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第三章
三人目 肉好き悪魔は育てた野菜も好む その三
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その日の夜、リビングで今後のことを話し合う。
橋本刑事は、僕が姉さんの弟で失踪した二人共に何かしら関係があると疑っているのは間違いない。
アスモデウスも、でなければここへアリバイを聞きには来ないだろうと。
「過去に虐めを認めろ、と抗議してたんだから真っ先に疑われるだろうよ。まあ、証拠がなければ意味がないがな」
バアルもそう述べる。
それと少し気になることもある。橋本刑事は、自分の息子が行方不明と知りどうしてあんな風に笑っていられるんだ? 息子が隠れて犯罪行為を繰り返していることを知らないとしても、へらへら笑って平気そうに僕には見えた。
刑事だから、個人の感情は二の次ということだろうか。まあ、僕がそこまで気にする必要はないが。
「主」
「どうだった?」
「やはり、家の近くに車を停めて張り込みをしているようです」
「昼間の時もそうだったが、夜も車を使って張り込みとは。僕がやったという証拠がそんなに欲しいらしい」
「どうしますか? 邪魔をするようであれば、今すぐにでも排除しますが」
「グレモリーの言う通りだ。俺の邪魔をされるのは腹が立つ。いっそのことあの父親と一緒にいた男も纏めて殺した方が楽だぜ。夏目」
バアルが怒りを滲ませ言う。
確かにその方が楽で邪魔をされる心配もない。だが、僕の目的にはあの橋本刑事も必要な人物。死なれては困る。
「バアルの言いたいことも分かるが、あの刑事は殺さない。今、死なれてもらっては困るんだ」
「だったらどうする気だ?」
「上手くいくかは分からないが考えがある」
「あ? 考えだ?」
「ああ。アスモデウス」
「何かしら~」
呑気に、グレモリーが淹れてくれた紅茶を啜り雑誌を読んでいたアスモデウスに声をかける。アスモデウスの化ける能力を使わせてもらおう。
「僕に化けることはできるか?」
「それくらい簡単よ~」
僕の問いに笑顔で答える。
化けるのが上手いアスモデウスなら問題はないだろう。あとは、
「復讐実行日、グレモリーはこの家で僕に化けたアスモデウスと共にいてくれ」
「かしこまりました」
「で、アスモデウスとグレモリーは張り込みをしているであろう刑事にわざと、姿を見せつけてくれればいい」
あの刑事たちを逆に利用してやろうじゃないか。僕を見張っていた間に、三人目が失踪したとなれば僕にかける疑いが少しは晴れるだろうから。
「バアルは、僕と自分自身を不可視に。そのあとはバアルのお待ちかね、復讐の時だ」
「ははっ! やっとか! その時が楽しみだな!」
僕の復讐のため、使われてもらうぞ無能な刑事。
作戦を考えた翌日、僕はグレモリーと一緒に買物へと来ていた。今晩は焼き肉だ。バアルが復讐の実行日の前日には肉を食いたい、と提案してきたためこうして必要な材料の買い出しへ。
近所のスーパーへ趣き、牛肉と鶏肉やソーセージ、菜園していなカボチャやとうもろこし、焼肉のたれを買う。
「主、尾行されています」
「あの二人は、暇なのか?」
「そこまでは……。ですが、何かしらの証拠を掴みたいようです」
「そうか。まあ、そのまま尾行でも何でもさせておけばいい」
「分かりました」
買い物が終わり帰宅。すぐさまグレモリーが下ごしらえを。育ている野菜と買った野菜を切り分け、バアルはプレートを用意。僕とアスモデウスは、ソファーで寛ぐ。
用意ができればさっそく肉や野菜を焼いていく。
「おい、グレモリーそっちの肉を寄越せ」
「肉ばかり焼かないで、野菜も焼いたらどうですか。バアル」
「いいじゃねえか。肉も焼かないと食いもんがねえんだから」
「夏目ちゃん、レタスとトマトも巻いて食べると美味しいわよ~。お姉さんがしてあげる」
「ああ、助かる。あん、もぐもぐ。肉、柔らかくて美味い」
肉には、グレモリーが柔らかくなるよう魔力を込めているらしく、あと肉の旨味も閉じ込め食べやすいし美味い。
肉はバアルが担当、野菜はグレモリー、皿に盛りつけや食べやすいように野菜に巻いたりするのはアスモデウス。
それぞれ、焼き肉を楽しむ面々。
とそこへ、バアルが突然に声を上げる。
「ああ! 今、いいこと思いついたぞ!」
「口に物が入っている時は喋らないでください。汚いですよバアル」
「グレモリー、硬いこと言うな。それよりもだ、今度の女は確か夏目に怪我を負わせた女だよな?」
「そうだな。それがどうかしたのか? あ、アスモデウス。カボチャとソーセージ取ってくれ」
「は~い。どうぞ、夏目ちゃん」
「ありがとう」
自分で焼いた肉にかぶりつき、引き千切りながら瞳の奥をギラつかせ口の端を吊り上げる。
「全身の骨を折る方法だよ。それも、夏目にしたことと同じやり方でだ」
「食事中にする話ではないでしょう、バアル! 少しは時と場合を考えなさい!」
「くくっ。どんな顔で泣き叫び、醜い姿でどんな風に助けを乞うのか、恐怖と絶望の前であの女はどんな行動にでるのか楽しみだな!」
「バアル、少し口を閉じなさい!」
バアルの口の悪さにグレモリーが怒る。しかし、バアルの独り言は止まらない。
それを僕は無視して、目の前の肉と野菜に夢中。
うん、肉も野菜も美味いな。アスモデウスが、食べやすいように野菜を巻いてくれるし、食べたいやつ取ってくれるし。
珍しく、食卓が騒がしい夜だった。
橋本刑事は、僕が姉さんの弟で失踪した二人共に何かしら関係があると疑っているのは間違いない。
アスモデウスも、でなければここへアリバイを聞きには来ないだろうと。
「過去に虐めを認めろ、と抗議してたんだから真っ先に疑われるだろうよ。まあ、証拠がなければ意味がないがな」
バアルもそう述べる。
それと少し気になることもある。橋本刑事は、自分の息子が行方不明と知りどうしてあんな風に笑っていられるんだ? 息子が隠れて犯罪行為を繰り返していることを知らないとしても、へらへら笑って平気そうに僕には見えた。
刑事だから、個人の感情は二の次ということだろうか。まあ、僕がそこまで気にする必要はないが。
「主」
「どうだった?」
「やはり、家の近くに車を停めて張り込みをしているようです」
「昼間の時もそうだったが、夜も車を使って張り込みとは。僕がやったという証拠がそんなに欲しいらしい」
「どうしますか? 邪魔をするようであれば、今すぐにでも排除しますが」
「グレモリーの言う通りだ。俺の邪魔をされるのは腹が立つ。いっそのことあの父親と一緒にいた男も纏めて殺した方が楽だぜ。夏目」
バアルが怒りを滲ませ言う。
確かにその方が楽で邪魔をされる心配もない。だが、僕の目的にはあの橋本刑事も必要な人物。死なれては困る。
「バアルの言いたいことも分かるが、あの刑事は殺さない。今、死なれてもらっては困るんだ」
「だったらどうする気だ?」
「上手くいくかは分からないが考えがある」
「あ? 考えだ?」
「ああ。アスモデウス」
「何かしら~」
呑気に、グレモリーが淹れてくれた紅茶を啜り雑誌を読んでいたアスモデウスに声をかける。アスモデウスの化ける能力を使わせてもらおう。
「僕に化けることはできるか?」
「それくらい簡単よ~」
僕の問いに笑顔で答える。
化けるのが上手いアスモデウスなら問題はないだろう。あとは、
「復讐実行日、グレモリーはこの家で僕に化けたアスモデウスと共にいてくれ」
「かしこまりました」
「で、アスモデウスとグレモリーは張り込みをしているであろう刑事にわざと、姿を見せつけてくれればいい」
あの刑事たちを逆に利用してやろうじゃないか。僕を見張っていた間に、三人目が失踪したとなれば僕にかける疑いが少しは晴れるだろうから。
「バアルは、僕と自分自身を不可視に。そのあとはバアルのお待ちかね、復讐の時だ」
「ははっ! やっとか! その時が楽しみだな!」
僕の復讐のため、使われてもらうぞ無能な刑事。
作戦を考えた翌日、僕はグレモリーと一緒に買物へと来ていた。今晩は焼き肉だ。バアルが復讐の実行日の前日には肉を食いたい、と提案してきたためこうして必要な材料の買い出しへ。
近所のスーパーへ趣き、牛肉と鶏肉やソーセージ、菜園していなカボチャやとうもろこし、焼肉のたれを買う。
「主、尾行されています」
「あの二人は、暇なのか?」
「そこまでは……。ですが、何かしらの証拠を掴みたいようです」
「そうか。まあ、そのまま尾行でも何でもさせておけばいい」
「分かりました」
買い物が終わり帰宅。すぐさまグレモリーが下ごしらえを。育ている野菜と買った野菜を切り分け、バアルはプレートを用意。僕とアスモデウスは、ソファーで寛ぐ。
用意ができればさっそく肉や野菜を焼いていく。
「おい、グレモリーそっちの肉を寄越せ」
「肉ばかり焼かないで、野菜も焼いたらどうですか。バアル」
「いいじゃねえか。肉も焼かないと食いもんがねえんだから」
「夏目ちゃん、レタスとトマトも巻いて食べると美味しいわよ~。お姉さんがしてあげる」
「ああ、助かる。あん、もぐもぐ。肉、柔らかくて美味い」
肉には、グレモリーが柔らかくなるよう魔力を込めているらしく、あと肉の旨味も閉じ込め食べやすいし美味い。
肉はバアルが担当、野菜はグレモリー、皿に盛りつけや食べやすいように野菜に巻いたりするのはアスモデウス。
それぞれ、焼き肉を楽しむ面々。
とそこへ、バアルが突然に声を上げる。
「ああ! 今、いいこと思いついたぞ!」
「口に物が入っている時は喋らないでください。汚いですよバアル」
「グレモリー、硬いこと言うな。それよりもだ、今度の女は確か夏目に怪我を負わせた女だよな?」
「そうだな。それがどうかしたのか? あ、アスモデウス。カボチャとソーセージ取ってくれ」
「は~い。どうぞ、夏目ちゃん」
「ありがとう」
自分で焼いた肉にかぶりつき、引き千切りながら瞳の奥をギラつかせ口の端を吊り上げる。
「全身の骨を折る方法だよ。それも、夏目にしたことと同じやり方でだ」
「食事中にする話ではないでしょう、バアル! 少しは時と場合を考えなさい!」
「くくっ。どんな顔で泣き叫び、醜い姿でどんな風に助けを乞うのか、恐怖と絶望の前であの女はどんな行動にでるのか楽しみだな!」
「バアル、少し口を閉じなさい!」
バアルの口の悪さにグレモリーが怒る。しかし、バアルの独り言は止まらない。
それを僕は無視して、目の前の肉と野菜に夢中。
うん、肉も野菜も美味いな。アスモデウスが、食べやすいように野菜を巻いてくれるし、食べたいやつ取ってくれるし。
珍しく、食卓が騒がしい夜だった。
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