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3.脱げよ*

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「見て欲しいんだろ? 脱げよ」

 オレはベッドに腰掛けると、部屋の真ん中で突っ立っている彼にそう声を掛けた。
 彼は躊躇うことなくトレンチコートを脱ぎ捨てた。
 現れた色白の肌に、黒い首輪と銀色の貞操帯が映えていて、とても煽情的だ。

「で、いつまで顔かくしてんの?」

 オレがそう言うと、彼はマスクを外した。マスクの下から現れたのは、ボールギャグ。ベルトが黒かったから、そんなものまで仕込まれているなんて、外では気づかなかった。

「そんなのつけてたんだ。ド変態だな」

 穴の開いた赤いボールに不自然に歪められた彼の口許には、ホクロが二つ並んでいる。そして、ボールギャグの穴から零れた唾液で、その口許はヌラヌラと濡れていた。
 ここまで来ても、彼は全く喋らないなと思ったら……なるほど。そういうことか。
 言葉で詰ってみると、彼はモジモジと身体をくねらせた。その様子は、蔑まれて悦んでいるように見えた。

「帽子とサングラスも取れよ」

 オレの言葉に、彼は首を横に振った。

「何、顔を見られたくないの?」

 今度は、首を縦に振る。

「ふーん。今日は、ずっと喋らないつもり?」

 また、彼は頷いた。

「つーことは、嫌もダメもナシだよなぁ? オレに何されちゃってもいいんだ」

 オレがそう言うと、彼は持っていた黒のボストンバッグをオレに差し出した。
 受け取って中を見てみると、大人の玩具────ローター、バイブ、簡易拘束具、パドル、蝋燭なんかがぎっしりと詰まっている。

「へぇ……これ使って遊んで欲しいの?」

 オレはボストンバッグの中から、ひとつひとつ道具を取り出す。オレが何に興味を示すのかが気になるのか、彼はその様子をじっと見ていた。

「あ。いいもの持ってるんじゃん」

 ボストンバッグに入っていた道具を全てベッドに並べると、オレはあるものを手に取った。顔の上部のみを覆うハーフタイプのフェイスマスクだ。
 真っ黒なラバーでできたそれは頭部から鼻までを隠すもので、口周りはオープンになっている。頭部に猫耳がついているのはご愛敬、可愛らしくていいじゃないか。目元をはじめ、いくつか金属の飾りがついているのも小洒落ている。

 正直、素っ裸にニット帽にグラサンというのは情緒がない。つーか、ヤってて気分的に萎える。それなら、こっちのほうが随分イイ。

「覗かないから、風呂場に行ってつけておいで」

 フェイスマスクを差し出すと、彼は大人しく受け取った。

「あとさ。声聞きたいから、ボールギャグは外して」

 丁度、フェイスマスクを渡すときにそう言うと、彼はちょっと躊躇った様子を見せた。

「何、声聞かれるのが嫌なの?」

 その言葉に、彼は頷く。

「……ダメ。聞かれたくないなら、自分で我慢して。わかった?」

 彼はまた少し躊躇った後、再び頷くと、風呂場へと消えて行った。

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