あくまで復讐の代行者

ゆー

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第一章

一人目 ようやく始められる復讐 その二

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 ある程度の情報をグレモリーから手に入れ、僕は次の行動へ移す。鈴宮に接触だ。

 グレモリーを連れて、鈴宮が一人でいる時を狙う。大学の講義が終わったのだろう、彼女が一人で大学を出て自宅へ向かう途中には公園がある。そこに差し掛かった頃合いを見て声をかける。

「初めまして、鈴宮奈緒美さん」
「は? えっ、誰?」

 唐突に声をかけられ、警戒の眼差しで僕とグレモリーを見る。それに構わず、姉さんのことを問いかける。

「大磨秋乃。知らないわけないよな?」
「はあ? いきなり何よ? その人とわたしに何の関係があるわけ? 意味分かんないんだけど」

 こいつ……! 関係がない、わけないだろ! それとも何か? 自分がしたことも、姉さんのことも、何もかも忘れたとでも言いたいのか……!

 握る杖に力が入る。今すぐにでも、この女の顔に一発でもいいから殴ってやりたい! いや、思い出すまで殴り続けてやりたい!

「主、それはいけませんよ。手を怪我してしまいますし、何よりその役目は私たちにお任せを。ですから、怒りを沈めてください」
「……ちっ」

 グレモリーにたしなめられ深呼吸を。そして、もう一度だけ彼女に問う。

「忘れたか? 同じ高校に通っていた同級生を」
「あっ。もしかして、自殺しちゃった大磨さんのこと?」
「……ああ、そうだよ」

 この女の言葉一つ一つが癇に障るな! なにが、自殺しちゃった、だ! 貴様らがそうしたんだろうが!
 ようやく思い出したようで、確かにいたわ、大磨さん。と軽い反応を見せる。

「それで? 今更、大磨さんのことをわたしに訊いてきて何よ」
「……お前、下着姿を撮ってそれを使って脅迫、恐喝しただろ。グループメッセージ、SNSに晒されたくなかったらお金を寄越せって。虐めてたんだろ」

 姉さんの日記に書かれていた。鈴宮奈緒美に脅迫と恐喝をされていると。一週間に一度、酷い時は三日に一度のペースで女子トイレまたは誰も来ない校舎裏で。

 言い逃れなんてさせない。それ相応の罰は受けてもらうぞ。

「くだらない」

 僕の言葉に、鼻で笑って言い放つ。

「虐め? そんなことしてないし。勝手に自殺して、原因がこっちにあるかもって、先生とか色んな人がわたしにどうでもいいことばっか聞いてきて、ずっと同じ質問に答えるこっちの身にもなってよね。ほんといい迷惑だわ。自殺するなら、迷惑がからないとこでやってよね。そのせいで、わたしにも被害被るのよ」
「…………っ」

 こ、このくそ女! 言うことがそれか!

 認めない、それどころか迷惑とまで言い切る。姉さんが受けてきた痛みも何もかもを、この女にとっては迷惑の一言で片づける。
 殺す。姉さんが受けた痛み以上の苦痛と絶望、許しも希望も何もかも奪って地獄へ叩き落としてやる……!
 僕が感じる恨み、憎しみ、憎悪、殺意の全て込めて殺す。

「グレモリー」
「はい、主」
「お前が創り出した、へ連れて行け」
「仰せのままに」

 グレモリーに命じると、僕らの会話の内容が分からない鈴宮は首を傾げ瞬きした一瞬で間合いを詰められ後退った。

「えっ⁉ な、なに⁉」
「眠りなさい」
「はあ⁉ 何言って……」

 グレモリーの手が、鈴宮の目を覆い視界を塞ぐと身体は力が抜けたのか、膝から崩れ落ちその場に倒れ込む。

「丁寧に運ぶ必要はない」
「分かりました」

 倒れ込む彼女のお腹に腕を通し、軽々と持ち上げるグレモリーはそのまま何もない空中に手を伸ばす。すると、そこに見たことのない赤い文字と魔法陣が浮かび上がる。

 ゆっくりと回転するそれは、徐々に空間を穿ちその先は暗く何も見えない。グレモリーは、腰を曲げ一言、どうぞと。
 僕が先に入り、グレモリーもそのあとに続く。
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