空白の場所

多田 えみ

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2日目

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 家に帰るって決めたはいいけどどうやって帰ろうかな…

 うーん…
 多分この部屋にも、家の中にも監視カメラとか小型マイクみたいなのはあるよね…?

 この部屋から玄関出てってなると難しいなぁ。

 窓から??
 音でバレちゃうよね。
 ものは試しでやってみようかな…。

 部屋にあったクローゼットの中には私が持っていた服と全く同じものが揃ってる。
 動きやすさ重視で、Tシャツとパーカーにジャージ生地のズボンというとても身軽で動きやすい服装をチョイスしたけど、なんかすごい部屋着感あるなぁ…。

 緊張しながら部屋を開けると惣一郎は部屋の前には居なさそう。

 よし、今だ!!

 なるべく足音を立てないように、玄関からそっと出る。

 そこからは全力疾走だ。



  ───────


 ハァハァ……
 何年ぶりに全力疾走したんだろう?駅に着いたけど足がもう重いし、肩で息をしてるけどなかなか呼吸が落ち着かないや。
 やっぱり運動ちゃんとしないとダメだな。

 鞄、渡して貰えてて良かったな。
 惣一郎さんの家を出る前に電源は切ったしそのまま定期で職場の最寄りまで行って、近くのホテルに泊まって出勤しよう。

 だ、大丈夫だよね??もうバレてるのかな?追ってこられちゃうのかな?それはそれで後が怖いな。

 行動に移したはいいけど怖さが勝つからかな?
 手が震えてきた……。

 小刻みに震える手を交互に擦りながら改札をめざして歩く。

 もしバレてて、追いかけてて来てたとしても、ちゃんと事情は話そう。わかってくれるはず!

 そんな事を考えてると職場近くのホテルに着く。

 受付を済ませ、部屋の鍵を貰って部屋に行こうとすると、後ろからガシッと腕を捕まれ、腕を回される。

「えっ?」

『すみません。その部屋、キャンセルしてもらえますか?』

 もうバレて追いつかれちゃったの!?
 なんで居場所までバレてるんだろう…
 携帯の電源は切ってたのに……。

 惣一郎は客室のキャンセルを済ませると真綾の腰をしっかりと持ったまま2人は車に向かった。


 ────────

 車に乗ると、惣一郎は泣きそうな、でも怒ってるような顔をしながら

『なんで僕から逃げたの?僕の気持ち全然伝わってないんだね。ちゃんとわかって貰えるようにするね。』

 真綾にシートベルトをつけながら手には手錠をアシストグリップにつけ車を走らせた。

「逃げたんじゃないよ。仕事のっ」

『仕事がなに?職場の人に助けてもらおうと思ったの?部屋見たら怖くなったの?だから逃げたの?契約書サインしたよね??僕の許可なく家の外に出ちゃダメだよね?真綾にはちゃんとわかってもらわないといけないね。』

「待って!違うっ!誤解してる!!」

 こんな怒り方するとは思ってなかった……!!
 ちゃんと伝えなかった私が悪いけど、こんなに声を荒らげるなんて思ってもなかったから……

 真綾は惣一郎の怒り方が怖く、泣きながらガタガタ震えていた。

『誤解?現に僕に黙って家を出てホテルに泊まろうとしてたよね?わかって貰えたと思ってたのに。』

「惣一郎さん、お願いだから私の話聞いて…!!」




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