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第五章
五人目 最後の復讐は地獄への招待 その一
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「くそっ! どうなってるんだ⁉」
大通りから離れ人気のない小さな公園に一人、スマートフォンの画面を睨み叫ぶ一ノ瀬駿。
佐藤康介に何度もメッセージと電話をかけるが一度も彼が応答することはなかった。それどころか、動画サイトにアップされた動画が瞬く間に拡散され、駿の立場も危ういものになっていた。
家族にも動画が知られ、元々家族仲が良いとはいえなかったのがより拍車がかかりついには絶縁を父親から言い渡される。
そして、先日。佐藤康介の虐めの告白動画がアップされ、これもSNSやネットに拡散され虐めに関わった駿を除けた全員が消息不明に。
「くそっ……。こんなはずじゃなかったのに! これも、あの弟が……! このままじゃ、次は俺が……!」
頭を掻きむしり焦る駿。
大磨夏目を呼び出し、連絡が取れないメンバーのことを吐かせる計画を考えた時に感じた不安、恐怖がすぐそこまで来ていることに怯える日々。
今まで、何をしても報復なんてものを受けることも自分の立場が危うくなることもなかった。ましてや、怯える日々を過ごすなんてことは。
「あんな奴に捕まってたまるか! 逃げ切って、この屈辱を必ず晴らしてやる!」
静かな公園に、足音が近づく。顔を上げると先程、あんな奴と暴言を吐き顔を思い浮かべていた人物が目の前に現れる。
黒髪、黒目。右手には杖を持ち、細身で平均よりやや身長が低く目立つ外見でもなければ大人しそうな青年だ。そんな彼のそばには、男女三人がいた。
一人は、こんな時代にメイド服という格好でコスプレか何か、それともメイド喫茶で働く者なのか。月明かりに照らされて黒光りする長髪、均整とれた顔と服の上からでも分かる人間離れした一切の無駄のない身体。
もう一人も女だ。冬が近づく季節に黒いビキニにパレオ姿の金髪。こちらも月明かりで黄金のように輝き毛先が緩くウェーブしている。豊満な胸、見事にくびれた細く引き締まった腰回り、妖艶な笑みを浮かべ男を誘惑する。
最後は男。紺色の髪、纏う雰囲気は見る者に恐れを抱かせ上半身は裸で鍛え抜かれた肉体。吊り目で口から覗く白い牙は人間のサイズの犬歯には見えない。そこから放たれる鋭い眼光に目を逸してしまう駿。
「お、お前っ……!」
顔を見ると怒りが湧き上がり、今にも殴りかかりたい衝動を抑え込む駿。目は吊り上がり、青筋を立て睨みつける。
「よくもやってくれたな! お前のせいで、世間から俺がどんな目で見られてるか知ってるか⁉ あの動画のせいでよ! 言ったよな? 次、舐めたことをすればあの程度では済まないぞってよ!」
康介と共に、夏目を拉致し駿の家の使われていない倉庫で暴力を振るい吐かせようとした時のことだ。
だが、暴力を受けた当の本人は怯むこともなく無表情のまま一言。
「貴様で最後だ」
――っ! ふ、ふざけんなよ! 何が最後だ! このまま捕まるわけないだろ!
心内に反論する駿。
夏目は杖をついている。しかし、他の三人も一緒では分が悪い。ここは逃げた方がいい、そんなことを考える駿に夏目がまるで心を見透かしたかのように告げる。
「ここで貴様を捕まえるのは簡単だ。今にもこの場から逃げ出したい貴様の気持ちを汲み取って逃してやる。ただし、これは遊戯だ。この三人から日付が変わるまで逃げ切れば、貴様だけは見逃してやる」
「はあ? 何を言って……」
「鬼ごっこだよ。まあ、鬼ごっこをする気がないと言うなら今すぐにでも捕まえるだけ。で、貴様はどうする? 受けるか?」
――この野郎! 鬼ごっこだぁ? 俺のこと舐めてやがるだろ!
夏目の提案が、馬鹿にしていると思った駿は笑って受け入れる。
「いいぜ! 鬼ごっこ、やってやるよ! 今から、四時間。逃げ切ってやる」
「では、鬼ごっこを始めよう。三分後、鬼を放つ」
そう言い、夏目はメイド服の女からスマートフォンを受け取り時間を測る。
駿は、公園から飛び出しすぐにその姿は暗闇に溶け見えなくなる。
「まあ、この鬼ごっこも長くは続かないだろうけど」
夏目の独り言に三人は何も返すことなく三分が経つ。
鬼ごっこ開始だ。
駿は、夏目たちから逃げ切るためただ闇雲に逃げるのではなく隠れることを選択する。昔、セフレだった女の家へ。今でも、やり取りをしておりここなら見つからないと踏んだのだ。
「おい、開けてくれ! 俺だ! 裕美!」
「もう、なに? って、駿じゃん。何か用?」
「日付が変わるまでいい。俺を匿ってくれ!」
「はあ? 嫌よ」
「は⁉ なんでだよ!」
まさか、断られると思っていなかった駿。ドアを少し開けて中からチェーンをされているため無理やり家の中に入ることもできない。
「だって、駿さ……こう言っちゃなんだけど虐めをしてたんでしょ? あの動画、あたしも見たけど酷すぎでしょ。虐めはないわ。駿とはセフレ関係で楽しかったけど、これ以上はあたしも関わり合いたくないの。だから、他を当たって」
そう言ってドアを閉める。
「ちょっ⁉ ちょっと待て! 俺の話を聞けよ! なあ、裕美ってば!」
ドアを叩くが反応はない。騒ぎを聞きつけ、住民が駿の方を見てコソコソと話すのを見てその場から逃げるように去る。
次に向かったのは漫画喫茶だった。
「ここなら、少しは時間稼ぎができるはず……」
入店し、受け付けで名前を記入したところ店員がその名を見て顔は申し訳なそうに、しかし態度は迷惑そうに言う。
「あの、すいませんがお客様の入店はお断りさせて頂きたいのですが」
「は? どうして?」
「内の店の営業妨害になりかねないので……。他を当たってくれませんか?」
「なっ⁉ なんだよそれ⁉ 俺が何をしたっていう!」
「あの動画に関わる人を受け入れるわけには……」
あの動画、の一言で理解した駿。
店員は、駿の名前を見るやいな入店を拒否する。その理由がやはりあの虐め告白動画だった。
漫画喫茶を追い出され、苛立ちながらも次に向かう場所を思案しているとそこへ二人の男女が駿に近づいてくる。
「……っ。もう追いついたのか!」
「いつまで逃げられるんだろうな。人間」
「もう少し粘ってくれると、お姉さん的には楽しいんだけど」
楽しそうに笑みを作り、目は獲物を狙い追い詰めていく獣のように。行き交う人は誰も、二人に反応を示さない。上半身は何も着ておらず裸で滲み出る雰囲気はやはり恐れを抱かせる。
上は黒ビキニ、下は黒色のパレオで歩けば誰しも視線を送るはずなのに。まるで視界に入っていないかのよう。
――どういうことだ? 何故、誰も気に留めないっ⁉
舌打ちをして二人から逃げる駿。
家に帰ることもできず、身を隠せる場所を探して走る。
「くそったれ!」
走りながら視界にカプセルホテルの看板が目に入りそこへ。今度は、偽名を使って部屋を借りようとする。が、
「あの……失礼ですが」
「な、なんですか?」
「……やっぱり。あの動画の……」
「――っ⁉」
「偽名ですよね? 他を当たってください。貴方を泊めたと分かると、変に噂を立てられて利用客が減られても困りますので。すいませんが……」
「――っ!!!」
カプセルホテルすら入店を断られ沸々と怒りが思考回路と心を支配していく。
行く先々の店やホテルから拒否され行き場を失う駿。
街を歩けば、駿に気づいた行き交う人たちから後ろ指を指され、手に持つスマートフォンで無断に撮影をされる始末。おそらく、自身のSNSにアップするつもりなのだろう。
怒りが募り、逃げること自体おかしいと思い始めた駿は、ちょうど黒いビキニの女と好戦的な男に見つかった。これは好機だと思い込んだ駿。
「鬼ごっこなんてやめだ。俺を、あいつの下に連れて行け」
――俺の手で殺してやる!
二人の男女は一度、顔を見合わせ女は笑い、男はつまらなそうに言う。
「いいわよ~。お姉さんが案内してあげる」
「ちっ。もう終わりかよ」
二人に手招きされた駿は、夏目が待つ場所まで案内される。
大通りから離れ人気のない小さな公園に一人、スマートフォンの画面を睨み叫ぶ一ノ瀬駿。
佐藤康介に何度もメッセージと電話をかけるが一度も彼が応答することはなかった。それどころか、動画サイトにアップされた動画が瞬く間に拡散され、駿の立場も危ういものになっていた。
家族にも動画が知られ、元々家族仲が良いとはいえなかったのがより拍車がかかりついには絶縁を父親から言い渡される。
そして、先日。佐藤康介の虐めの告白動画がアップされ、これもSNSやネットに拡散され虐めに関わった駿を除けた全員が消息不明に。
「くそっ……。こんなはずじゃなかったのに! これも、あの弟が……! このままじゃ、次は俺が……!」
頭を掻きむしり焦る駿。
大磨夏目を呼び出し、連絡が取れないメンバーのことを吐かせる計画を考えた時に感じた不安、恐怖がすぐそこまで来ていることに怯える日々。
今まで、何をしても報復なんてものを受けることも自分の立場が危うくなることもなかった。ましてや、怯える日々を過ごすなんてことは。
「あんな奴に捕まってたまるか! 逃げ切って、この屈辱を必ず晴らしてやる!」
静かな公園に、足音が近づく。顔を上げると先程、あんな奴と暴言を吐き顔を思い浮かべていた人物が目の前に現れる。
黒髪、黒目。右手には杖を持ち、細身で平均よりやや身長が低く目立つ外見でもなければ大人しそうな青年だ。そんな彼のそばには、男女三人がいた。
一人は、こんな時代にメイド服という格好でコスプレか何か、それともメイド喫茶で働く者なのか。月明かりに照らされて黒光りする長髪、均整とれた顔と服の上からでも分かる人間離れした一切の無駄のない身体。
もう一人も女だ。冬が近づく季節に黒いビキニにパレオ姿の金髪。こちらも月明かりで黄金のように輝き毛先が緩くウェーブしている。豊満な胸、見事にくびれた細く引き締まった腰回り、妖艶な笑みを浮かべ男を誘惑する。
最後は男。紺色の髪、纏う雰囲気は見る者に恐れを抱かせ上半身は裸で鍛え抜かれた肉体。吊り目で口から覗く白い牙は人間のサイズの犬歯には見えない。そこから放たれる鋭い眼光に目を逸してしまう駿。
「お、お前っ……!」
顔を見ると怒りが湧き上がり、今にも殴りかかりたい衝動を抑え込む駿。目は吊り上がり、青筋を立て睨みつける。
「よくもやってくれたな! お前のせいで、世間から俺がどんな目で見られてるか知ってるか⁉ あの動画のせいでよ! 言ったよな? 次、舐めたことをすればあの程度では済まないぞってよ!」
康介と共に、夏目を拉致し駿の家の使われていない倉庫で暴力を振るい吐かせようとした時のことだ。
だが、暴力を受けた当の本人は怯むこともなく無表情のまま一言。
「貴様で最後だ」
――っ! ふ、ふざけんなよ! 何が最後だ! このまま捕まるわけないだろ!
心内に反論する駿。
夏目は杖をついている。しかし、他の三人も一緒では分が悪い。ここは逃げた方がいい、そんなことを考える駿に夏目がまるで心を見透かしたかのように告げる。
「ここで貴様を捕まえるのは簡単だ。今にもこの場から逃げ出したい貴様の気持ちを汲み取って逃してやる。ただし、これは遊戯だ。この三人から日付が変わるまで逃げ切れば、貴様だけは見逃してやる」
「はあ? 何を言って……」
「鬼ごっこだよ。まあ、鬼ごっこをする気がないと言うなら今すぐにでも捕まえるだけ。で、貴様はどうする? 受けるか?」
――この野郎! 鬼ごっこだぁ? 俺のこと舐めてやがるだろ!
夏目の提案が、馬鹿にしていると思った駿は笑って受け入れる。
「いいぜ! 鬼ごっこ、やってやるよ! 今から、四時間。逃げ切ってやる」
「では、鬼ごっこを始めよう。三分後、鬼を放つ」
そう言い、夏目はメイド服の女からスマートフォンを受け取り時間を測る。
駿は、公園から飛び出しすぐにその姿は暗闇に溶け見えなくなる。
「まあ、この鬼ごっこも長くは続かないだろうけど」
夏目の独り言に三人は何も返すことなく三分が経つ。
鬼ごっこ開始だ。
駿は、夏目たちから逃げ切るためただ闇雲に逃げるのではなく隠れることを選択する。昔、セフレだった女の家へ。今でも、やり取りをしておりここなら見つからないと踏んだのだ。
「おい、開けてくれ! 俺だ! 裕美!」
「もう、なに? って、駿じゃん。何か用?」
「日付が変わるまでいい。俺を匿ってくれ!」
「はあ? 嫌よ」
「は⁉ なんでだよ!」
まさか、断られると思っていなかった駿。ドアを少し開けて中からチェーンをされているため無理やり家の中に入ることもできない。
「だって、駿さ……こう言っちゃなんだけど虐めをしてたんでしょ? あの動画、あたしも見たけど酷すぎでしょ。虐めはないわ。駿とはセフレ関係で楽しかったけど、これ以上はあたしも関わり合いたくないの。だから、他を当たって」
そう言ってドアを閉める。
「ちょっ⁉ ちょっと待て! 俺の話を聞けよ! なあ、裕美ってば!」
ドアを叩くが反応はない。騒ぎを聞きつけ、住民が駿の方を見てコソコソと話すのを見てその場から逃げるように去る。
次に向かったのは漫画喫茶だった。
「ここなら、少しは時間稼ぎができるはず……」
入店し、受け付けで名前を記入したところ店員がその名を見て顔は申し訳なそうに、しかし態度は迷惑そうに言う。
「あの、すいませんがお客様の入店はお断りさせて頂きたいのですが」
「は? どうして?」
「内の店の営業妨害になりかねないので……。他を当たってくれませんか?」
「なっ⁉ なんだよそれ⁉ 俺が何をしたっていう!」
「あの動画に関わる人を受け入れるわけには……」
あの動画、の一言で理解した駿。
店員は、駿の名前を見るやいな入店を拒否する。その理由がやはりあの虐め告白動画だった。
漫画喫茶を追い出され、苛立ちながらも次に向かう場所を思案しているとそこへ二人の男女が駿に近づいてくる。
「……っ。もう追いついたのか!」
「いつまで逃げられるんだろうな。人間」
「もう少し粘ってくれると、お姉さん的には楽しいんだけど」
楽しそうに笑みを作り、目は獲物を狙い追い詰めていく獣のように。行き交う人は誰も、二人に反応を示さない。上半身は何も着ておらず裸で滲み出る雰囲気はやはり恐れを抱かせる。
上は黒ビキニ、下は黒色のパレオで歩けば誰しも視線を送るはずなのに。まるで視界に入っていないかのよう。
――どういうことだ? 何故、誰も気に留めないっ⁉
舌打ちをして二人から逃げる駿。
家に帰ることもできず、身を隠せる場所を探して走る。
「くそったれ!」
走りながら視界にカプセルホテルの看板が目に入りそこへ。今度は、偽名を使って部屋を借りようとする。が、
「あの……失礼ですが」
「な、なんですか?」
「……やっぱり。あの動画の……」
「――っ⁉」
「偽名ですよね? 他を当たってください。貴方を泊めたと分かると、変に噂を立てられて利用客が減られても困りますので。すいませんが……」
「――っ!!!」
カプセルホテルすら入店を断られ沸々と怒りが思考回路と心を支配していく。
行く先々の店やホテルから拒否され行き場を失う駿。
街を歩けば、駿に気づいた行き交う人たちから後ろ指を指され、手に持つスマートフォンで無断に撮影をされる始末。おそらく、自身のSNSにアップするつもりなのだろう。
怒りが募り、逃げること自体おかしいと思い始めた駿は、ちょうど黒いビキニの女と好戦的な男に見つかった。これは好機だと思い込んだ駿。
「鬼ごっこなんてやめだ。俺を、あいつの下に連れて行け」
――俺の手で殺してやる!
二人の男女は一度、顔を見合わせ女は笑い、男はつまらなそうに言う。
「いいわよ~。お姉さんが案内してあげる」
「ちっ。もう終わりかよ」
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