あくまで復讐の代行者

ゆー

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第一章

一人目 ようやく始められる復讐 その四

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 椅子に腰かけ、目の前で行われる行為をただ黙って見つめる。
 虐めの罪を告白させたあと、グレモリーによって吊るされたままの鈴宮の裸体に蜂蜜のような金色の蜜を全身に塗りたくる。

「や、やめっ! ひゃあっ……!」

 筆で塗られるからだろうか、鈴宮は時折に声を上げ身じろぎ顔を赤くする。

「このくらいでしょうか」

 手の平に魔法陣を発動させ蜜の入った壺と筆を仕舞うグレモリー。そして、足元から手の平に発動させた魔法陣が広がり赤く光る。

「な、なに……?」

 鈴宮も見たことのない光景に戸惑う。

 あれは……。グレモリーが使役する使い魔の召喚魔法陣か。なるほどな、蜜を全身に塗りたくったのはこのためか。

 心内で関心する。復讐のために悪魔を喚んだが、僕自身は事故の後遺症で彼らに僕が望む復讐ができない。杖なしでは立っていられず、左腕はほとんど力が入らない。
 だからこそ、悪魔に復讐の代行を頼んだ。その内容は全て、グレモリーたちに任せている。

「顕現なさい」

 一言、そう呟くと光る魔法陣から無数の獣が低く唸り声を上げながら姿を見せる。
 狼の姿をした獣、獅子の獣、虎の獣とその数は九匹。

「う、嘘でしょ……! ま、待って! お願い、何でもするから許して!」

 本能で獣に喰われることを理解したのか、鈴宮はグレモリーに懇願する。その上で、逃げ出そうと暴れるが枷と鎖はそれを許さない。虚しく、音が鳴るだけでビクともしない。

「私に懇願しても無意味ですよ。主がお許しにならない限り、貴方はこの部屋……いえ、この空間からは出られませんから」

 グレモリーの言葉の意味が分からず言葉を失う鈴宮。グレモリーが無駄なら、と考えを変え僕の方へ言葉を投げかける。

「お願い! 何でもするからこの人を止めてよ! お金が欲しいなら貢いであげる。性欲処理がしたいなら、わたしがいくらでもしてあげるからね! 他にもして欲しいことがあるなら全部してあげるから!」

 生理的に受けつけられない気持ち悪い笑顔と媚びる声が僕の癇に障る。
 僕なら、その媚びる態度でどうにかなるとでも思っているのか。貴様のような中身もクズで、僕から大切なものを奪う女など論外だ。

「その辺の男ならそれで良かったのでしょうけど。しかし、私の主に目の前で媚を売られるのは実に不愉快ですね。お前たち、いきなさい」

 僕の心内を察したのと、言った通り不愉快だったようで僕の言葉を待つより先に使い魔に命じるグレモリー。
 獣たちは、待ての状態で主の命で我先に鈴宮に飛びつく。鋭く太い牙と爪を肉体に突き立て噛み千切らんと一心不乱に頭を揺らす。

「ああああああああああああっ! いいいいたたたたあああああああいいいいいいいいっ!」

 この部屋に来て一番の叫びを上げる鈴宮。鮮血が周りに飛び散り、獣が肉を貪り興奮する鼻息、口からもれる息遣い。部屋は血の臭いが充満する。

 椅子に座ったまま、肉を噛み千切られ骨や臓物が飛び出し、モザイクが必要な程のグロテクスな光景を見ても動じない僕の心。

「いだいっ! いだいっ! いだぁぁああいいいいっ! ゴブッ……!」

 血を吐き出し、涙を流し痛いと連呼する鈴宮。握りしめた拳に爪が食い込んだのだろ、吊るされた手の平から血が一筋、流れていくのを獣は臭いで感じ取り長い舌で舐め取らんとよじ登る。

「ウブッ……! オエッ……。ひっ、いだっ、あああああああああああああっ!」

 これ以上はショック死しそうだな。まだ、死なれては困る。もっと苦痛と絶望を与えないと僕が満足できないだろ。

「グレモリー。死なせるな」
「はい、主」

 グレモリーに命じると、鈴宮の身体に魔法陣が浮かび上がり肉体を瞬時に再生させる。そして、また蜜を塗り獣に与えるを繰り返す。終わらない獣への餌の役目。

「も、もう……嫌、許して……お願い……」

 痛みで思考がおかしくなる程、与え続け鈴宮はただ許しを求めるだけに。虚ろな目で、抵抗する気もなくなった。
 だが、これで終わらない。いや、終わらせない。
 獣への餌が終われば今度は、床に寝かせると四肢をそれぞれ捻り引き千切っていく。

「いっ⁉ いやあああああああああああっ! やめて! 引っ張らないで! 痛いの! 痛いのぉぉおおおおおおおおっ!」

 四肢に浮かび上がる赤い魔法陣が捻り続けあらぬ方向を向き、皮膚を引っ張り続け血が吹き出し、限界を超えた肉と血管や神経が音を鳴らし千切れていく。

 鈴宮はあまりの激痛に、頭を左右に振り乱し泣き叫ぶ。これでもかというくらいに目を開き、大口で叫び喉を枯らす。

「ああああっ、いいいいいいっ、んんんんっ!」

 鈴宮の周りは血の海が生まれ、獣の召喚を終えたグレモリーが次に召喚した人型のキメラが血を啜る。
 手はタコ、足は毛に覆われた鹿、身体は人のそれは無心に血を啜り、鈴宮の千切れた断面にも吸いつく。次第に鈴宮の身体は、干からびていき最期はキメラに殺される。

 水分も血も吸い尽くしたキメラは役目を終え消えていく。
 死体となった鈴宮に近づくグレモリー。

 何をする気だ?

 グレモリーの行動を見守る中、鈴宮の死体に手をかざし靄のようなものが身体から出てくるとそれを口へ運ぶ。それを飲み込むグレモリー。

 何かよく分からないものを喰らう姿を黙って見守る。
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