あくまで復讐の代行者

ゆー

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第三章

三人目 肉好き悪魔は育てた野菜も好む その一

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 復讐を始めて一ヶ月半。

 今日は珍しく朝早く目が覚め、縁側でバアルを観察する。バアルは、自分の手で育ている野菜に水をあげご機嫌。

「ん? おう、夏目。今日は早いんだな。夢見が悪かったのか?」
「いや。単に目が覚めただけ」
「そうか。ああ、そうだ。そろそろ、俺にも贄を寄越せ。グレモリーとアスモデウスに先を越されたままなのは気に食わん」
「…………」

 少々、口調が荒いが家庭菜園が好きでホースを片手に顔を僕に向け言うバアル。

 バアルは、人間の血肉を好む。特に若い女の肉は好物だと自分で言うほどに。復讐相手の中に残っている女はあと一人。バアルに捧げるのもいいか。

 グレモリーは、バアルが育てる野菜を使ってサラダを作り朝食の準備、アスモデウスはまだ帰っていない。

「おい、聞いてんのか? 夏目」
「聞いてるよ。残りは三人。そのうち、一人をバアルに任せる」
「そいつは女だろうな?」
「ああ。女だよ」
「なら、文句はねえよ。で、いつにする?」
「それはまだ決まっていない」

 まずは情報収集が先だ。そこはグレモリーに頼むしかない。僕が動けば、間違いなくあの刑事が首を突っ込んでくるだろう。
 それはそれで面倒だ。

 と、そこへ。

「主、朝食の用意ができました。バアルも」
「分かった」
「今日の飯はなんだろうな」

 テーブルの上にはバアルが育てたミニトマト、キュウリ、レタス、人参にコーンのサラダ。だし巻き卵、味噌汁、白米、アスパラ肉巻きが並ぶ。

 バアルが育てる野菜は他にもナス、じゃがいも、さつまいも、小豆もやし、豆苗、苺と豊富だ。それも全て自身の魔力を肥料にして育てるため甘く瑞々しく、育ちが良いという。本当に魔力って便利だな。

 朝食を終え、食後のお茶時間。

「グレモリー」
「はい、主」
「山内真理子について調べてくれ」

 バアルに任せる前に下調べだ。そう思い、グレモリーに言うと得意げにふふっ、と笑みをこぼす。

「それならもう調べてあります」
「そうなのか?」
「はい。そろそろ、バアルが俺にも贄を寄越せ、と言うのは分かっていましたから。そうなると、復讐相手は女になります。残る女は、山内真理子しかいません」

 バアルの思考回路を完全に読んでる。
 バアルは、上出来だ、などと上から目線。

「その上から目線、やめなさい。別に貴方のためではありません。これは、主のためです」
「はいはい。いいから、調べたこと話せよグレモリー」
「まったく……。それでは――」

 山内真理子、現在は大学二年生。彼氏はいないようだが、複数の男と遊んでいる様子。アルバイトはせず、親から貰うお小遣いで毎日のように遊び倒し、ブランド物のバッグやアクセサリーを周囲に自慢するかの如く身に着けているとか。

 確か、父親が高校の理事長だったな。金もあれば甘やかされて育ったか。それに、鈴宮にも金を貢がせていたようだし。

「金と男と、ブランド物で固める女か。恐怖や絶望に染まった時の顔がどんなものなのか楽しみだな。くくっ」

 グレモリーからの情報で、笑みを浮かべ口の端を吊り上げて何をするか考えるバアル。

「ねえねえ! お姉さん、面白いものを見つけたのよ~!」

 と、帰ってくるなりリビングに駆け込むアスモデウス。
 僕らの視線は彼女に向く。

「何を見つけたと言うのですかアスモデウス?」
「面白いものだあ?」
「アスモデウスが手に持っているのってスマホだよな?」
「そうよ~、夏目ちゃん。どうやら、警察も本格的に動き出したみたいなの~。ほら、このネット記事」

 そう言って、手に持っていたスマホの画面を僕に見せるアスモデウス。その言葉通り、警察が事件解明に動き出したようだった。
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