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【2】とびっきり気持ち良くしてあげる
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指示された部屋に入ったら、がっしりとした体格の獣人がベッドに座ってオレのことを待っていた。座っていてもわかる。オレのリクエスト通り、抱き着き甲斐のありそうな、おっきめサイズの獣人だ。精悍な顔立ちをしていて、襟足の長いウルフカットに、シルバーアッシュのハイライト。普段のオレなら気後れしてしまいそうなくらい格好いいと思うけれど、オレはもう、そのがっしりとした身体に早く抱き着きたくて仕方なかった。
「はじめまして。オレはライ。今日はよろしく。トーヤって呼んでいい?」
ライの言葉にオレは頷いた。立ち上がったライが入口までやってきて、オレの上着を脱がせてハンガーに掛けてくれた。
「スーツのままだと寛げないでしょ? これに着替えて」
手渡されたのは、バスローブだった。言われるがままに着ていた服を脱いで、下着だけになる。脱いだ服は、ライが順番にハンガーに掛けてくれた。一人暮らしだと、そういったことも全部自分でしなければならないので、獣人にやって貰えるというのが少しくすぐったくも嬉しい。準備ができたら、ライがベッドまでエスコートしてくれた。
「オレが脱ぐのは抵抗ある?」
ベッドに入る前に、ライに訊かれた。意図が分からず、オレは首を傾げた。
「カウンセリングシートに”癒されたい”って書いてあったから。素肌同士で触れ合うと、気持ちいいよ」
「……それって、オレも脱いだ方がいいってことですか?」
こういったお店を利用したことがないから、どうしたらいいのかよくわからない。でも、確かに素肌同士が触れ合った方が、獣人肌を恋しく思う気持ちは満たされる気がした。
オレは抵抗がないことを伝えると、自分も先程着たばかりのバスローブを脱いでからベッドの上に仰向けに寝転んだ。その間にライも着ていたTシャツとズボンを脱いでいた。引き締まった身体が眩しい。
「トーヤ、可愛いね……」
上半身は裸で下半身は下着だけになったオレを見てライが言う。ライに比べたら、不摂生な身体は弛んでいるし、オレに可愛い要素など何一つない。だから、向けられる笑顔も擽ったい台詞も、リップサービスに違いないって頭ではわかっているのだけど、こんな素敵な獣人に甘い声でそう言われるとなんだかとても嬉しかった。
「疲れてるなら、マッサージしてもいい?」
足元に畳まれた布団をオレに掛けてくれるのかと思ったけれど、ベッドに乗り上がってきたライはオレの太腿の上に跨ってそう言った。
「マッサージ……?」
受付でそんなことを聞いたような聞かなかったような……つい先ほどのことのはずなのに、すでにオレの記憶は曖昧だ。
「とびっきり気持ち良くしてあげる」
そんなことを言われて、オレはすっかり期待してしまった。
ライはオレに跨っているけれど、体重を掛けないようにしてくれているようで、お互いの太腿同士が軽く触れあっている程度だ。だけど、その部分から体温が混ざり合っていく。ただそれだけのことなのに……確かにライの言う通り、素肌同士が触れ合うのは気持ち良いなとオレは思った。
「じゃあ、お願いしちゃおうかな……」
そう言ってオレは腰を浮かせたライの下でうつ伏せになった。
「はじめまして。オレはライ。今日はよろしく。トーヤって呼んでいい?」
ライの言葉にオレは頷いた。立ち上がったライが入口までやってきて、オレの上着を脱がせてハンガーに掛けてくれた。
「スーツのままだと寛げないでしょ? これに着替えて」
手渡されたのは、バスローブだった。言われるがままに着ていた服を脱いで、下着だけになる。脱いだ服は、ライが順番にハンガーに掛けてくれた。一人暮らしだと、そういったことも全部自分でしなければならないので、獣人にやって貰えるというのが少しくすぐったくも嬉しい。準備ができたら、ライがベッドまでエスコートしてくれた。
「オレが脱ぐのは抵抗ある?」
ベッドに入る前に、ライに訊かれた。意図が分からず、オレは首を傾げた。
「カウンセリングシートに”癒されたい”って書いてあったから。素肌同士で触れ合うと、気持ちいいよ」
「……それって、オレも脱いだ方がいいってことですか?」
こういったお店を利用したことがないから、どうしたらいいのかよくわからない。でも、確かに素肌同士が触れ合った方が、獣人肌を恋しく思う気持ちは満たされる気がした。
オレは抵抗がないことを伝えると、自分も先程着たばかりのバスローブを脱いでからベッドの上に仰向けに寝転んだ。その間にライも着ていたTシャツとズボンを脱いでいた。引き締まった身体が眩しい。
「トーヤ、可愛いね……」
上半身は裸で下半身は下着だけになったオレを見てライが言う。ライに比べたら、不摂生な身体は弛んでいるし、オレに可愛い要素など何一つない。だから、向けられる笑顔も擽ったい台詞も、リップサービスに違いないって頭ではわかっているのだけど、こんな素敵な獣人に甘い声でそう言われるとなんだかとても嬉しかった。
「疲れてるなら、マッサージしてもいい?」
足元に畳まれた布団をオレに掛けてくれるのかと思ったけれど、ベッドに乗り上がってきたライはオレの太腿の上に跨ってそう言った。
「マッサージ……?」
受付でそんなことを聞いたような聞かなかったような……つい先ほどのことのはずなのに、すでにオレの記憶は曖昧だ。
「とびっきり気持ち良くしてあげる」
そんなことを言われて、オレはすっかり期待してしまった。
ライはオレに跨っているけれど、体重を掛けないようにしてくれているようで、お互いの太腿同士が軽く触れあっている程度だ。だけど、その部分から体温が混ざり合っていく。ただそれだけのことなのに……確かにライの言う通り、素肌同士が触れ合うのは気持ち良いなとオレは思った。
「じゃあ、お願いしちゃおうかな……」
そう言ってオレは腰を浮かせたライの下でうつ伏せになった。
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