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15話 発情(ラット)
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「その男を捕らえろっ!!」
「はっ!!」
後ろから聞こえてきたのは、娼館で出会ったあの男の声だ。
指示に従って、衛兵たちが数人がかりで発情状態になった貴族のアルファを押さえつける。
「あの……ひっ!?」
振り返ると、彼は物凄い形相をしていた。
さっきの貴族も発情状態だったけれど、こいつも発情状態になってないか!? というか、薄々そうじゃないかと思ってはいたけれど、こいつもアルファのようだ。
助けてもらったのかと思ったけれど、これじゃあ、僕を狙う相手が入れ替わっただけに過ぎない。
しかも、近くに居るだけで発情期が悪化するような気がするので、余計に質が悪いじゃないか!
「もう、大丈夫だから……」
まだ正気を保てている間に、はやくここから立ち去りたい。
そう思って、その腕から逃れようともがくが、力の差がありすぎてびくともしなかった。
むしろ、こちらが力を入れればその反動なのか、さらに僕を捕らえる力が増してないか?
「……こいつに『魔女の媚薬』を使ったのは、お前だな?」
ゾッとするような怖い声に、思わずビクリと身体が震えてしまう。
ドサッと音がしたのでそちらの方を見ると、何かに躓いたのか、ジョン先生が僕たちのすぐ近くで床に尻もちをついていた。
「ひぇっ……! わわわわ、わたくしは、なにも……」
魔女の媚薬……?
以前もどこかで聞いた気がするけれど、何だったっけ……?
だけど、確かにジョン先生に渡されたワインを飲んだ瞬間、身体がおかしくなった気がする。ということは、やはりジョン先生が僕に薬を……でも、何のためにだ?
頭がガンガンして、思考がまとまらない。そのうえ、アルファのフェロモンを間近で嗅がされて気がおかしくなりそうだ。
変なことを口走ってしまわないように、正気を保てている間にここから逃げ出したいのに、僕を捕まえる腕が緩む気配は全くない。
「この者も捕らえろ!!」
「だからっ……私は何も知らない、知らないですから……!」
「言い訳は、牢の中でたっぷり聞いてやろう」
男の言葉で、ジョン先生も衛兵たちに連れていかれる。
そういえば……彼はアンナ様の護衛のようだけど、この国の人間ではないのになんで衛兵たちが従うんだ!?
気になることが多すぎる……
なのに、僕の身体は雄を求めて疼いて仕方がない。
ああもう、それどころじゃないっていうのに……!!
「それから……」
「あっ……!」
早くここから逃げ出したくて腕の中で必死でもがいていたら、声が降ってきた。
男が僕を見た。間近で視線が刺さる。
それだけで、さらに体温が上がった気がした。
「おまえはこっちだ……」
「ひゃあっ!? な、なにを……!?」
騎士のマントを掛けられたかと思ったら、それで包まれて、ひょいっと抱き上げられた。
すごくいい匂いだ……って、だからそうじゃなくて!!
僕がこんな扱いを受けているのに、会場に居る誰も僕を助けようとしない。
いったい何がどうなっているんだ……!?
助けを求めて視線を彷徨わせたら、広間を出る直前、青い顔をして口元を押さえているアシュリーが見えた。
「はっ!!」
後ろから聞こえてきたのは、娼館で出会ったあの男の声だ。
指示に従って、衛兵たちが数人がかりで発情状態になった貴族のアルファを押さえつける。
「あの……ひっ!?」
振り返ると、彼は物凄い形相をしていた。
さっきの貴族も発情状態だったけれど、こいつも発情状態になってないか!? というか、薄々そうじゃないかと思ってはいたけれど、こいつもアルファのようだ。
助けてもらったのかと思ったけれど、これじゃあ、僕を狙う相手が入れ替わっただけに過ぎない。
しかも、近くに居るだけで発情期が悪化するような気がするので、余計に質が悪いじゃないか!
「もう、大丈夫だから……」
まだ正気を保てている間に、はやくここから立ち去りたい。
そう思って、その腕から逃れようともがくが、力の差がありすぎてびくともしなかった。
むしろ、こちらが力を入れればその反動なのか、さらに僕を捕らえる力が増してないか?
「……こいつに『魔女の媚薬』を使ったのは、お前だな?」
ゾッとするような怖い声に、思わずビクリと身体が震えてしまう。
ドサッと音がしたのでそちらの方を見ると、何かに躓いたのか、ジョン先生が僕たちのすぐ近くで床に尻もちをついていた。
「ひぇっ……! わわわわ、わたくしは、なにも……」
魔女の媚薬……?
以前もどこかで聞いた気がするけれど、何だったっけ……?
だけど、確かにジョン先生に渡されたワインを飲んだ瞬間、身体がおかしくなった気がする。ということは、やはりジョン先生が僕に薬を……でも、何のためにだ?
頭がガンガンして、思考がまとまらない。そのうえ、アルファのフェロモンを間近で嗅がされて気がおかしくなりそうだ。
変なことを口走ってしまわないように、正気を保てている間にここから逃げ出したいのに、僕を捕まえる腕が緩む気配は全くない。
「この者も捕らえろ!!」
「だからっ……私は何も知らない、知らないですから……!」
「言い訳は、牢の中でたっぷり聞いてやろう」
男の言葉で、ジョン先生も衛兵たちに連れていかれる。
そういえば……彼はアンナ様の護衛のようだけど、この国の人間ではないのになんで衛兵たちが従うんだ!?
気になることが多すぎる……
なのに、僕の身体は雄を求めて疼いて仕方がない。
ああもう、それどころじゃないっていうのに……!!
「それから……」
「あっ……!」
早くここから逃げ出したくて腕の中で必死でもがいていたら、声が降ってきた。
男が僕を見た。間近で視線が刺さる。
それだけで、さらに体温が上がった気がした。
「おまえはこっちだ……」
「ひゃあっ!? な、なにを……!?」
騎士のマントを掛けられたかと思ったら、それで包まれて、ひょいっと抱き上げられた。
すごくいい匂いだ……って、だからそうじゃなくて!!
僕がこんな扱いを受けているのに、会場に居る誰も僕を助けようとしない。
いったい何がどうなっているんだ……!?
助けを求めて視線を彷徨わせたら、広間を出る直前、青い顔をして口元を押さえているアシュリーが見えた。
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