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第一章 神殺しと巫女

エピローグ

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 使徒襲撃から一夜が明けた放課後の部室にて。

 夏目と美哉の二人だけ。いつもの穏やかな空気はなく、むしろ息苦しさを感じさせる重さが漂っていた。



「…………」

「…………」



 お互い口を開かず黙り込む。

 部長椅子に座り、生徒会長へ使徒襲撃に関する報告を纏める美哉。ペンの走る音がやけに響く。



 夏目はというと、テーブルの上に置かれた紅茶が淹れられいるカップを眺めたまま俯く。



(結局、俺は何もできなかった……。フェンリルのお陰で使徒は倒せたけど、あの海堂の神獣を目の前に動けず美哉に庇われて……)



 フェンリルに護られ、七海を無力化できたのもそこまでお膳立てされたからだ、と思い込む。美哉は、里見と戦い負傷しながらもまだ余裕が見て取れたのに。

 戦ってみて分かる。



(あの使徒の言う通りだ。俺は、逃げ回ることしかできない……)



 フェンリルと七海の会話、身を隠しながら聞いていた。七海が言い放った言葉が、胸に突き刺さって抜けない。

 アホ毛が項垂れる様子から心情に気づいている美哉。



「夏目」

「ん? なんだ?」

「弱いと思うのなら、強くなる以外の選択はないですよ」

「え……?」

「明日からも、これから先も特訓あるのみ、です」

「…………」



 美哉に呼ばれ顔を上げる夏目にそう伝える。

 生徒会長へ報告する書類を片づけ終わった美哉は、夏目のそばに腰掛け頭を胸に抱き寄せる。唐突なその行動に混乱する。



「……っ⁉」

「大丈夫です。夏目は、少しずつ強くなっていますから。だから、強くなって私を護ってみせてくださいね」

「……っ!」



 夏目を優しく抱きしめ奮い立たせる。



(強くなりたい……!)



 今度こそ、美哉を護れるように。落ち込んでいた瞳に炎が灯る、強い意思と決意が宿る夏目の顔を覗き込み微笑む美哉。



 ――夏目と共に、死ぬまでそばに……。



 その想いも願いも叶わないと知りながらも望む美哉の表情に陰りが。それに気づかない夏目は、未だに抱きしめられ胸に引き寄せられている状況から離れたい。



「あ、あの……そろそろ、離してくれないか?」

「あら、もう少しいいじゃないですか」

「いやっ、でも……」

「うふふ」

「ちょっ⁉ どうして腕に力を込める⁉」

「夏目は抱き心地が良いですからね」

「か、顔に当たってるから!」

「うふふ」

「み、美哉⁉」



 美哉から離れようと、腕を引き剥がしたい夏目との攻防戦がしばらく続くのだった。
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