セーラー服と石油王

夏芽玉

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石油王は抱かれたい!

【2】予定変更

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 うーん、聞きたかったのは仕事の内容とかそーいったことなんだけど。何、ズリネタ披露しちゃってんの? しかもズリネタがオレ? いや、リヤドはオナニーでも後ろを使うから、アナニーネタ? まぁそれはどっちでもいいや。頬を染めてはにかむリヤドは年上ながらも可愛らしい。

 今からデートしようっていうのに、こんな人混みの中でそんなこと暴露するなんて何を考えてるのだろう。さっき隣を歩いていたカップルがオレ達の話を盗み聞きしていたのか、ドン引きしていた。

 それに、リヤドはオレを誘ってんのだろうか? いや、誘ってるだろ、絶対。水族館なんて行かずに、今すぐホテルに連れ込んでやろうか? うん、それがいい。そうしよう。


 確かこの近くには男同士でも入れるラブホがあったはずだ。以前、コスプレ風俗で派遣されたときのことを思い出しながら、オレは口を開いた。

「……それって、いつ撮った写真なの?」

 オレはわざと冷たい声を出す。

「いつ、って……ユーリが大学に居るときだが……」
「ふーん……」
「何か問題があっただろうか……?」

 急に冷たくなったオレの態度に、リヤドが首を傾げる。

 そもそも、オレはリヤドに大学名を教えていないし、写真を撮りたいと言われたこともなければ、それを許可したこともない。画面に居ない第三者に向けられた笑顔の瞬間を切り取ったその写真はオレが知らない間に隠し撮りされたものだった。

 写真が欲しいのなら、こっそり撮らなくても、声を掛けてくれればいつでも撮らせてあげるのに。ていうか、オレもリヤドの写真、欲しいな。あぁ、リヤドが帰国するまでにハメ撮りするのもいいな。よし、今度ハメ撮りもしよう。そんなことを考えながら、オレは怒っているフリを続ける。

「写真を撮っていいなんて、オレがいつ言った?」
「あ……」

 オレの怒りの理由にリヤドはようやく思い至ったようで、唇を震わせる。

「す、すまない……店内での撮影は禁止だと聞いていたので、店の外での姿を撮影したのだが……それもルール違反だったのだろうか」

 そりゃそうだ。

 店内でキャストの撮影なんてしたら、一発アウト。即出禁になる。
 ていうか、今の言い方だと、オレがコスプレ風俗に勤めている時期に撮ったものだったのか。全然気づかなかった。

 当然、オフでキャストに付き纏うのも、盗撮するのもNGで、バレていたらやっぱり即出禁だ。バレてなくて良かったな。

「盗撮行為は犯罪だよ」
「そ、そうなのか!?」
「日本ではそーなの」

 石油の国ではどうか知らんけど。
 リヤドは石油王なので、自国で石油王が気ままに写真を撮影したところで、罪に問う人は居ないのかもしれない。


 オレは一度足を止めると、踵を返して来た道を引き返す。

「あ……あの……? ユーリ……?」

 一瞬反応が遅れたリヤドが、慌ててオレを追いかけてくる。

「す、すまない……怒っているのか?」

 オレは何も答えずスタスタと歩く。結構早足で歩いているつもりなのに、リヤドは楽々と追いついてくる。脚、長いなぁ。オレは感心しながらも、怒ったフリを続ける。

「お願いだ。なんでもするから、許してくれ」

 あーあ、なんでリヤドはここでそーゆーこと言っちゃうかな? そんなこと言ったら、オレに付け込まれるだけなのに。というか、リヤドはもしかして、オレに付け込まれたくてわざとそう言ってるんだろうかとすら思えてくる。

「なんでも……ね」

 オレが足を止めて見上げると、リヤドは眉を下げて不安そうな表情をしていた。どうやって苛めてやろうかとオレが内心で舌なめずりしてしまうことに、気付いていないのだろう。

「それじゃあ、リヤドがちゃんと反省してるのがオレに伝わったら、デートの続きしてあげる」

 オレの言葉に、リヤドはパッと顔を輝かせる。

「あ……、ああ。わかった。それで、私はどうすれば……」
「ついてきて」

 オレはリヤドににっこりと笑顔を向けた。




 繁華街を入口まで戻って、脇道に逸れる。大通りから死角になる位置に、その店の入口はあった。一緒に店内に入ると、リヤドは身体をビクリとさせた。
 狭い店内に所狭しと陳列されたアダルトグッズに驚いたのだろう。メジャーなものは、お店にもあったけれど、見たことがないものも多いはずだ。

「えぇと、ここは……」
「アダルトショップ。ちょっと買い物をするだけだから、ここで待ってて」

 オレは店内の入口付近でリヤドを待たせると、目当てのものを購入した。
 すぐに買い物を終えたオレに、リヤドは不安そうな表情をしたけれど、オレは気にせずリヤドを連れて次の目的地へと向かうことにした。


「さっきは何を買ったんだ?」
「んー、秘密」

 裏道をしばらく進むと、入口が隠された建物が見えた。
 オレはリヤドをその建物に連れ込む。

「ここは……」
「ラブホテル。来たことない?」

 店の入り口にあるパネルで適当な部屋を選ぶと、自動で出てきた鍵を手にする。リヤドはラブホテルの造りが珍しいのか、キョロキョロとしている。オレはリヤドに何も説明せず、エレベーターに乗って通路を進んだ。

 目的の部屋につくと、リヤドは部屋の入り口で固まった。

「え……」

 赤と黒を貴重とした淫靡な雰囲気の部屋。広い室内は、手前のプレイスペースと奥のベッドスペースに分かれていた。
 プレイスペースの壁にはX字の磔台が。そして、中央には金属でできたフレームがある。金属フレームは吊って拘束するための場所だ。ダブルベッドが入るくらいのスペースで、天井より少し低い位置にある金属でできた格子を、4つの支柱が支えているといった作りをしている。そこからは、備え付けの拘束具がいくつかぶら下がっていた。
 このホテルはSMをコンセプトにしているので、どの部屋にもそういったプレイをするための設備がある。

「ここはいったい……」
「リヤドをお仕置きするための部屋。じゃあ、まずは……服を全部脱いで」
「それは……」

 リヤドに命令すると、珍しくリヤドが渋った。

「なに。今さら、恥ずかしがってんの?」
「いや。そうではなくて……せっかくユーリに選んでもらった服なのに、脱いでしまうのが勿体なくて……」

 オレに服を選んでもらったのが、よほど嬉しかったらしい。

「ねぇ、知ってる? 日本で男が相手に服を選んであげるのは……その後に、脱がすためなんだよ」

 オレはリヤドに近寄ると、肩に触れて耳元で囁いた。
 リヤドがピクリと反応する。耳も性感帯になるって教えて、一時期ずっと弄っていたことがあったからな。オレが近くで喋ると意識してしまうのだろう。

「自分で脱がないと、無理やり脱がすから。破れても知んないよ?」

 勿論、そんな乱暴なことをするつもりはない。デパートで購入したハイブランドの洋服は、びっくりするような値段をしていた。リヤドにとっては大した額ではないようなことを言っていたけれど、オレからすれば超高級品だ。でも、服を破られるのは嫌なようで、リヤドは大人しく着ているものを全部脱いだ。



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