上 下
4 / 18

4.サシャの部屋*

しおりを挟む
 オレが連れて来られたのは、寮の一室だった。通常、学生寮は二人部屋なのだが、ここは個室のようだ。荷物はあまりなく、備え付けの棚に本が少し入っているだけだ。

「ここは……?」
「私の部屋です」

 サシャの部屋!!
 今朝、一目惚れしたばかりの相手の部屋に!!!! 今、オレは来ている!!!!!!
 その事実に興奮してしまって、心臓が早鐘を打っただけでなく、チンポがピクンと反応した。あ、やばい……これ以上興奮すると、また射精しイってしまいそうだ。
 だけど、今、オレがサシャの部屋に来ていて、しかもベッドに寝かされているという事実は揺るがない。これ以上ない幸運をしっかりと満喫しておこうと、オレは大きく息を吸い込んだ。そうすれば、少しでも多くサシャの成分を吸収できるんじゃないかと思ったからだ。
 しかし、部屋の中は新しい家具の匂いでいっぱいだった。
 そうだ。サシャは今朝この学園に入学してきたばかりだ。もしかしたら、サシャがこの部屋に入ったのは今日が初めてかもしれない。どんなに早くても、昨日か一昨日くらいだろう。
 盛大な空振りをして、オレは少しだけ肩を落とした。

「ところで、サシャはなんであんなところに……?」

 最初は、上級生たちに無理矢理あの場所に連れて行かれたのだと思っていた。
 だけど、彼だけツタ植物に襲われていなかったこととか、あまつさえオレに絡みついたツタを解除してくれたりといったことを鑑みれば、あのツタ植物を操っていたのはサシャではないかという気がしてきた。

「この学園には珍しい生物が沢山住んでいると聞いています。それで、スライムがいる場所を教えてもらっていたのです」
「あ……、そ」

 校内でスライムを見ることはないが、確かにあの森の中であればスライムは沢山居る。

「ちょっと実験に使いたかったんですよね。だから、親切にも声を掛けてくださった方に案内をお願いしたのですが……」

 知らない森に一人で突撃するのは無謀だ。だから、誰かに道案内を頼むというのは理に適っている。だけど、それならオレが案内してあげたのに。
 サシャと二人で手を繋いで森でデートだなんて!! なんて心が弾むシチュエーションなんだ!! 想像したら、またチンポがピクンと反応してしまった。どうかサシャにはバレていませんように。
 オレはそう祈りつつ、上級生たちに先を越されて、その美味しい状況を逃してしまったことに唇を噛んだ。

「……あの広場についたら、急に『案内料だ』とか言って、私に不埒なことをしようとしてきたんですよね」
「なんだってっ!?」

 あ、叫んだら、ちょっとだけチンポの先から精液が出ちゃったかもしんない。やばいやばい。
 オレの下着もズボンも、ツタ植物が出した粘液とかオレの精液ですでにぐちゃぐちゃだから、今更そこにちょっとくらいザーメンが追加されても、今更かもしれないが……
 いや、でも今はオレのパンツのことよりも、サシャのことが心配だ。

「あいつら、絶対にブチのめしてやる……!!」

 なんであの場で一発ずつ殴っておかなかったんだと後悔するが、オレ自身がすぐにそんな状況ではなくなってしまったことを思い出して、顔と股間に熱が集まる。

「ああ、ご心配なく。因果応報ということで、皆様にはしっかりご自身の身体で気持ち良くなっていただきましたので」
「あ……あの植物は、やっぱり……」

 気持ち良く……ということは、やはりあの植物を操っていたのはサシャだったのか。

「私の魔力は植物と相性が良いみたいで。大抵の植物は、魔力を流せば操ることができるんですよね」
「ほお……!」

 オレには魔力がないので、そのあたりの仕組みは全くわからない。ただ、なんかすごく便利そうだなと思った。

「そして、森で操ったツタの樹液には、催淫効果があるんですよね」
「さいいん……こうか……」

 森でツタに粘液を塗りたくられてから、ヘンな気持ちになってしまったことを思い出す。

「それがどんな効果は……リュドヴィグ先輩も、身に覚えがあるでしょう?」

 ギシリ、とベッドが揺れた。オレが寝かされているベッドの上に、サシャが乗りあがってきたのだ。

「だって、森からここに帰ってくるまでの間に、三回も射精していましたもんね」
「なっ……なんで、それを……!!」

 サシャの腕に抱かれながら股間にスライムを乗せられて身体を揺すられたら、なんか段々気持ち良くなってきてしまったのだ。それで、オレはなんとか声を出さないように全力で歯を食いしばりながら、こっそりと射精した。サシャの指摘した通り、三回もだ。まさか、それがしっかりバレていただなんて。羞恥に身体が火照る。
 しかも、それでムラムラは少しは収まるかと思っていたのに、そんなことは全然なかった。実はまだ身体の奥を快感の小さな炎でチロチロと炙られているような、妙な感覚が残っている。

「私の腕の中でビクビクと身体を震わせるリュドヴィク先輩は、すごーく可愛かったですよ」
「かわいい……」

 今、サシャはオレのことを可愛いと言っただろうか。
 いやいや、いやいや。そんなハズはない。可愛いとか綺麗とかいった言葉は、サシャのような存在のためにあるものだ。
 きっと、オレを運んでいたサシャが可愛かったとかそういうことが言いたかったに違いない。きっと、そうだ!! うーん、大男を軽々と運ぶサシャ……可愛いぞ、絶対に、可愛い!! 誰がなんと言おうと、オレは可愛いと思うぞ!!


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?

寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。 ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。 ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。 その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。 そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。 それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。 女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。 BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。 このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう! 男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!? 溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

23時のプール 2

貴船きよの
BL
あらすじ 『23時のプール』の続編。 高級マンションの最上階にあるプールでの、恋人同士になった市守和哉と蓮見涼介の甘い時間。

異世界ぼっち暮らし(神様と一緒!!)

藤雪たすく
BL
愛してくれない家族から旅立ち、希望に満ちた一人暮らしが始まるはずが……異世界で一人暮らしが始まった!? 手違いで人の命を巻き込む神様なんて信じません!!俺が信じる神様はこの世にただ一人……俺の推しは神様です!!

魔王が営む神秘の洞窟と温泉郷~スライムの大行進~

鷲原ほの
ファンタジー
異世界ファングランドのライハンス大陸では桃源郷の噂話が流れている。 それは、小さな世界の創造主としてダンジョンを自分好みに増改築する オニキス・サクラが仲良しスライム達を巻き込み奔走する異世界冒険譚。 まったりするため薬効温泉を選んだところから箱庭の娯楽は動き出す。

若旦那からの甘い誘惑

すいかちゃん
BL
使用人として、大きな屋敷で長年奉公してきた忠志。ある日、若旦那が1人で淫らな事をしているのを見てしまう。おまけに、その口からは自身の名が・・・。やがて、若旦那の縁談がまとまる。婚礼前夜。雨宿りをした納屋で、忠志は若旦那から1度だけでいいと甘く誘惑される。いけないとわかっていながら、忠志はその柔肌に指を・・・。 身分差で、誘い受けの話です。 第二話「雨宿りの秘密」 新婚の誠一郎は、妻に隠れて使用人の忠志と関係を続ける。 雨の夜だけの関係。だが、忠志は次第に独占欲に駆られ・・・。 冒頭は、誠一郎の妻の視点から始まります。

処理中です...