セーラー服と石油王

夏芽玉

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石油王がやってきた!

【2】処女の匂い

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「おにーさん、すげぇ処女の匂いがするからなー」
「や……やはり、処女でこういったお店を利用するのは駄目だっただろうか……?」

 オレが適当なことを言うと、石油王は心配そうに自分の腕の匂いを嗅ぎ始めた。匂いなんて嘘に決まってんのに。

「ううん、とっても美味しそう。ハジメテの相手にオレを選んでくれて嬉しいよ。後でじっくりと味わってあげるね」

 オレが耳元でそう言うと、石油王は耳まで真っ赤に染まった。


「それじゃ、早速だけどシャワー浴びよっか」

 部屋に入ったら客はすぐにシャワーを浴びるという決まりになっている。指名が入ってからシャワーを浴びているからオレは本当は一緒に入る必要はないんだけど、石油王のことが気に入ったので、浴室でまずはじっくりとサービスしてやろうと決めた。

「初めてだと勝手がわからないだろうから、オレが全部してあげるね」
「ああ……よろしく頼む」

 座っている位置をずらして石油王との距離を詰めたら、ふわりとオリエンタルな香りがした。香水か何かだろうか。すごく好きな香りだ。その匂いをもう少し嗅いでいたくて、オレはわざとゆっくりと服を脱がしていく。

 初めて見る形の服をうまく脱がせるか少し心配だったけど、石油王のコスプレは幸いにもそんなに複雑な作りはしていなかった。フロントにあるボタンを外すだけで簡単に石油王の素肌を露わにすることができたので、オレは内心ホッとした。

「すげぇ、イイ身体。鍛えてんの?」
「まぁ……護身術を少々……」
「ふぅん、格好いいね。筋肉の付き方も、すごくオレ好みだ」
「そう言われると……嬉しいな」

 オレは石油王のイイところを褒めながら、頭の布も外した。緩くウェーブがかった黒髪が露わになる。

 服を全部脱がせると、石油王はオレの前でただの男になった。褐色の肌は雄みが強くて、なんだかエロいなと思った。
 目の前の男が身につけているものは、後は装飾品だけだ。裸体にピアスと金のネックレスと指輪と腕輪だけをしている姿は、芸術が作った彫刻のようにすら見える。
 この男をどんな風に抱いてやろうかと思うだけで、オレの気持ちは昂っていく。

 だけど、プレイの途中で装飾品に傷がついたというクレームを貰うわけにはいかない。石油王のしている指輪にはとても大きな宝石がついている。いや、まさかこんな大きな宝石があるわけなんてないとは思うけど。だから、きっとこれはガラス玉だろうとオレは思った。そして、もしそれがガラスだとしたら、うっかりプレイの途中で傷をつけてしまうことがあるかもしれない。だって、オレは石油王と激しいプレイがしたいからな。
 ああ、早く泣きじゃくって暴れまくる石油王を押さえつけて犯してぇ……

「装飾品も、傷がついたり壊れたりしたら困るようなものはここに入れてもらっていいかな?」

 オレは逸る気持ちを抑えながら、貴重品を入れるための小さなケースを石油王に差し出した。すると、石油王は少し考えるような素振りを見せたあと、指輪だけをその貴重品ケースに入れた。貴重品ケースは透明な素材でできているので、蓋を閉めても外から中身を見ることができるようになっている。

「服の上に置いておくから、帰るときに忘れないでね」

 オレはそう言うと、畳んだ石油王の服コスプレ衣装の上にケースを置いた。

「それで。オレの服はどーする? 脱がせたい? それとも、このまま洗ってあげようか?」
「ぬ、ぬぬぬ……?」

 その言葉に、石油王が真っ赤な顔をして、パクパクと口を開いたり閉じたりを繰り返している。

「なぁにー、どうしたの? オレの裸がそんなに気になる?」
「き……気になる……あ、あの。本当にキミは男なのだろうか?」
「男だけど? なんなら、先にチンコだけでも見せよっか?」
「あ、いや。その……あんまりにもキミが綺麗だから、実は未だに信じられなくて……」

 オレは自分磨きも怠たっていない。シャンプーとコンディショナーはヘアサロンのものを使っているし、スキンケアにも毎晩時間を掛けている。そのおかげで栗色に脱色した髪はサラサラだし、色白の肌もしっとりスベスベだ。正直、そのへんの女子よりは女子力が高い自信がある。

「ふーん、そっか。褒めてくれて、ありがと。それじゃあせっかくだから、おにーさんがオレのこと脱がしてみる?」
「あ……いや。上手くできる自信がない。ぬ……脱いでもらってもいいだろうか?」
「いいよ」

 そう言うと、オレはセーラー服を脱ごうと上衣の裾に手を掛けた。早く浴室に行きたかったので、着ているものはさっさと脱ぎ捨ててしまおうとしたのだけど、石油王が興味津々といった様子でガン見しているのに気づいて、オレはできるだけいやらしくなるように、肌を少しずつ見せつけながら、セーラー服と下着を脱いでやった。
 たったそれだけのことなのに、石油王のムスコがガン勃ちしていたので、オレはニヤリと笑った。
 そんなにおっきくしても、使わせてなんてやらないけどね。

 お互いが裸になると、オレは石油王の手を引いて部屋に備え付けの風呂場へと向かう。
 ここでもプレイができるように、風呂場もラブホテル仕様になっている。ジャグジーつきの浴槽と、ローションプレイができる広さの洗い場とマット。その隣に置かれたメタルラックには各種道具大人の玩具が置いてあった。
 石油王は、風呂場に置いてあるものを物珍しそうに見回した。

「ええと……私はどうすればいいのだろうか?」
「まずはシャワーの前に行こうか。じっとしててくれたらオレが全部してあげるから。身体の力を抜いててくれると嬉しいな」
「なるほど、わかった」

 素直に頷く石油王に、オレはニコリと笑顔を向けた。

 洗い場で二人まとめてシャワーを浴びると、オレは自分の身体にボディーソープをつけて、石油王に抱きついた。身体全体を使って、目の前の大きな身体を洗っていく。

 身体の力を抜くように伝えたにも関わらず、オレに密着されて、石油王はガチガチに緊張しているようだった。そんな状態なのに、全身を擦り付けられると興奮してしまうのか、股間のブツを期待で大きく膨らませてしまっている相手のことを、心底愛しいと思う。
 どんなにおっきくしても触ってすら貰えないと知ったときに絶望に泣く顔を、早く見てみたい。


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