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4話 キミはアルファで僕はオメガ

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「ユリエルは万年発情期すぎて、いつが発情期だかわかんないっ!! 今からこんなんじゃ、近いうちに私はユリエルに搾り取られて干からびちゃう!! だから、もう無理!! ユリエルのことが怖いぃっ!!」
「ええーっ!?」

 なんで、なんで!? どうしてそーなっちゃうの!?
 玉座の後ろで泣き出してしまったアシュリーに僕はうろたえた。
 
 初心な反応は単に恥ずかしがっているだけで、「嫌よ嫌よも好きのうち」というやつだと思っていたのに……そうじゃなかったの!?
 でもさ。アシュリーはアルファで、僕はオメガなんだよ?
 僕たちは婚約者で、もうすぐ番になる予定なんだよ?
 
 アシュリーが泣いたら、慰めるのは僕の役目だった。
 だけど、今の状況だと国王の許しがなければ、僕はこの場を動くことができない。

「まぁ、こんな状態なのでな。今日をもって、この婚約はなかったこととする」
「嘘でしょお!?」

 国王にこう宣言されてしまったら、僕の立場ではその発言を覆すことはできないんだけど……

「アシュリー!!」

 アシュリーこの婚約の継続を強く望んでくれれば……と、期待を込めて名前を呼んだけれど、ふるふると首を振られてしまった。

「追ってオーグストにも書状を送ろう」

 オーグストというのは僕の父上で、うちの家長だ。
 この場に父上が居ないのは、隣の帝国まで出張に行っているからだろう。明日には帰ってくる予定だけど。
 本来ならこんな話を直接僕にするのは順序がおかしいんだ。
 でも、アシュリーが衛兵を呼んでしまったから、このタイミングでの通達になってしまったんだろう。

「で、でも、僕はアシュリーのことが本当に好きで……」
「嘘だ! 私のことをただの肉棒としか思っていないくせに」
「そんなことないよ! そりゃ、早くセックスしてアシュリーの子種が沢山欲しいと思ってるけれど……」
「ほら、やっぱり! そのことしか考えていない!!」

 僕たちの言い合いは平行線で収拾がつかず、国王の仲裁でも収まらなかったので、最終的には僕が護衛騎士たちに引き摺られるような形で、僕は玉座の間を退場させらせてしまったのだった。
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