48 / 220
第二章 神喰い狼フェンリルと不死鳥フェニックス
第五幕 決闘と誓い(1)
しおりを挟む
フェンリルと共にグラウンドへ向かえば、燐と桜が既に待機していた。そして、生徒会長こと東雲春人も傍らに火の鳥を従えて。
「あれがフェニックス……」
「そうだ」
「大きい上に、離れていても分かるくらい熱いというか暖かいな」
「業火の影響であろうな」
羽は広げず地面に立つフェニックスは、オレンジ色の炎を纏い金色の目を夏目に向ける。体長はおよそ五メートルほど。
フェンリルは自在に大きさを変えられる。戦闘時はだいたい三メートルでいることが多い。だが、今回は相手が神獣のため本来の大きさに戻るだろう。
茶髪の少し長めの髪を一つに束ね、垂れ目の茶目からは敵意を感じられない。笑顔で夏目を迎え入れる真意が読めず警戒する。
高身長、見た目は細身で戦闘向きの体格ではないのだが隙きがない。
「やあ、逢真夏目くん。僕は、桜の兄の東雲春人。神山学園の生徒会長を務めている。あとは、東雲家の次期当主候補でもある。よろしくね」
笑みを絶やさず、春人は軽く自己紹介。夏目も名乗る程度で返す。
「逢真夏目だ」
たったの一言。しかし、春人は何故か夏目に期待の眼差しを向ける。
(なんだ? この視線というか目は? どうして、敵意とか向けない?)
それが逆に怪しく映り、何かきっと裏があると警戒と敵意を向けるが春人本人は、そんな夏目の態度など気にも留めない。
春人の視線は、夏目からグラウンドの端に遅れて集まった美哉たち、校舎から決闘を見守る御三家に向け言う。
「さて、全員揃ったようだし確認しよう。決闘には、僕と逢真くん以外の介入を許さない。これはあくまで、僕たちの一騎打ち。御三家も同様に」
「邪魔はさせないってことか……ですか?」
先輩であり会長ということを思い出し言い直す。
「そう。グラウンド全体が決闘場であり、契約している神獣を戦わせても構わないよ。勝敗は、相手が負けを認めるか戦闘不能になるまで。または、死ぬまで続ける。一回限りの決闘、勝敗の異論はなし。ここまでで何か質問はあるかい?」
この説明に思うところはない。
誰にも介入されないのなら、後ろから卑怯な手で殺される心配がない。
逆に言えば、夏目が死にかけても美哉はむろん燐も助けに入れないということ。
(フェンリルと、俺自身の力で窮地に陥ってもなんとかするしかないってことだよな?)
と、相棒のフェンリルに念話で訊く。
(そうだ。相手は厄介な不死鳥と神殺し)
(殺らなきゃ殺られる……)
(怖いか?)
(まあ、それなりに。使徒と殺り合った時とは、空気感が全然違うし生徒会長からは何とも言えない圧を感じる)
夏目の視線は春人に向けられ、隙きがない上に実力は自分より強いとこうして顔を合わせ纏う雰囲気、余裕のある笑み、威圧から感じ取る。
(畏れるな、我輩がいる。主はもう弱く何もできない頃の主ではない)
(フェンリル……)
(大丈夫だ。相棒たる、この我輩の言葉は信じられぬか?)
その言葉に顔を下へ。フェンリルは、真っ直ぐ夏目を見つめ安心させるかのように笑って見せていた。
(いいや)
首を横に振り言い切る。
(信じてる。だって、俺の唯一無二の相棒の言葉だからな!)
(ならば、ゆくぞ!)
(おう!)
意気込み、顔を上げる。
「いや、ない。始めよう、生徒会長」
「そうか。では、時間が勿体ないからさっそく始めよう」
そう言うと、傍らに鎮座していたフェニックスが羽を広げ頭上へ羽ばたく。
フェンリルも本来の大きさ、体長七メートルを超える巨躯へ。
神殺し、神獣が睨み合う。
グラウンドの端で幼なじみの勝利を信じて祈ることしができない美哉、強くなりたいと望む夏目へ特訓をつけこの縁談を破壊してくれと願う燐、いくら神殺しとしての強さを持ち不死鳥と契約を交わしたとしても何が起きるか分からず兄の身を心配する桜。
校舎には御三家当主が見ている。雪平家から玄也と美哉の父親、秋山家から燐の父親、東雲家から兄妹の母親が。
玄也は髭を擦りながら、美哉が選んだ夏目の実力を間近で見られるこの機会を楽しみしていた。横目で、息子を見れば不機嫌な顔と思い通りにいかない苛立ちが態度から滲む。
東雲家と秋山家も、静観の様子だが結果次第ではどう出るか。
そんなことを考える玄也が見守る中、二人の神殺しによる譲れないもののため自らの命を懸けた決闘が始まろうとしていた。
「あれがフェニックス……」
「そうだ」
「大きい上に、離れていても分かるくらい熱いというか暖かいな」
「業火の影響であろうな」
羽は広げず地面に立つフェニックスは、オレンジ色の炎を纏い金色の目を夏目に向ける。体長はおよそ五メートルほど。
フェンリルは自在に大きさを変えられる。戦闘時はだいたい三メートルでいることが多い。だが、今回は相手が神獣のため本来の大きさに戻るだろう。
茶髪の少し長めの髪を一つに束ね、垂れ目の茶目からは敵意を感じられない。笑顔で夏目を迎え入れる真意が読めず警戒する。
高身長、見た目は細身で戦闘向きの体格ではないのだが隙きがない。
「やあ、逢真夏目くん。僕は、桜の兄の東雲春人。神山学園の生徒会長を務めている。あとは、東雲家の次期当主候補でもある。よろしくね」
笑みを絶やさず、春人は軽く自己紹介。夏目も名乗る程度で返す。
「逢真夏目だ」
たったの一言。しかし、春人は何故か夏目に期待の眼差しを向ける。
(なんだ? この視線というか目は? どうして、敵意とか向けない?)
それが逆に怪しく映り、何かきっと裏があると警戒と敵意を向けるが春人本人は、そんな夏目の態度など気にも留めない。
春人の視線は、夏目からグラウンドの端に遅れて集まった美哉たち、校舎から決闘を見守る御三家に向け言う。
「さて、全員揃ったようだし確認しよう。決闘には、僕と逢真くん以外の介入を許さない。これはあくまで、僕たちの一騎打ち。御三家も同様に」
「邪魔はさせないってことか……ですか?」
先輩であり会長ということを思い出し言い直す。
「そう。グラウンド全体が決闘場であり、契約している神獣を戦わせても構わないよ。勝敗は、相手が負けを認めるか戦闘不能になるまで。または、死ぬまで続ける。一回限りの決闘、勝敗の異論はなし。ここまでで何か質問はあるかい?」
この説明に思うところはない。
誰にも介入されないのなら、後ろから卑怯な手で殺される心配がない。
逆に言えば、夏目が死にかけても美哉はむろん燐も助けに入れないということ。
(フェンリルと、俺自身の力で窮地に陥ってもなんとかするしかないってことだよな?)
と、相棒のフェンリルに念話で訊く。
(そうだ。相手は厄介な不死鳥と神殺し)
(殺らなきゃ殺られる……)
(怖いか?)
(まあ、それなりに。使徒と殺り合った時とは、空気感が全然違うし生徒会長からは何とも言えない圧を感じる)
夏目の視線は春人に向けられ、隙きがない上に実力は自分より強いとこうして顔を合わせ纏う雰囲気、余裕のある笑み、威圧から感じ取る。
(畏れるな、我輩がいる。主はもう弱く何もできない頃の主ではない)
(フェンリル……)
(大丈夫だ。相棒たる、この我輩の言葉は信じられぬか?)
その言葉に顔を下へ。フェンリルは、真っ直ぐ夏目を見つめ安心させるかのように笑って見せていた。
(いいや)
首を横に振り言い切る。
(信じてる。だって、俺の唯一無二の相棒の言葉だからな!)
(ならば、ゆくぞ!)
(おう!)
意気込み、顔を上げる。
「いや、ない。始めよう、生徒会長」
「そうか。では、時間が勿体ないからさっそく始めよう」
そう言うと、傍らに鎮座していたフェニックスが羽を広げ頭上へ羽ばたく。
フェンリルも本来の大きさ、体長七メートルを超える巨躯へ。
神殺し、神獣が睨み合う。
グラウンドの端で幼なじみの勝利を信じて祈ることしができない美哉、強くなりたいと望む夏目へ特訓をつけこの縁談を破壊してくれと願う燐、いくら神殺しとしての強さを持ち不死鳥と契約を交わしたとしても何が起きるか分からず兄の身を心配する桜。
校舎には御三家当主が見ている。雪平家から玄也と美哉の父親、秋山家から燐の父親、東雲家から兄妹の母親が。
玄也は髭を擦りながら、美哉が選んだ夏目の実力を間近で見られるこの機会を楽しみしていた。横目で、息子を見れば不機嫌な顔と思い通りにいかない苛立ちが態度から滲む。
東雲家と秋山家も、静観の様子だが結果次第ではどう出るか。
そんなことを考える玄也が見守る中、二人の神殺しによる譲れないもののため自らの命を懸けた決闘が始まろうとしていた。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
劣等生のハイランカー
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す!
無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。
カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。
唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。
学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。
クラスメイトは全員ライバル!
卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである!
そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。
それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。
難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。
かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。
「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」
学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。
「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」
時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。
制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。
そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。
(各20話編成)
1章:ダンジョン学園【完結】
2章:ダンジョンチルドレン【完結】
3章:大罪の権能【完結】
4章:暴食の力【完結】
5章:暗躍する嫉妬【完結】
6章:奇妙な共闘【完結】
7章:最弱種族の下剋上【完結】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる