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17.恋の病に効く薬*

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 それからオレたちは、二人とも空っぽになるまでセックスをした。宣言どおりサシャは何度もオレのケツに注いでくれて、そのたびにオレはイってしまった。オレは何も出すものがなくなった後も、イきつづけた。おかげでもうヘトヘトだ。
 この部屋で目覚めたのは早朝だったはずなのに、窓から見える空はすでに夕焼け色に染まっていた。

 普通に走ったら絶対オレの方がサシャより速い自信があるし、持久走でも負けない自信がある。だけど、セックスになったらサシャのほうが持続力があるのはいったい何故なんだろう……とても不思議だ。
 いつもオレのほうが先にへばってしまうのは、なんか勿体ない気がする。今後は、もっとトレーニングを増やして体力をつけよう。うん、そうしよう。だけど、今は……

「あー、もうゆびいっぽんうごかせねー……」

 サシャのベッドの上に転がって呟いたら、ガラガラの酷い声が出た。
 ちなみに、オレの腕を戒めていた縄は解かれている。もともと猛獣を捕獲するための縄にサシャが強化魔術を施していたらしい。どおりで何をやってもビクともしないわけだ。

「これで、先輩は私から一生離れることができなくなってしまいましたね」
「ああ、そーだな」

 サシャのことが好き過ぎて、離れるとか、最初から考えちゃいないんだが。むしろ、どうやったらずっと側に居れるのかってことばっかり考えていた。
 今回は、『絶対に恋が叶う花』をサシャからもらうことはできなかった。だけど、花から作られた媚薬をもらうことはできたので、結果的に「恋は叶う」ということでいいのだろうか。

 媚薬をサシャが口に含んだ時、オレはそれをサシャが飲もうとしているのだと思った。オレの身体に満足していなくて、他に抱かれたい相手がいるのかと。単に、口移しで飲ませようとしていただけだったのだけど。
 あの時は本当に焦った。他の誰かにサシャを取られるとか、考えられない。

 そんなことを考えながら、ぼんやりとベッドに腰かけているサシャを見上げたら、サシャもオレのことをじっと見ていた。

「ん……なんだ?」
「先輩が花を探してるって知ったときの私の気持ちがわかります? いったい誰に渡そうとしていたんでしょうね? でも、先輩はもう私のものですから。一生離しませんよ」
「あっ! そうだ、花だ!!」

 危ない危ない。忘れるところだった。
 慌ててベッドから降りようとしたが、身体を起こそうとした腕がプルプルと震えて、べシャッとその場に潰れただけだった。完全に腰が抜けてるわ、これは。
 やっぱり明日から筋トレをしよう。そして、もっと体力をつけよう。

「あー……サシャ、すまん。ちょっと、オレのジャケットの胸ポケット見てもらってもいいか?」
「いいですよ」

 オレの言葉にサシャが立ち上がって、イスの背もたれに掛けられたジャケットを手に取る。そして、胸ポケットから取り出したのは……

「へえぇ、ポケットの中に入れっぱなしだったけれど、時間になったら咲くんだな」
「先輩……これは……」

 サシャが取り出したのは、『絶対に恋が叶う花』だった。
 オレが例の花を探していることは、サシャには秘密にしていた。植物を操ることができるサシャのことだから、花が咲く場所のことは知っていたかもしれない。だけど、オレは自力で花を見つけて、サプライズでプレゼントして告白するつもりだったのだ。
 花を探しているのはバレてしまっていたようだけど、どうやらオレが日の出とともに学園内を探し回っていたことも、無事、花を見つけていたこともサシャは気付いていなかったらしい。
 オレはイタズラが成功した気分になって、にんまりと唇の端を上げた。

「ああ、実は……」

 ベッドに転がったままでは格好がつかないけれど、せっかくサシャに花を渡せたんだ。この機会に告白を……と思っていたのに。

「え。さっきのが、そんなにヨかったんです? 媚薬のお替りを作って欲しいんですか? まだ薬品が残っているので、しばらく待ってもらえれば作れますけれど……」
「違うわっ!!」

 これ以上ヤったら死んでしまうわ。

「つーか、二人とももう空っぽで、勃つモノも勃たねーだろーが!!」
「それなら、精力剤も必要ですね。確か材料は手元に揃っているはずだから……」
「ああああっ……!!」

 オレが告白をする間もなく、サシャは花びらをブチブチと千切りながら、何やらブツブツ言っている。
 態度ですでに伝わっているとは思うけれど、今まで言葉にしたことがないから、今日こそは花をプレゼントしてサシャに「好きだ」と伝えたかっただけなのに……!!

「次の薬を作ってる間、好きな植物と遊んで待っていてくださいね。どのコにします?」

 室内に置かれていた観葉植物が、サワサワと動きだす。
 その中には、最初にサシャとセックスをしたときに使われたツタ植物もあって……

「要らん!! 植物なんかより、サシャのほうがずっといい!!」
「そうですか。それじゃあ、身体からでもいいので、私のことを好きになってくださいね」
「ちょ、そうじゃない。サシャ!! 話!! まずは話を聞いてくれ……!!」

 好きなのは身体だけじゃないと伝えられるのはいつになることやら。


 おわり
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