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石油王がやってきた!
【7】運命の人
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何故か、次の出勤日から、オレの常連客が押さえていたハズのスケジュール枠が全部石油王に買われていた。
え、うちの店って、そんな割り込み予約なんてできたっけ?
それから、2回目のプレイのときに、石油王とかおにーさんじゃなくて、「リヤド」と呼んで欲しいと頼まれた。
なにやら、「大切な人にしか教えない特別な名前」なんだそうだ。また設定が凝っているなと思ったけど、せっかくなのでオレのことも「ユーリ」と呼んでもらうことにした。それから、一度預かったあの大きな宝石がついた指輪は、オレの指にぴったりサイズの指輪に交換してもらった。
そんなこんなで、オレはここ一ヶ月らい、出勤したらリヤドの相手しかしていない。おかげでリヤドの調教は順調に進んでいる。
「好きなことと嫌いなことを見つけていこうね」というオレの口車に乗せられて、この店でできるオプションは全部試した。道具を使うのだけはどうしても嫌がったけれど(オレの体温が感じられないのが嫌なんだそうだ。可愛いかよ! 今度、お仕置きが必要なシチュエーションを作って使ってやろうと思った)、それ以外はだいたいなんでもイケそうだった。
あと、オレは週3勤務なんだけど、いい加減、コスプレのネタが尽きてきた。新しいのを何か仕入れてもらわないとなー、いや、オレに着せたい衣装を持ち込んで貰うのもいいかな、なんて考えていたんだけど。
「ユーリの来月のスケジュールはまだ出ていないそうだが、私もそろそろ帰国の日が近づいてきてしまって……このままでは、ここに通うことができなくなってしまう。なので、未来永劫ユーリの時間を買いたい。というか、ユーリを身請けしたいのだが……」
「へ?」
今日も出勤時間めいっぱいプレイをした後、帰り際にリヤドにそんなことを言われた。
身請けって……? うちの店にそんなシステムなんてない。
っていうか、オレ、別に借金とかあるわけじゃないしな。その店に在籍しているのも、趣味と実益を兼ねたただのアルバイトのつもりだったし。楽しく自分の性癖を満たしながら学費を稼げればいいと思っていただけなんだけど……
リヤドは格好いいのに可愛いし、エッチだし、可愛いし、可愛いし。一緒に居ると楽しいし。オレも癒されてるし。こんなんでお金貰っちゃっていいのかなーってちょっと思ったりしていたところなんだけど。
「……ええと、それってつまり? リヤドはもうお店には来てくれないの?」
なんとかリヤドが言ったことを飲み込もうとして、オレは首を傾げながらリヤドに問い掛けた。言った後に、その言葉の意味をじんわりと理解して、オレの心の中に焦りが生まれた。
リヤドともう会えなくなる────!?
一瞬、目の前が真っ暗になった気がした。
リヤドと今後、会えなくなるということもショックだし、今更、他の客の相手をしろと言われてももう勃つ気がしない。
「なんで……」
って、理由はさっきリヤドが言っていた。帰国するんだって。
確かに、日本人離れしたその顔立ちは、日本在住ではないと言われてしまえば納得できてしまう。納得なんてしたくないけど!
「もう会えないの……?」
オレの口から、弱音みたいな言葉が漏れた。
「そんなことは堪えられない。だから……ユーリ、私と結婚してくれ」
「へ?」
「この指輪は運命の人に渡すものだ。初めて出会ったあの日、ユーリは私の処女だけでなく、私の心も奪ったのだ。ここにいるユーリの全ての時間を買うのは私にとって容易いことではあるけれど、欲深い私はユーリのこの先の人生全てを欲しいと思ってしまったのだ」
「えーっと……うん」
えぇっとリヤドは何を言っているのだろう。
ていうか、店のナンバーワンの全ての出勤時間を買うのが容易いこと……? って、リヤドはもしかして本物のお金持ち……ていうか。もしかして……
「ちょっとまって。リヤドって……なんちゃって石油王じゃなくて、もしかして、本物の石油王だったのかー!!」
オレはその時になって、ようやく自分の誤解に気付いたのだった。
後から聞いた話によると、オレが最初に見たカウンセリングシートは日本語の読み書きができないリヤドに代わって、オーナーが代筆したものだったらしい。
空白は自分で聞いて書き取れということだったらしいんだけど……ちょっと、そういう大事な引き継ぎは、最初にちゃんと言えよ!
結局、その後、なんだかんだあって、オレはリヤドの国で結婚することになった。
アルバイトは就職したら勿論、辞めるつもりだったんだけど、時期を早めてリヤドの帰国と同時に退店することになった。だって、オレはもうリヤド以外を抱ける気がしなかったから。
オレとリヤドは、オレが大学を卒業するまでの約二年間、遠距離恋愛をすることになった。といっても、リヤドは月に1、2回は来日してくれたので、その時はたっぷりとオレ好みになるように調教してあげた。
そして、オレは大学卒業後にリヤドが経営する石油会社に入社した。役職は、石油王専属の秘書となっている。
ただ、入社してからは真面目に仕事をするよりも、リヤド相手にチンポを使ってる時間のほうが長いような気がするんだけど……リヤドはオレを見るとすぐに発情するから。まぁ、そう仕込んだのはオレなんだけど。
会社の仕事も早く覚えられるといいな、なんて思いながらオレは今日もリヤド相手に重役室で腰を振るのだった。
【石油王がやってきた! おわり】
ここまで読んでくださってありがとうございました!!
『第11回BL小説大賞』に参加しています。もし気に入っていただけましたら投票をお願いします。
え、うちの店って、そんな割り込み予約なんてできたっけ?
それから、2回目のプレイのときに、石油王とかおにーさんじゃなくて、「リヤド」と呼んで欲しいと頼まれた。
なにやら、「大切な人にしか教えない特別な名前」なんだそうだ。また設定が凝っているなと思ったけど、せっかくなのでオレのことも「ユーリ」と呼んでもらうことにした。それから、一度預かったあの大きな宝石がついた指輪は、オレの指にぴったりサイズの指輪に交換してもらった。
そんなこんなで、オレはここ一ヶ月らい、出勤したらリヤドの相手しかしていない。おかげでリヤドの調教は順調に進んでいる。
「好きなことと嫌いなことを見つけていこうね」というオレの口車に乗せられて、この店でできるオプションは全部試した。道具を使うのだけはどうしても嫌がったけれど(オレの体温が感じられないのが嫌なんだそうだ。可愛いかよ! 今度、お仕置きが必要なシチュエーションを作って使ってやろうと思った)、それ以外はだいたいなんでもイケそうだった。
あと、オレは週3勤務なんだけど、いい加減、コスプレのネタが尽きてきた。新しいのを何か仕入れてもらわないとなー、いや、オレに着せたい衣装を持ち込んで貰うのもいいかな、なんて考えていたんだけど。
「ユーリの来月のスケジュールはまだ出ていないそうだが、私もそろそろ帰国の日が近づいてきてしまって……このままでは、ここに通うことができなくなってしまう。なので、未来永劫ユーリの時間を買いたい。というか、ユーリを身請けしたいのだが……」
「へ?」
今日も出勤時間めいっぱいプレイをした後、帰り際にリヤドにそんなことを言われた。
身請けって……? うちの店にそんなシステムなんてない。
っていうか、オレ、別に借金とかあるわけじゃないしな。その店に在籍しているのも、趣味と実益を兼ねたただのアルバイトのつもりだったし。楽しく自分の性癖を満たしながら学費を稼げればいいと思っていただけなんだけど……
リヤドは格好いいのに可愛いし、エッチだし、可愛いし、可愛いし。一緒に居ると楽しいし。オレも癒されてるし。こんなんでお金貰っちゃっていいのかなーってちょっと思ったりしていたところなんだけど。
「……ええと、それってつまり? リヤドはもうお店には来てくれないの?」
なんとかリヤドが言ったことを飲み込もうとして、オレは首を傾げながらリヤドに問い掛けた。言った後に、その言葉の意味をじんわりと理解して、オレの心の中に焦りが生まれた。
リヤドともう会えなくなる────!?
一瞬、目の前が真っ暗になった気がした。
リヤドと今後、会えなくなるということもショックだし、今更、他の客の相手をしろと言われてももう勃つ気がしない。
「なんで……」
って、理由はさっきリヤドが言っていた。帰国するんだって。
確かに、日本人離れしたその顔立ちは、日本在住ではないと言われてしまえば納得できてしまう。納得なんてしたくないけど!
「もう会えないの……?」
オレの口から、弱音みたいな言葉が漏れた。
「そんなことは堪えられない。だから……ユーリ、私と結婚してくれ」
「へ?」
「この指輪は運命の人に渡すものだ。初めて出会ったあの日、ユーリは私の処女だけでなく、私の心も奪ったのだ。ここにいるユーリの全ての時間を買うのは私にとって容易いことではあるけれど、欲深い私はユーリのこの先の人生全てを欲しいと思ってしまったのだ」
「えーっと……うん」
えぇっとリヤドは何を言っているのだろう。
ていうか、店のナンバーワンの全ての出勤時間を買うのが容易いこと……? って、リヤドはもしかして本物のお金持ち……ていうか。もしかして……
「ちょっとまって。リヤドって……なんちゃって石油王じゃなくて、もしかして、本物の石油王だったのかー!!」
オレはその時になって、ようやく自分の誤解に気付いたのだった。
後から聞いた話によると、オレが最初に見たカウンセリングシートは日本語の読み書きができないリヤドに代わって、オーナーが代筆したものだったらしい。
空白は自分で聞いて書き取れということだったらしいんだけど……ちょっと、そういう大事な引き継ぎは、最初にちゃんと言えよ!
結局、その後、なんだかんだあって、オレはリヤドの国で結婚することになった。
アルバイトは就職したら勿論、辞めるつもりだったんだけど、時期を早めてリヤドの帰国と同時に退店することになった。だって、オレはもうリヤド以外を抱ける気がしなかったから。
オレとリヤドは、オレが大学を卒業するまでの約二年間、遠距離恋愛をすることになった。といっても、リヤドは月に1、2回は来日してくれたので、その時はたっぷりとオレ好みになるように調教してあげた。
そして、オレは大学卒業後にリヤドが経営する石油会社に入社した。役職は、石油王専属の秘書となっている。
ただ、入社してからは真面目に仕事をするよりも、リヤド相手にチンポを使ってる時間のほうが長いような気がするんだけど……リヤドはオレを見るとすぐに発情するから。まぁ、そう仕込んだのはオレなんだけど。
会社の仕事も早く覚えられるといいな、なんて思いながらオレは今日もリヤド相手に重役室で腰を振るのだった。
【石油王がやってきた! おわり】
ここまで読んでくださってありがとうございました!!
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