添い寝オオカミと発情ウサギ

夏芽玉

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【10】お試しサービス

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 雑居ビルの階段を上がってドアを開くと、受付には前に来た時と同じ店員さんが居た。

「あの、以前来たときの獣人ひと……ライさんをお願いしたいんですけれど……」

 オレの顔を見ると、店員さんはぱちりと目を瞬かせてた。

「あー……、ライね。彼は一時間後なら来れるハズだけド……」

 言われて、オレは頭上に掛かっているパネルを見た。
 光っているパネルの中に、ライの顔はなかった。もしかしたら、今日はお休みの日だったのかもしれない。電話で問い合わせるか、予約をしてから来ればよかったな、と今更ながら思い至って、オレは赤面した。

「ライが来るまで、他のキャストと添い寝シてみル? 待ち時間のお試しってコトで、サービスするヨ。今なら一番人気のコが空いてるから、お得ネ」

 また日を改めて、予約をしてから来ようと思ったオレを店員さんがそう言って引き留めた。

「うーん、そうですね……それなら、お願いしようかな……」

 帰ってもすることないし。それに、ライと居るのはとっても心地良かったけれど、添い寝リフレっていうのは他の人でもあんなに気持ち良くなれるものなのかなという興味もあって、オレは頷いた。





 受付前のソファでしばらく待っていると「準備できたヨ」と言われて、通されたのは同じフロアの奥にある部屋だった。オレを部屋まで案内してくれた店員さんがドアをノックすると、ガチャリとドアが開いて、中から色黒で大柄な獣人ひとが出てきた。

「はーい、いらっしゃいませ。オレはカマル、よろしくね。えーっと、……先に中に入っててもらっていいかな」

 ライも体格は良いほうだと思ったけれど、今回の獣人ひとはライより一回りは大きい気がする。身体は大きいけれど、顔立ちは男らしいイケメンだった。一言で表現するならイケメンマッチョだ。身体は大きいけれど、爽やかな笑顔のおかげで威圧感はなかった。あと、見た感じとても若そうだ。もしかしたら、オレより年下かもしれない。

「ちょっと打ち合わせ、いい?」

 オレが部屋に入ったのと同時に、カマルくんは店員さんを捕まえて言った。
 オレは二人の声が聞こえないところまで移動すると、室内を見回した。前回来た時よりも、部屋は一回り狭い気がする。前回は初回サービスだったからイイ部屋を使わせてもらったのか、今回がお試しだからなのか……

「ねぇ、マーキングがすごいんだけど……これ、オレが添い寝して大丈夫なやつなの?」
「ここで帰したほうがマズいとオモうけど?」
「あー、この前来た店長のお気に入り? あー、なるほど……ってこれ、オレ完全な貧乏くじじゃん。後で店長に何か言われたら、フォローしてよ?」
「スルスル。だから、なんとか上手くやっテ」
「あー、はいはい」

 打ち合わせが終ったカマルくんが部屋に入ってきて、ドアを閉めた。
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