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1.ゲイ専門派遣型ダイナミクス風俗店
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彼を初めて見た時、なんてキレイな人なんだ、と思った。
背の高い彼は整った顔立ちをしていて、長めの金髪がとてもよく似合っている。まるでテレビの中から出てきたアイドルのようだ。いったいどういった人物なのだろうか。興味を惹かれて、その横顔をじっと見た。だけどその直後に彼の口から飛び出してきたのは、思いもよらない言葉だった。
「ゲイ専門派遣型ダイナミクス風俗店プリンスヘブンのハルです!」
……はい? 今、何て言った??
思わず自分の耳を疑う。
まるで芸能人のように整った顔立ちとスタイル。爽やかな笑みを浮かべている様子はファンタジー世界からやってきた王子様と言っても過言ではない。それなのに、今、酷く俗っぽい単語が聞こえた気がする。さっきの言葉は本当に彼の口から飛び出してきたものなのだろうか?
衝撃のあまり呆然としている間に、俺の王子様はお隣さんの部屋へと吸い込まれていってしまった。
そして、我に返ったときにはすでに、彼の残り香すら廊下に残ってはいなかった。
──白昼夢でも見ていたのだろうか?
儚い出会いに、自分を疑う。いやいや、そんなハズはない。俺は確かに彼の姿を見たし、あれは間違いなく現実だった。そうじゃないと困る。だって、彼は非常に俺の好みのタイプだったから。
先ほどの彼との出会いを、頭の中で何度も繰り返す。
そういえば、今、彼は「プリンスヘブン」って言っていたと思う。しかも、俺の聞き間違いじゃなければ、その店は「ゲイ専門派遣型ダイナミクス風俗店」らしい。
あの彼が、ゲイでダイナミクス持ちで、風俗店勤務だって!?
しかも、お隣さんが彼のことをマンションに呼んだのであれば、お隣さんもダイナミクス持ちだということだ。俺がこのマンションに引っ越してきたのは、去年の春。それから一年ほど隣人をしているけれど、全く気付かなかった。
引っ越して来た時に挨拶をしたが、茶髪の癖っ毛の男性だったと記憶している。Domなんだろうか。それとも、Subなんだろうか。気になるけれど、それよりももっと気になるのが、王子様の第二性だ。
一目見ただけで、俺は彼のことが好きになってしまった。しかも、ゲイでダイナミクス持ちだなんて、俺にとっては、これ以上にない好条件だ。
昼食を買いにコンビニに行こうと玄関のドアを開けたところだったけれど、予定を変更して、自分の部屋に戻る。パソコンのブラウザを立ち上げて「プリンスヘブン」を検索すると、公式ホームページはすぐに見つかった。目を皿のようにして店のサービス内容を端から端まで確認する。
プリンスヘブンは派遣型ダイナミクス風俗店なので、指名したキャストを好きな場所に呼び出すことができるらしい。プレイをするオススメ場所として、提携先のラブホテルの一覧が掲載されていた。ラブホテル……!? ラブホテル!!
もう、俺の頭はそれだけで沸騰しそうだ。
王子様みたいな彼と一緒にラブホテルに行くのか!? 誰が!? 俺が!?
まだ予約もしていないのに、そんなことを考えるなんて気が早いとは思うけれど、彼と一緒にラブホテルに居る自分をどうしても想像できない。
お店のホームページを読み進めていくと、お隣さんの様に、自宅に呼ぶこともできると書いてあった。
なるほど。ラブホテルよりは自宅のほうが落ち着けるかもしれない。あとで部屋を全力で片づけよう。そうしよう。
様々な妄想をしながら、俺は続きに目を通していく。
予約時間がスタートしたら、キャストは客とプレイをする。グレアとコマンドを使用するので、予約の時にセーフワードを決めておかなければならない。ふむふむ、なるほど。
プレイかぁ……
最後にプレイをしたのはいつだっけ……
そのことを思い出したら、なんだか身体が重くなったような気がした。ダイナミクス性の欲求不満が溜まっているのだろう。
別に好きで禁欲しているわけじゃない。俺だって、イイ相手が居たらプレイをしたいと思っている。だけど、なかなかマッチングできる相手が居ないんだ。
ダイナミクス持ちは全人口の三割程度。その約半数がDomで残りがSubだ。ただでさえ少ない第二性なのに、その中でもゲイとなると、出会える確率はさらに低くなる。
しかも、俺はかなりの面食いかつ好みの幅が狭い。だから、ゲイのダイナミクス持ちだったら誰でもいいというわけじゃないから尚更だ。
相性が悪いとプレイしても全然満たされないどころか、余計に欲求不満になってしまう。
だけど相性のいい相手と気持ちの良いプレイができると、DomもSubも性的に興奮してしまうことがある。本能の欲求を満たすための行為だから、どーとかこーとか……何かの記事で読んだことがあるけれど、なんでそうなるのかはよくわからない。
でも、気持ちのいいプレイができたとき、なんかムラムラしてくるってのはよくわかる。今まで、そんな経験はほとんどないけれど。
プレイをしていて、そんな雰囲気になってしまったときは、キャストによっては、そーゆーこともできるらしい。しかもこの店はゲイ専門だ! ほほぉ!?
俺はプレイだけじゃなくて、そっちの方もかなりご無沙汰だ。プレイなしで体だけでも満たしてくれる相手を探そうとしたこともある。
だけど、やっぱりダイナミクス持ちじゃないと上手くいかないことが多いって話を聞くと、躊躇ってしまう。どこかで妥協するしかない、と頭では分かっているんだけど……
プリンスヘブンのプロフィール一覧を端から見ていく。プレイ以上の行為をNGにしているキャストはあまり居ないようだ。ちなみに、トップとボトム……つまり、突っ込むほうか、突っ込まれるほうか……だと、Domはほぼ全員がトップ……突っ込みたい側。Subは全員ボトム……突っ込まれたい側だった。
俺は先ほど出会った彼……ハルさんのプロフィールを探した。
どっちだ!? 彼はどっちなんだ……!?
逸る気持ちを抑えながらキャスト一覧を隅から隅まで探したけど、何故かハルさんのプロフィールは存在していなかった。DomもSubも三回ずつチェックしたのに、なんで!?
強いて言えば、同じ名前のDomキャストは居た。でも、写真は別人だった。いったいどういうことなんだ?
背の高い彼は整った顔立ちをしていて、長めの金髪がとてもよく似合っている。まるでテレビの中から出てきたアイドルのようだ。いったいどういった人物なのだろうか。興味を惹かれて、その横顔をじっと見た。だけどその直後に彼の口から飛び出してきたのは、思いもよらない言葉だった。
「ゲイ専門派遣型ダイナミクス風俗店プリンスヘブンのハルです!」
……はい? 今、何て言った??
思わず自分の耳を疑う。
まるで芸能人のように整った顔立ちとスタイル。爽やかな笑みを浮かべている様子はファンタジー世界からやってきた王子様と言っても過言ではない。それなのに、今、酷く俗っぽい単語が聞こえた気がする。さっきの言葉は本当に彼の口から飛び出してきたものなのだろうか?
衝撃のあまり呆然としている間に、俺の王子様はお隣さんの部屋へと吸い込まれていってしまった。
そして、我に返ったときにはすでに、彼の残り香すら廊下に残ってはいなかった。
──白昼夢でも見ていたのだろうか?
儚い出会いに、自分を疑う。いやいや、そんなハズはない。俺は確かに彼の姿を見たし、あれは間違いなく現実だった。そうじゃないと困る。だって、彼は非常に俺の好みのタイプだったから。
先ほどの彼との出会いを、頭の中で何度も繰り返す。
そういえば、今、彼は「プリンスヘブン」って言っていたと思う。しかも、俺の聞き間違いじゃなければ、その店は「ゲイ専門派遣型ダイナミクス風俗店」らしい。
あの彼が、ゲイでダイナミクス持ちで、風俗店勤務だって!?
しかも、お隣さんが彼のことをマンションに呼んだのであれば、お隣さんもダイナミクス持ちだということだ。俺がこのマンションに引っ越してきたのは、去年の春。それから一年ほど隣人をしているけれど、全く気付かなかった。
引っ越して来た時に挨拶をしたが、茶髪の癖っ毛の男性だったと記憶している。Domなんだろうか。それとも、Subなんだろうか。気になるけれど、それよりももっと気になるのが、王子様の第二性だ。
一目見ただけで、俺は彼のことが好きになってしまった。しかも、ゲイでダイナミクス持ちだなんて、俺にとっては、これ以上にない好条件だ。
昼食を買いにコンビニに行こうと玄関のドアを開けたところだったけれど、予定を変更して、自分の部屋に戻る。パソコンのブラウザを立ち上げて「プリンスヘブン」を検索すると、公式ホームページはすぐに見つかった。目を皿のようにして店のサービス内容を端から端まで確認する。
プリンスヘブンは派遣型ダイナミクス風俗店なので、指名したキャストを好きな場所に呼び出すことができるらしい。プレイをするオススメ場所として、提携先のラブホテルの一覧が掲載されていた。ラブホテル……!? ラブホテル!!
もう、俺の頭はそれだけで沸騰しそうだ。
王子様みたいな彼と一緒にラブホテルに行くのか!? 誰が!? 俺が!?
まだ予約もしていないのに、そんなことを考えるなんて気が早いとは思うけれど、彼と一緒にラブホテルに居る自分をどうしても想像できない。
お店のホームページを読み進めていくと、お隣さんの様に、自宅に呼ぶこともできると書いてあった。
なるほど。ラブホテルよりは自宅のほうが落ち着けるかもしれない。あとで部屋を全力で片づけよう。そうしよう。
様々な妄想をしながら、俺は続きに目を通していく。
予約時間がスタートしたら、キャストは客とプレイをする。グレアとコマンドを使用するので、予約の時にセーフワードを決めておかなければならない。ふむふむ、なるほど。
プレイかぁ……
最後にプレイをしたのはいつだっけ……
そのことを思い出したら、なんだか身体が重くなったような気がした。ダイナミクス性の欲求不満が溜まっているのだろう。
別に好きで禁欲しているわけじゃない。俺だって、イイ相手が居たらプレイをしたいと思っている。だけど、なかなかマッチングできる相手が居ないんだ。
ダイナミクス持ちは全人口の三割程度。その約半数がDomで残りがSubだ。ただでさえ少ない第二性なのに、その中でもゲイとなると、出会える確率はさらに低くなる。
しかも、俺はかなりの面食いかつ好みの幅が狭い。だから、ゲイのダイナミクス持ちだったら誰でもいいというわけじゃないから尚更だ。
相性が悪いとプレイしても全然満たされないどころか、余計に欲求不満になってしまう。
だけど相性のいい相手と気持ちの良いプレイができると、DomもSubも性的に興奮してしまうことがある。本能の欲求を満たすための行為だから、どーとかこーとか……何かの記事で読んだことがあるけれど、なんでそうなるのかはよくわからない。
でも、気持ちのいいプレイができたとき、なんかムラムラしてくるってのはよくわかる。今まで、そんな経験はほとんどないけれど。
プレイをしていて、そんな雰囲気になってしまったときは、キャストによっては、そーゆーこともできるらしい。しかもこの店はゲイ専門だ! ほほぉ!?
俺はプレイだけじゃなくて、そっちの方もかなりご無沙汰だ。プレイなしで体だけでも満たしてくれる相手を探そうとしたこともある。
だけど、やっぱりダイナミクス持ちじゃないと上手くいかないことが多いって話を聞くと、躊躇ってしまう。どこかで妥協するしかない、と頭では分かっているんだけど……
プリンスヘブンのプロフィール一覧を端から見ていく。プレイ以上の行為をNGにしているキャストはあまり居ないようだ。ちなみに、トップとボトム……つまり、突っ込むほうか、突っ込まれるほうか……だと、Domはほぼ全員がトップ……突っ込みたい側。Subは全員ボトム……突っ込まれたい側だった。
俺は先ほど出会った彼……ハルさんのプロフィールを探した。
どっちだ!? 彼はどっちなんだ……!?
逸る気持ちを抑えながらキャスト一覧を隅から隅まで探したけど、何故かハルさんのプロフィールは存在していなかった。DomもSubも三回ずつチェックしたのに、なんで!?
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