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5話 ここはどこ? オレは赤子だ、オギャア!?
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次に意識が浮上したとき、オレは何故か赤ん坊になっていた。
名前は、轟木進太郎。以前の名前とどことなく似ているのに、真逆な印象であるのは何故だろうか。
以前というか、生前? いや、今オレは赤ん坊として生きているので、前世といえばいいのか? その時の意識を引き継いだまま、オレはこの世に生まれ落ちてしまった。
ということで、意識は50代、身体は0歳児。オッサン赤ちゃんの誕生だ。オギャー。
腹が減った、眠い、おむつを替えろと。身体さえ動けば自分でどうにかできることなのに、赤子の身体は思い通りに動かない。バブゥ。
オレの母親であるという女性は、そんなオレに甲斐甲斐しく世話を焼いてくれた。たっぷりと愛情を注いで接してくれているのは感じるのだけど、赤子の身体は何もかもが思い通りにいかない。しかも、オレの性格があまりにも苛烈なので、生後数ヶ月経つ頃には彼女は随分疲れているように見えた。悪いな、バブバブ。
そう思っても、こちらも自分の意志とは関係なく泣き声が身体から飛び出していくのだ。とくに悲しいというわけでもないのに、泣き声しか出てこない。オレは本来泣き虫なんかじゃないはずなのに、なんという屈辱だ。バブゥ!!
しかし、そんな不満だらけの日々はそう長くは続かなかった。
両親の仕事の都合で預けられた保育園に彼──八代晴希が居たのだ。オレは最初、目を疑った。彼は成人し、記憶の中の姿よりもさらにイイオトコになっていた。
しかも担当は0歳児クラス。こんな奇跡ってあるのだろうか。入園式では、あまりに唐突な再会にオレはポカンとすることしかできなかった。自分の身に何が起こっているのか理解ができないまま撮影された記念写真には、口を半開きにしたまま涎を垂らしているオレの姿が写った。
起きている時間は殆ど泣いているオレが急に大人しくなったので、両親は「沢山の人に囲まれて驚いたのだろうか」と言っていたが、勿論違う。オレは彼の姿を目に焼き付けつつ、何が起こっているのかを考えるのに忙しかったんだ。
赤子の頭はそんなに速く回らない。何度も思考があちこちに飛ぶのを引き戻しながら、オレは一生懸命考えた。そして、やがてひとつの結論にたどり着いた。オレは再び彼に出会うために生まれ変わってきたのではないのだろうか、と。
そうであれば、オレのすることは唯一つだ。絶対に、彼の恋人になる! 幸い、はるき先生は結婚していなかった。ゲイだと言っていたので、異性と結婚するつもりはないのかもしれない。先生たちの会話から、恋人も居ないようだということが分かった。
オレは、赤子の回らない頭で一生懸命考えて、保育園にいる間中、はるき先生の腕の中をキープした。
泣いたらはるき先生は抱っこしてくれる。オレ、覚えた。えらいだろ、バブー!
保育園から帰るときは、はるき先生と別れるのが嫌でギャン泣きしてしまったのは狙ってやったことではないけれど。ホギァアホギャア!
明日になればまた会えると、頭の中ではわかっているのだ。「たった一晩会えないくらい、たいしたことはない。病院のベッドで彼を想うだけだった日々に比べれば、日中のほとんどを彼に抱っこされて過ごしている今は、まるで天国のようだ」と大人だった頃の意識は理解していても、身体のほうは赤子なので泣いてしまうのは仕方がない。だって、赤子なんだもん。嫌なものは嫌なんだー!!
この世に生まれ落ちたときこそは50代の意識のほうが強かったが、そのうち情緒は身体に引っ張られて行って、年相応になっていった。
名前は、轟木進太郎。以前の名前とどことなく似ているのに、真逆な印象であるのは何故だろうか。
以前というか、生前? いや、今オレは赤ん坊として生きているので、前世といえばいいのか? その時の意識を引き継いだまま、オレはこの世に生まれ落ちてしまった。
ということで、意識は50代、身体は0歳児。オッサン赤ちゃんの誕生だ。オギャー。
腹が減った、眠い、おむつを替えろと。身体さえ動けば自分でどうにかできることなのに、赤子の身体は思い通りに動かない。バブゥ。
オレの母親であるという女性は、そんなオレに甲斐甲斐しく世話を焼いてくれた。たっぷりと愛情を注いで接してくれているのは感じるのだけど、赤子の身体は何もかもが思い通りにいかない。しかも、オレの性格があまりにも苛烈なので、生後数ヶ月経つ頃には彼女は随分疲れているように見えた。悪いな、バブバブ。
そう思っても、こちらも自分の意志とは関係なく泣き声が身体から飛び出していくのだ。とくに悲しいというわけでもないのに、泣き声しか出てこない。オレは本来泣き虫なんかじゃないはずなのに、なんという屈辱だ。バブゥ!!
しかし、そんな不満だらけの日々はそう長くは続かなかった。
両親の仕事の都合で預けられた保育園に彼──八代晴希が居たのだ。オレは最初、目を疑った。彼は成人し、記憶の中の姿よりもさらにイイオトコになっていた。
しかも担当は0歳児クラス。こんな奇跡ってあるのだろうか。入園式では、あまりに唐突な再会にオレはポカンとすることしかできなかった。自分の身に何が起こっているのか理解ができないまま撮影された記念写真には、口を半開きにしたまま涎を垂らしているオレの姿が写った。
起きている時間は殆ど泣いているオレが急に大人しくなったので、両親は「沢山の人に囲まれて驚いたのだろうか」と言っていたが、勿論違う。オレは彼の姿を目に焼き付けつつ、何が起こっているのかを考えるのに忙しかったんだ。
赤子の頭はそんなに速く回らない。何度も思考があちこちに飛ぶのを引き戻しながら、オレは一生懸命考えた。そして、やがてひとつの結論にたどり着いた。オレは再び彼に出会うために生まれ変わってきたのではないのだろうか、と。
そうであれば、オレのすることは唯一つだ。絶対に、彼の恋人になる! 幸い、はるき先生は結婚していなかった。ゲイだと言っていたので、異性と結婚するつもりはないのかもしれない。先生たちの会話から、恋人も居ないようだということが分かった。
オレは、赤子の回らない頭で一生懸命考えて、保育園にいる間中、はるき先生の腕の中をキープした。
泣いたらはるき先生は抱っこしてくれる。オレ、覚えた。えらいだろ、バブー!
保育園から帰るときは、はるき先生と別れるのが嫌でギャン泣きしてしまったのは狙ってやったことではないけれど。ホギァアホギャア!
明日になればまた会えると、頭の中ではわかっているのだ。「たった一晩会えないくらい、たいしたことはない。病院のベッドで彼を想うだけだった日々に比べれば、日中のほとんどを彼に抱っこされて過ごしている今は、まるで天国のようだ」と大人だった頃の意識は理解していても、身体のほうは赤子なので泣いてしまうのは仕方がない。だって、赤子なんだもん。嫌なものは嫌なんだー!!
この世に生まれ落ちたときこそは50代の意識のほうが強かったが、そのうち情緒は身体に引っ張られて行って、年相応になっていった。
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