるぞ」
「ああ」
「ええ」
燐の言葉に、誰もが頷き夜になってから動くことに。
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