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第二章 神喰い狼フェンリルと不死鳥フェニックス
第三幕 本当の気持ち(1)
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美哉が実家に戻り静かになった家の中。と、思いきや何故か燐だけが残っていた。
リビングのソファーに向かい合う形で座る夏目と燐。
夏目の影から、小型犬のサイズになったフェンリルが姿を現す。会話はなく沈黙が三十分ほど続きそれを破ったのはフェンリルだ。
「小娘。何故に帰らぬ? いや、何を企んでいる?」
燐に問う。
「返答次第では、この場で殺す」
「フェ、フェンリル⁉ それはちょっと言い過ぎじゃないか? 落ち着けって」
威嚇し物騒なことを言い出すフェンリルを窘めようとする夏目に警告。
「いや、主よ。この小娘は何かを隠し、企みがある上に危害を及ぼすかもしれぬ。放置はできぬであろう」
「フェンリル……」
夏目は、ティーカップを片手に持ち紅茶を飲む燐を見つめた。
「…………」
無言の燐は紅茶を飲み終えると、夏目を真っ直ぐ見つめ訊く。
「逢真、先輩のことをどう思っている? 雪平家の娘として、または巫女として見ているのか? それとも異性として見ているのか? それが知りたい」
燐の言葉に反発するようにフェンリルが怒る。
「小娘! 貴様、言うことがそれか! ならば何故、あの場で主にあのような言葉を吐いた! あれでは、主の気持ちを踏み躙り潰しにきただけであろうが!」
牙を見せ、口の端を吊り上げ、目を細めて怒り吠えるフェンリル。
怒りのフェンリルを止められず、夏目は顔を俯かせた。
「以前、主に『美哉へ迫ってみたらどうだ?』などと言っておきながら、実際にやっていることは発言の真逆。にも関わらず、今更何を言い出す。主をこれ以上、傷つけるのなら今すぐその喉元を喰らい千切るぞ!」
フェンリルの怒りを真正面から受け止めた燐は、唐突に頭を下げた。
「すまなかった。あの場では、ああ言う他になかったのだ。いや、謝罪したからといって許されるとは思っていない。逢真を、先輩を傷つけたことに変わりはない」
「「…………」」
夏目とフェンリル、燐が頭を下げ謝罪する姿に驚き固まる。
「わたしを、気が済むまで殴ってくれて構わない。フェンリルが、逢真を思い怒りをぶつけるのも当然のことだ。好きにしてくれ」
突然、そのようなことを言われた夏目のアホ毛が揺れまくりまたしても混乱してしまう。どうして今、燐が謝罪し怒りを真正面から受け好きにしてくれと言うのか。フェンリルの言う通り、何を思い何をしたいのか理解できない。
この状況についていきない夏目に燐は言葉を続けた。
「あのまま、先輩との関係が進むと逢真の身に危険が及ぶ可能性があったんだ。先輩の父君は、目的の為ならば手段を選ばない非情な性格。実の娘である先輩を道具としか見ず、今回の縁談も雪平の権力をより強くするためのもの」
燐が語る話に夏目もフェンリルもただ黙って聞く。
「逢真と一線を超えたと知られれば、いくら神殺しとしても邪魔だと本気で潰し、最悪の場合は殺しにくる。その上で、会長と子を成させようとするだろう。そうなれば、先輩の心は完全に壊れてしまう。生きた屍と成り果てるっ……」
悲痛な表情、拳を膝の上に作り語る燐の姿に嘘を言っているとは思えなかった。美哉の父親は、燐が語るように夏目を亡き者にしようと確実に実行すると伝わってくる。
「わたしは、それを阻止したいんだ……」
(秋山の真逆の行動理由はそういうことだったのか……)
フェンリルは再度、燐へ問う。
「それを主に伝え、小娘はどうする気だ? いや、どうしたいのだ?」
「……逢真。わたしは、お前にこの縁談を壊して欲しい」
「……っ⁉」
「な、なにっ⁉」
燐の申し出に、驚きのあまり今度こそ夏目の思考が停止してしまう。
それは、フェンリルも同じのようで驚き開いた口が塞がらない。
まさか、燐自らが縁談を壊して欲しい、などと口にすると思わず珍しく固まるフェンリル。
燐は、夏目とフェンリルを真剣な顔つきで見つめる。
リビングのソファーに向かい合う形で座る夏目と燐。
夏目の影から、小型犬のサイズになったフェンリルが姿を現す。会話はなく沈黙が三十分ほど続きそれを破ったのはフェンリルだ。
「小娘。何故に帰らぬ? いや、何を企んでいる?」
燐に問う。
「返答次第では、この場で殺す」
「フェ、フェンリル⁉ それはちょっと言い過ぎじゃないか? 落ち着けって」
威嚇し物騒なことを言い出すフェンリルを窘めようとする夏目に警告。
「いや、主よ。この小娘は何かを隠し、企みがある上に危害を及ぼすかもしれぬ。放置はできぬであろう」
「フェンリル……」
夏目は、ティーカップを片手に持ち紅茶を飲む燐を見つめた。
「…………」
無言の燐は紅茶を飲み終えると、夏目を真っ直ぐ見つめ訊く。
「逢真、先輩のことをどう思っている? 雪平家の娘として、または巫女として見ているのか? それとも異性として見ているのか? それが知りたい」
燐の言葉に反発するようにフェンリルが怒る。
「小娘! 貴様、言うことがそれか! ならば何故、あの場で主にあのような言葉を吐いた! あれでは、主の気持ちを踏み躙り潰しにきただけであろうが!」
牙を見せ、口の端を吊り上げ、目を細めて怒り吠えるフェンリル。
怒りのフェンリルを止められず、夏目は顔を俯かせた。
「以前、主に『美哉へ迫ってみたらどうだ?』などと言っておきながら、実際にやっていることは発言の真逆。にも関わらず、今更何を言い出す。主をこれ以上、傷つけるのなら今すぐその喉元を喰らい千切るぞ!」
フェンリルの怒りを真正面から受け止めた燐は、唐突に頭を下げた。
「すまなかった。あの場では、ああ言う他になかったのだ。いや、謝罪したからといって許されるとは思っていない。逢真を、先輩を傷つけたことに変わりはない」
「「…………」」
夏目とフェンリル、燐が頭を下げ謝罪する姿に驚き固まる。
「わたしを、気が済むまで殴ってくれて構わない。フェンリルが、逢真を思い怒りをぶつけるのも当然のことだ。好きにしてくれ」
突然、そのようなことを言われた夏目のアホ毛が揺れまくりまたしても混乱してしまう。どうして今、燐が謝罪し怒りを真正面から受け好きにしてくれと言うのか。フェンリルの言う通り、何を思い何をしたいのか理解できない。
この状況についていきない夏目に燐は言葉を続けた。
「あのまま、先輩との関係が進むと逢真の身に危険が及ぶ可能性があったんだ。先輩の父君は、目的の為ならば手段を選ばない非情な性格。実の娘である先輩を道具としか見ず、今回の縁談も雪平の権力をより強くするためのもの」
燐が語る話に夏目もフェンリルもただ黙って聞く。
「逢真と一線を超えたと知られれば、いくら神殺しとしても邪魔だと本気で潰し、最悪の場合は殺しにくる。その上で、会長と子を成させようとするだろう。そうなれば、先輩の心は完全に壊れてしまう。生きた屍と成り果てるっ……」
悲痛な表情、拳を膝の上に作り語る燐の姿に嘘を言っているとは思えなかった。美哉の父親は、燐が語るように夏目を亡き者にしようと確実に実行すると伝わってくる。
「わたしは、それを阻止したいんだ……」
(秋山の真逆の行動理由はそういうことだったのか……)
フェンリルは再度、燐へ問う。
「それを主に伝え、小娘はどうする気だ? いや、どうしたいのだ?」
「……逢真。わたしは、お前にこの縁談を壊して欲しい」
「……っ⁉」
「な、なにっ⁉」
燐の申し出に、驚きのあまり今度こそ夏目の思考が停止してしまう。
それは、フェンリルも同じのようで驚き開いた口が塞がらない。
まさか、燐自らが縁談を壊して欲しい、などと口にすると思わず珍しく固まるフェンリル。
燐は、夏目とフェンリルを真剣な顔つきで見つめる。
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